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chapter2_03
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自宅近くまで戻ってきた鷹取は、寂れた公園のベンチに座り込んだ。
食事にありつけたとは言え、満腹と言うには程遠い。むしろ飢え切った腹には少量の食事は呼び水となり、摂取前に比べて飢えが増大しているようだった。
夜食に取っておいたパンを見つめ、食べてしまうか我慢するかの二択に迫られていると、突然一人の男が鷹取の隣に腰かけ、話しかけてきた。
「よぉブラザー。女にでもフラれたか?」
「うるさい……どっかいけ」
いかにも胡散臭い笑顔で気安く肩を組んでくる男の腕を振り払う。
「おいおい、ひでぇ顔色じゃねえか。大丈夫かあ?」
「大丈夫だから……ほっといてくれ」
「なんだよ、パンなんか握りしめて。もしかして腹減ってんのか?」
「そうだよ。だからどっかいけ」
「んじゃあちょうどいい。俺さ、ちょうど『お菓子』持ってんだ。食えよ」
男は懐から、小分けの袋に入れられた何かを取り出した。見たところラムネ菓子のようだった。
「え……いいのか?」
「ぶっ倒れそうで見てられねぇからよ。ほら」
男は強引に鷹取の手を取り、小さな粒を乗せる。
「って、一粒かよ。ケチくさ……」
「味が気に入るかわかんねえじゃん。結構クセがあんのよ。まあ食えって」
見ず知らずの他人から渡されたものなど、以前の鷹取ならば絶対に口にしなかったが、度を越した空腹、それに鬱に睡眠不足が加算され、鷹取の判断力は完全に鈍化しきっていた。
丸い粒を口に放り込む鷹取を見て、男はにやけた顔をしている。
「ん? なんだこれ……」
――麻薬だ。
嚙み砕いて妙な味がしたことでようやく思考が働く。既に溶けきってしまった粒は吐き出すこともできない。迂闊だった。
「てめぇ売人かよ……っ!」
鷹取は立ち上がり、男の胸倉を掴む。
「はは! 油断がすぎるぜ、ブラザー。でもよ、腹減ってんのなんか忘れちまうくらいハイになれんだ。楽しんでくれよな」
悪びれた様子もなく笑う男を突き放し、その場を去ろうとした鷹取の体は既に違和感に吞まれつつあった。
食事にありつけたとは言え、満腹と言うには程遠い。むしろ飢え切った腹には少量の食事は呼び水となり、摂取前に比べて飢えが増大しているようだった。
夜食に取っておいたパンを見つめ、食べてしまうか我慢するかの二択に迫られていると、突然一人の男が鷹取の隣に腰かけ、話しかけてきた。
「よぉブラザー。女にでもフラれたか?」
「うるさい……どっかいけ」
いかにも胡散臭い笑顔で気安く肩を組んでくる男の腕を振り払う。
「おいおい、ひでぇ顔色じゃねえか。大丈夫かあ?」
「大丈夫だから……ほっといてくれ」
「なんだよ、パンなんか握りしめて。もしかして腹減ってんのか?」
「そうだよ。だからどっかいけ」
「んじゃあちょうどいい。俺さ、ちょうど『お菓子』持ってんだ。食えよ」
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「え……いいのか?」
「ぶっ倒れそうで見てられねぇからよ。ほら」
男は強引に鷹取の手を取り、小さな粒を乗せる。
「って、一粒かよ。ケチくさ……」
「味が気に入るかわかんねえじゃん。結構クセがあんのよ。まあ食えって」
見ず知らずの他人から渡されたものなど、以前の鷹取ならば絶対に口にしなかったが、度を越した空腹、それに鬱に睡眠不足が加算され、鷹取の判断力は完全に鈍化しきっていた。
丸い粒を口に放り込む鷹取を見て、男はにやけた顔をしている。
「ん? なんだこれ……」
――麻薬だ。
嚙み砕いて妙な味がしたことでようやく思考が働く。既に溶けきってしまった粒は吐き出すこともできない。迂闊だった。
「てめぇ売人かよ……っ!」
鷹取は立ち上がり、男の胸倉を掴む。
「はは! 油断がすぎるぜ、ブラザー。でもよ、腹減ってんのなんか忘れちまうくらいハイになれんだ。楽しんでくれよな」
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