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7.妹は姉の後を追う
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「つまりシャーリーは何かを知ってから囚われたいということかな?」
「へ?どうしたの、急に。囚われるだなん──っ!」
顔を上げたシャーリーは見覚えのある目の奥の昏く澱んだ笑みを見付け固まった。
「他の人を知ってから結婚したいと、そういうことなんだね?」
「ち、ち、違うわよ。そんなはしたないこと、考えたこともなかったわ!」
「じゃあ、どうして義姉上を可哀想なんて言うのかな?もしかして僕とはすぐに結婚せずに、社交界の花になって遊んでからにしたいの?」
「そんなわけないでしょう!変なことを言わないで!」
「ふーん。でも僕しか知らないことが不満みたいだね?」
「だ、だから違うのよ。私はただお姉さまが不憫で──ひっ!」
「どうしたの、そんなに怯えて?ふふ。僕ももう少し頑張らないといけないみたいだね。僕以外知らなくていいと思って貰えるように努力しなければ。義兄上が言っていた通りだ」
「え?今なんて?まさかあの魔王があなたに何か──」
「シャーリー、大好きだよ?」
「なっ……うぅ」
両手で顔を隠したシャーリーは耳まで真っ赤に染めていた。
「ねぇ、シャーリー。義兄上には感謝しないとね。だって僕らが婚約出来たのも、義兄上が義姉上を好きになって婿に入ってくれたからだと思わない?」
シャーリーは侯爵家嫡男への嫁入りが決まっている。
姉との暮らしももう僅か。
だからこそ、最近は姉のことばかり考えてしまうのだ。
いつもなら好ましく聞いてきた遠くから聴こえる常に幾重となる無邪気な笑い声をシャーリーが怖ろしく感じたのはこの日が初めてのことだった。
だってそれが未来の自分を意味する暗示のようで──。
こうして美しい姉妹は、その花を社交界で咲かせることなく、魔王二人に囚われて幸せになりましたとさ。
めでたしめでたし。
「へ?どうしたの、急に。囚われるだなん──っ!」
顔を上げたシャーリーは見覚えのある目の奥の昏く澱んだ笑みを見付け固まった。
「他の人を知ってから結婚したいと、そういうことなんだね?」
「ち、ち、違うわよ。そんなはしたないこと、考えたこともなかったわ!」
「じゃあ、どうして義姉上を可哀想なんて言うのかな?もしかして僕とはすぐに結婚せずに、社交界の花になって遊んでからにしたいの?」
「そんなわけないでしょう!変なことを言わないで!」
「ふーん。でも僕しか知らないことが不満みたいだね?」
「だ、だから違うのよ。私はただお姉さまが不憫で──ひっ!」
「どうしたの、そんなに怯えて?ふふ。僕ももう少し頑張らないといけないみたいだね。僕以外知らなくていいと思って貰えるように努力しなければ。義兄上が言っていた通りだ」
「え?今なんて?まさかあの魔王があなたに何か──」
「シャーリー、大好きだよ?」
「なっ……うぅ」
両手で顔を隠したシャーリーは耳まで真っ赤に染めていた。
「ねぇ、シャーリー。義兄上には感謝しないとね。だって僕らが婚約出来たのも、義兄上が義姉上を好きになって婿に入ってくれたからだと思わない?」
シャーリーは侯爵家嫡男への嫁入りが決まっている。
姉との暮らしももう僅か。
だからこそ、最近は姉のことばかり考えてしまうのだ。
いつもなら好ましく聞いてきた遠くから聴こえる常に幾重となる無邪気な笑い声をシャーリーが怖ろしく感じたのはこの日が初めてのことだった。
だってそれが未来の自分を意味する暗示のようで──。
こうして美しい姉妹は、その花を社交界で咲かせることなく、魔王二人に囚われて幸せになりましたとさ。
めでたしめでたし。
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