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左腕に霊かもしれないものがくっついた話
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私の母は、いわゆる【霊感のある人】である。
母子そろって、不思議ちゃんなのである。
母の実家の家は、母曰く「めちゃくちゃ出る」らしい。
「高校生ぐらいの時やったかなぁ、寝てたらな、足をさわさわってナニカが触ってくるのよ。金縛りなんか怖くてか、固まっちゃってさぁ。でも、どんどん触ってくる手は上がってくる。やっとの思いで『もう!! やめてよ!!』って怒鳴ったらスッと消えたわ」
とか、
「アンタの里帰り出産した時な、お祖母ちゃんち、1階の和室あるやろ。あそこはなー、おんねん。ずっと気持ち悪いねん。だから嫌やってんけどあの部屋で、アンタにお乳飲ませてたらいきなりさ、タヌキさんの置物あるやろ、あれの笠がゴロン!! って落ちてん。ずっと誰も触ってないのによ?」
とか、不思議体験をよく聞かされていた。
確かに、母方の祖父母宅の和室は、立派な日本人形が何体か居て、少し──怖い。
小さい頃、訪問時にお昼寝をさせてもらった時、目を瞑っていたら、なんとなく──周りを取り囲まれて、覗き見られているような気がした。
怖くはない気配だったが、気持ち悪かったのを覚えている。
けれどそんなものは、所詮思い込みや気のせいだと、思ってきた。
【霊感らしきもの】が芽生える前。今から5年ぐらい前だろうか。
私の家の近くには大きな病院がある。救急センターもある、大きな病院だ。よく救急車が患者を運んでくる。
その日、私はその救急センターの前を、自転車で通りすぎた。いつもはブラインドカーテンの下りて閉じられている、大きな窓。
けれどその日のブラインドカーテンは、下りているけど開けられていた。センターの中が、見える状態だ。
珍しい。そう思いながら、私はなんとなしに──その隙間を見た。
普通の廊下が見えた。
誰もいなかった。
けれど、何かと目があったような、気がした。
次の瞬間、左腕だけに、鳥肌が立った。
その日は真夏。別段ゾッともしていないし、寒くはないのに。逆に暑いくらいなのに。
視線を前に戻した瞬間から、左腕の、肘より上あたりにだけ、鳥肌。
「なんぞこれ……左腕だけ? 寒くもないのに鳥肌って立つんだぁ……なんかアレ的なものがくっついたのか……?」
そんなことを考えつつ、ごく普通に帰宅する。
左腕の鳥肌は、未だおさまらない。もう5分以上たつ。
「えええこんな長時間、特定の場所だけの鳥肌が消えへんとかある……?」
これは、全然分からんし見えたりしないけど、霊的なアレかもしれない。
私はキッチンへ行き、流しのところで、鳥肌部分に食塩をふってみた。
「お、……おお!?」
鳥肌の部分が移動した。肘より、下へ。
「すげぇ、塩すげえ」
もう一度塩をふってみる。鳥肌の部分が少し小さくなる。
「やば。霊はナメクジだった……!?」
よしよし、だいぶ鳥肌部分小さくなったし、塩も勿体ないし、もういいか、そのうち消えるだろ。
楽観的にそう考えて、塩をふるのを止めた。だが、その数分後、また左腕の鳥肌は徐々に上に戻ってきた。
「しつこいなぁ、気持ッち悪い……このナメクジが!」
塩をバッサバッサと左腕にふる。再び徐々に、肘の下へ鳥肌はずり下がる。もっともっとかける。どんどん下がる。手首の付近まできた。
ばっさばっさと塩をふり続けるも、結局それ以上は下に落ちない。しぶとい、しがみついてやがる。
目視でも確認できる、鳥肌直径10センチ。
あーもういいや、めんどくさい……鳥肌立ってるだけで実害ないし。
取り敢えずそこまでで放置を決め込み、夕食を食べる。食べ終わっても、鳥肌はおさまらなかった。風呂を洗って沸かす。
浴槽に、日本酒をどばどばといれる。塩を、振り入れる。
「お? 今日お風呂沸かしたん?」
旦那が私に尋ねる。ウチは基本、シャワーだけの家だ。夏は特に。
「んー、なんかねぇ、今日帰りに救急センターの中を覗いちゃったんね。そしたらその後から、左腕にだけ鳥肌出てさぁ。塩をふったら鳥肌がずり落ちていくから、日本酒&塩風呂する」
「え、ええー……なにそれやばいやん……幽霊はナメクジだった……?」
同じこと考えるやん。
かくして、日本酒&塩の入った浄化風呂は、私の血行を促進させ、上がる頃にはかなーり小さくなっていた。手首周辺に必死でしがみついている風。
風呂上がりの水分補給時に、もう一度塩をふりかけて水で流すと、鳥肌はすう、と消えていった。
そんなこともまぁ、自分の思い込みかなにかだろう。
そう、思っていた──
母子そろって、不思議ちゃんなのである。
母の実家の家は、母曰く「めちゃくちゃ出る」らしい。
「高校生ぐらいの時やったかなぁ、寝てたらな、足をさわさわってナニカが触ってくるのよ。金縛りなんか怖くてか、固まっちゃってさぁ。でも、どんどん触ってくる手は上がってくる。やっとの思いで『もう!! やめてよ!!』って怒鳴ったらスッと消えたわ」
とか、
「アンタの里帰り出産した時な、お祖母ちゃんち、1階の和室あるやろ。あそこはなー、おんねん。ずっと気持ち悪いねん。だから嫌やってんけどあの部屋で、アンタにお乳飲ませてたらいきなりさ、タヌキさんの置物あるやろ、あれの笠がゴロン!! って落ちてん。ずっと誰も触ってないのによ?」
とか、不思議体験をよく聞かされていた。
確かに、母方の祖父母宅の和室は、立派な日本人形が何体か居て、少し──怖い。
小さい頃、訪問時にお昼寝をさせてもらった時、目を瞑っていたら、なんとなく──周りを取り囲まれて、覗き見られているような気がした。
怖くはない気配だったが、気持ち悪かったのを覚えている。
けれどそんなものは、所詮思い込みや気のせいだと、思ってきた。
【霊感らしきもの】が芽生える前。今から5年ぐらい前だろうか。
私の家の近くには大きな病院がある。救急センターもある、大きな病院だ。よく救急車が患者を運んでくる。
その日、私はその救急センターの前を、自転車で通りすぎた。いつもはブラインドカーテンの下りて閉じられている、大きな窓。
けれどその日のブラインドカーテンは、下りているけど開けられていた。センターの中が、見える状態だ。
珍しい。そう思いながら、私はなんとなしに──その隙間を見た。
普通の廊下が見えた。
誰もいなかった。
けれど、何かと目があったような、気がした。
次の瞬間、左腕だけに、鳥肌が立った。
その日は真夏。別段ゾッともしていないし、寒くはないのに。逆に暑いくらいなのに。
視線を前に戻した瞬間から、左腕の、肘より上あたりにだけ、鳥肌。
「なんぞこれ……左腕だけ? 寒くもないのに鳥肌って立つんだぁ……なんかアレ的なものがくっついたのか……?」
そんなことを考えつつ、ごく普通に帰宅する。
左腕の鳥肌は、未だおさまらない。もう5分以上たつ。
「えええこんな長時間、特定の場所だけの鳥肌が消えへんとかある……?」
これは、全然分からんし見えたりしないけど、霊的なアレかもしれない。
私はキッチンへ行き、流しのところで、鳥肌部分に食塩をふってみた。
「お、……おお!?」
鳥肌の部分が移動した。肘より、下へ。
「すげぇ、塩すげえ」
もう一度塩をふってみる。鳥肌の部分が少し小さくなる。
「やば。霊はナメクジだった……!?」
よしよし、だいぶ鳥肌部分小さくなったし、塩も勿体ないし、もういいか、そのうち消えるだろ。
楽観的にそう考えて、塩をふるのを止めた。だが、その数分後、また左腕の鳥肌は徐々に上に戻ってきた。
「しつこいなぁ、気持ッち悪い……このナメクジが!」
塩をバッサバッサと左腕にふる。再び徐々に、肘の下へ鳥肌はずり下がる。もっともっとかける。どんどん下がる。手首の付近まできた。
ばっさばっさと塩をふり続けるも、結局それ以上は下に落ちない。しぶとい、しがみついてやがる。
目視でも確認できる、鳥肌直径10センチ。
あーもういいや、めんどくさい……鳥肌立ってるだけで実害ないし。
取り敢えずそこまでで放置を決め込み、夕食を食べる。食べ終わっても、鳥肌はおさまらなかった。風呂を洗って沸かす。
浴槽に、日本酒をどばどばといれる。塩を、振り入れる。
「お? 今日お風呂沸かしたん?」
旦那が私に尋ねる。ウチは基本、シャワーだけの家だ。夏は特に。
「んー、なんかねぇ、今日帰りに救急センターの中を覗いちゃったんね。そしたらその後から、左腕にだけ鳥肌出てさぁ。塩をふったら鳥肌がずり落ちていくから、日本酒&塩風呂する」
「え、ええー……なにそれやばいやん……幽霊はナメクジだった……?」
同じこと考えるやん。
かくして、日本酒&塩の入った浄化風呂は、私の血行を促進させ、上がる頃にはかなーり小さくなっていた。手首周辺に必死でしがみついている風。
風呂上がりの水分補給時に、もう一度塩をふりかけて水で流すと、鳥肌はすう、と消えていった。
そんなこともまぁ、自分の思い込みかなにかだろう。
そう、思っていた──
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