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「私に想い人……白い結婚……なんたることか」
頭を抱えた侯爵様が、ぶつぶつと同じ言葉を繰り返しています。
私といえば、手が離れてほっとしたところです。
いいえ、すべて明かしてすっきりしたところと言った方が良いでしょうか。
ラベンダーが先より濃くなったハーブティーをいただきますと、今まで澱んでいた心が綺麗に澄み渡っていくような感覚を得ました。
ちなみに結婚式前にこの屋敷でこのお茶を出されたことはありません。
結婚式が終わってからふるまうようにと侯爵様が侍女たちに伝えていたそうです。
新しいお茶を運んでくれた侍女にお礼を伝えたところ、これを教えていただけたのですが、すぐに侯爵様が話を止めていらしたので、何か秘密があるのかもしれません。
あとであの侍女にこっそり聞いてみれば教えてくれるでしょうか?
去り際の侍女の口から何か気になる言葉も聞きました。「旦那様、ヘタレはいけません」という。
ヘタレとは?
清涼な香りから、またぼんやりと脳裏に故郷の風景が思い浮かびましたが、先ほどのように胸が熱くなることはありませんでした。
もう慣れたのでしょうか。それはそれで、薄情者だと故郷の者たちから罵られそうです。
そういえば、私ってそんな人間だったかもしれません。
そのうち領地のことも頭から流れ、香りのおかげで今夜はよく眠れそうだと考えていたところで、侯爵様が復活なされていました。
先よりすっきりしたように見えるお顔で、私を見詰めています。
「全否定しておく」
「はい?」
これは……私の存在の全否定でしょうか?
「君が耳にした噂はすべて間違っていると言ったんだ」
「まぁ」
それはもしやすると、私はとても失礼なことをしでかしていたのでは?
噂に踊らされて、結婚初日にこのような非礼な発言……頭を下げるだけで許されることではありません。
せめて家の問題にはならないよう、私だけを罰していただきたく──。
「落ち着いてくれ。私は君を責めない」
「けれど」
「君も誰かに聞かされただけなのだろう?」
「されど、よく調べもせずに噂話を信じたのは私ですし。侯爵様にまでご迷惑をお掛けしたとなれば……」
偽りの噂に惑わされて行動するなど、貴族として、いえ、人間として恥でしかありません。
しかもそれで、誰かにご迷惑を……それも夫となる人にご迷惑をお掛けしてしまうだなんて。
「本当にいいんだ。君の事情はよく分かる。うちもそうだからな」
それはそうでしょうね。
私の生まれ育った領地から王都を越えて、この侯爵領です。
こちらの方々も王都での噂話を確認するには、それはもう膨大な時間と労力が掛かってしまうことは分かります。
とはいえですよ。
だからといって許されることでもないと思うのです。
「本当に気にしなくていい。それに噂を鎮められなかった責任は、こちらにもあろう。侯爵家から人をやっていないわけではないんだ」
「それを言いましたら、私のところも同じことです」
領主は王都に行きませんが、関係者は必ず王都に置いておくものです。
何かあったとき、早馬で知らせてもらわなければなりませんからね。
たとえば政変が起きたとか、そういうことです。
「それからもうひとつ重要なことを伝えておくが。私もまた、久しく王都には足を運んでいない」
「あ!」
確かにそうでしょうね。
若くして爵位を継いだこの方が、王都などで遊んでいられるはずはありません。
よほどの用事、それこそ国王陛下からの召喚でもなければ、足を運ばないのではないでしょうか。
爵位を得る前のことならば、知りませんけれどね。
「安心してくれ。侯爵位を継ぐ前から、王都に居た日数は数えるほどだ」
「ではあの噂は……」
一体誰がそのような噂話を広めたのでしょうか?
頭を抱えた侯爵様が、ぶつぶつと同じ言葉を繰り返しています。
私といえば、手が離れてほっとしたところです。
いいえ、すべて明かしてすっきりしたところと言った方が良いでしょうか。
ラベンダーが先より濃くなったハーブティーをいただきますと、今まで澱んでいた心が綺麗に澄み渡っていくような感覚を得ました。
ちなみに結婚式前にこの屋敷でこのお茶を出されたことはありません。
結婚式が終わってからふるまうようにと侯爵様が侍女たちに伝えていたそうです。
新しいお茶を運んでくれた侍女にお礼を伝えたところ、これを教えていただけたのですが、すぐに侯爵様が話を止めていらしたので、何か秘密があるのかもしれません。
あとであの侍女にこっそり聞いてみれば教えてくれるでしょうか?
去り際の侍女の口から何か気になる言葉も聞きました。「旦那様、ヘタレはいけません」という。
ヘタレとは?
清涼な香りから、またぼんやりと脳裏に故郷の風景が思い浮かびましたが、先ほどのように胸が熱くなることはありませんでした。
もう慣れたのでしょうか。それはそれで、薄情者だと故郷の者たちから罵られそうです。
そういえば、私ってそんな人間だったかもしれません。
そのうち領地のことも頭から流れ、香りのおかげで今夜はよく眠れそうだと考えていたところで、侯爵様が復活なされていました。
先よりすっきりしたように見えるお顔で、私を見詰めています。
「全否定しておく」
「はい?」
これは……私の存在の全否定でしょうか?
「君が耳にした噂はすべて間違っていると言ったんだ」
「まぁ」
それはもしやすると、私はとても失礼なことをしでかしていたのでは?
噂に踊らされて、結婚初日にこのような非礼な発言……頭を下げるだけで許されることではありません。
せめて家の問題にはならないよう、私だけを罰していただきたく──。
「落ち着いてくれ。私は君を責めない」
「けれど」
「君も誰かに聞かされただけなのだろう?」
「されど、よく調べもせずに噂話を信じたのは私ですし。侯爵様にまでご迷惑をお掛けしたとなれば……」
偽りの噂に惑わされて行動するなど、貴族として、いえ、人間として恥でしかありません。
しかもそれで、誰かにご迷惑を……それも夫となる人にご迷惑をお掛けしてしまうだなんて。
「本当にいいんだ。君の事情はよく分かる。うちもそうだからな」
それはそうでしょうね。
私の生まれ育った領地から王都を越えて、この侯爵領です。
こちらの方々も王都での噂話を確認するには、それはもう膨大な時間と労力が掛かってしまうことは分かります。
とはいえですよ。
だからといって許されることでもないと思うのです。
「本当に気にしなくていい。それに噂を鎮められなかった責任は、こちらにもあろう。侯爵家から人をやっていないわけではないんだ」
「それを言いましたら、私のところも同じことです」
領主は王都に行きませんが、関係者は必ず王都に置いておくものです。
何かあったとき、早馬で知らせてもらわなければなりませんからね。
たとえば政変が起きたとか、そういうことです。
「それからもうひとつ重要なことを伝えておくが。私もまた、久しく王都には足を運んでいない」
「あ!」
確かにそうでしょうね。
若くして爵位を継いだこの方が、王都などで遊んでいられるはずはありません。
よほどの用事、それこそ国王陛下からの召喚でもなければ、足を運ばないのではないでしょうか。
爵位を得る前のことならば、知りませんけれどね。
「安心してくれ。侯爵位を継ぐ前から、王都に居た日数は数えるほどだ」
「ではあの噂は……」
一体誰がそのような噂話を広めたのでしょうか?
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