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54.かわいい従姉妹たちは庇護欲を誘います
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想像出来ない王都について、今まで従姉妹たちから聞いた話を思い出しながら、無理やり想像していますと。
今度はミーネがいいました。
「そうですわ。侯爵様ともあろう御方が、古い領地の慣例に囚われて、第二夫人もお持ちにならないなんて。おいたわしい限りでしてよ」
おいたわしい……。
そんな、第二夫人がいないことがいたわしいことだったなんて。
ではジンも第二夫人、第三夫人を──。
なんだか胸の辺りが重たくなっていました。
どうしましょう。本当にこれは重病なのではないかしら?
「ミシェル、大丈夫だよ。私には君だけだ。この場は私に任せてくれるね?」
そう耳元で甘く囁かれましたら、何故か胸の重みがすーっと消えてしまいます。
後ろから顔を覗き込まれると、とくんと胸が跳ねましたが、もう苦しさはありません。
「よしよし。分かってくれて良かった」
ジンがふんわりと柔らかく笑ったときです。
ほんの僅かに、かつての天使の残骸……表現が悪かったですわ。
ほんの、ほんの、爪の先ほどの、天使らしさが垣間見えた瞬間でした。
それはもう天使はいないということでは、ですって?
そうね。そうかもしれませんわ。
天使は思い出の中だけに──。
「そのように気遣う必要はありませんわよ、侯爵様。ミシェルお姉さまは反対しませんもの。ねぇ、そうですわよね、ミシェルお姉さま?」
え?はい?
何のお話でしたでしょうか?
「んもう、嫌だわ。話くらいちゃんと聞いていらして?こんなときにさえ役にも立たないなんて。呆れるわ」
それは本当に申し訳なく思いますが。
今すぐに会話を思い出し振り返るので──。
あら、殺気を感じましたよ。
話も聞けない私を怒って……違うみたいです。
「私の妻を悪く言うことはやめてもらおうか」
ここ一番の低い声でした。
戦場ならば、敵将も簡単に震え上がらせることが出来そうです。
やはりあとで声色の変え方を教えて貰いましょう。
ここぞというときには、私も声だけで敵将を震えさせてみせますわよ!
「おほほ。申し訳ありませんわ。ミシェルお姉さまとは慣れ親しんだ仲ですから、いつも通りに振る舞ってしまいましたの」
「つまり、いつもそのようにミシェルを愚弄していたということか」
「いえいえ、そんな。そんなことはございませんわ。おほほほほ」
「そうですわ。うふふ。ミシェルお姉さまとは気心知れた仲ですもの」
「妹の言う通りですわ。わたくしたち、ミシェルお姉さまとはとても仲良くしておりましたのよ。ですからミシェルお姉さまが結婚されると聞いてからはもう淋しくて──」
「そうです!淋しさに我慢出来なくて、一緒に嫁ぎたくなってしまったのですわ!それくらいミシェルお姉さまとは仲良しですのよ!」
二人の笑って誤魔化そうとしている姿を久しぶりに見ました。
母やアルに捕まると、二人ともよくこんな顔をしていたことを思い出します。
そうして最後はいつも「ミシェルお姉さまと仲良くしていただけですわ!そうですわね、ミシェルお姉さま」というのですが。
「そうですわよね、ミシェルお姉さま?」
「わたくしたち、とても仲良くしてきましたわよね?」
うるうると瞳を潤ませた二人に言われると、かわいい従姉妹たちを守らなければという使命感に燃えてきます。
「そ──」
「仲良くね──それで、王都で第二夫人を持つことが流行りというのは本当なのだな?」
私の言葉はジンの言葉に遮られてしまいました。
身内として、二人が何か失礼をしたのなら二人に代わって私から謝ろうと思っておりましたのに。
もう私のことなどどうでもいい、そんな顔でレーネは語ります。
「えぇ、それはもう。皆様そのようになさっておいででしたわ!」
「第二夫人を持てない貴族は恥ずかしいくらいでしてよ!」
レーネに続きミーネがそう言いますと。
「──と言っているが、どうなのだ?」
ジンが遠いところに向かって、声を掛けました。
その視線は応接室の壁に設置された大きな鏡に向かっているようなのですが……。
どういうことかしら?
不思議に想っていると、その鏡の向こうに突然ぽんっと気配が生じたのです。
今度はミーネがいいました。
「そうですわ。侯爵様ともあろう御方が、古い領地の慣例に囚われて、第二夫人もお持ちにならないなんて。おいたわしい限りでしてよ」
おいたわしい……。
そんな、第二夫人がいないことがいたわしいことだったなんて。
ではジンも第二夫人、第三夫人を──。
なんだか胸の辺りが重たくなっていました。
どうしましょう。本当にこれは重病なのではないかしら?
「ミシェル、大丈夫だよ。私には君だけだ。この場は私に任せてくれるね?」
そう耳元で甘く囁かれましたら、何故か胸の重みがすーっと消えてしまいます。
後ろから顔を覗き込まれると、とくんと胸が跳ねましたが、もう苦しさはありません。
「よしよし。分かってくれて良かった」
ジンがふんわりと柔らかく笑ったときです。
ほんの僅かに、かつての天使の残骸……表現が悪かったですわ。
ほんの、ほんの、爪の先ほどの、天使らしさが垣間見えた瞬間でした。
それはもう天使はいないということでは、ですって?
そうね。そうかもしれませんわ。
天使は思い出の中だけに──。
「そのように気遣う必要はありませんわよ、侯爵様。ミシェルお姉さまは反対しませんもの。ねぇ、そうですわよね、ミシェルお姉さま?」
え?はい?
何のお話でしたでしょうか?
「んもう、嫌だわ。話くらいちゃんと聞いていらして?こんなときにさえ役にも立たないなんて。呆れるわ」
それは本当に申し訳なく思いますが。
今すぐに会話を思い出し振り返るので──。
あら、殺気を感じましたよ。
話も聞けない私を怒って……違うみたいです。
「私の妻を悪く言うことはやめてもらおうか」
ここ一番の低い声でした。
戦場ならば、敵将も簡単に震え上がらせることが出来そうです。
やはりあとで声色の変え方を教えて貰いましょう。
ここぞというときには、私も声だけで敵将を震えさせてみせますわよ!
「おほほ。申し訳ありませんわ。ミシェルお姉さまとは慣れ親しんだ仲ですから、いつも通りに振る舞ってしまいましたの」
「つまり、いつもそのようにミシェルを愚弄していたということか」
「いえいえ、そんな。そんなことはございませんわ。おほほほほ」
「そうですわ。うふふ。ミシェルお姉さまとは気心知れた仲ですもの」
「妹の言う通りですわ。わたくしたち、ミシェルお姉さまとはとても仲良くしておりましたのよ。ですからミシェルお姉さまが結婚されると聞いてからはもう淋しくて──」
「そうです!淋しさに我慢出来なくて、一緒に嫁ぎたくなってしまったのですわ!それくらいミシェルお姉さまとは仲良しですのよ!」
二人の笑って誤魔化そうとしている姿を久しぶりに見ました。
母やアルに捕まると、二人ともよくこんな顔をしていたことを思い出します。
そうして最後はいつも「ミシェルお姉さまと仲良くしていただけですわ!そうですわね、ミシェルお姉さま」というのですが。
「そうですわよね、ミシェルお姉さま?」
「わたくしたち、とても仲良くしてきましたわよね?」
うるうると瞳を潤ませた二人に言われると、かわいい従姉妹たちを守らなければという使命感に燃えてきます。
「そ──」
「仲良くね──それで、王都で第二夫人を持つことが流行りというのは本当なのだな?」
私の言葉はジンの言葉に遮られてしまいました。
身内として、二人が何か失礼をしたのなら二人に代わって私から謝ろうと思っておりましたのに。
もう私のことなどどうでもいい、そんな顔でレーネは語ります。
「えぇ、それはもう。皆様そのようになさっておいででしたわ!」
「第二夫人を持てない貴族は恥ずかしいくらいでしてよ!」
レーネに続きミーネがそう言いますと。
「──と言っているが、どうなのだ?」
ジンが遠いところに向かって、声を掛けました。
その視線は応接室の壁に設置された大きな鏡に向かっているようなのですが……。
どういうことかしら?
不思議に想っていると、その鏡の向こうに突然ぽんっと気配が生じたのです。
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