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2章 二人の逃走と追跡
アースの書~逃走・1~
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わけがわからない。
ファルベインと戦い、自爆され、意識が飛んで、気が付けばプレートアーマーの身体……。
なにがどうなってこうなった? 頭が全然ついていけないんですけど。
「……………………カ?」
ん? 今、人の声が聞こえたような……。
『……あっ』
アーメットを右に向けると、テーブルの後に隠れてこっちを見ている人が居る。
自分の事ばかりでいた事に全く気が付かなかった。
明らかに丈が合っていないダボダボのローブを着て、肩にかかるくらいの薄紫色の髪。
前髪が目の所までかかっているせいで顔はよく見えないが、恐らく女性だと思うけど。
「…………です……カ?」
女性はすごい小声だから、何を言っているのかわからない。
『あのーもう少し大きな声でしゃべってもらえませんか?』
「っ!」
俺が言葉をかけると女性は体をビクッとさせた。
話し掛けたくらいでそんなに怯えなくても……って、今の俺は怯えられて当たり前の姿じゃないか!
これはまずい!
『いや! あの! これはですね目が覚めたら鎧の姿になっていまして――』
「す~は~す~は~……あっあの、貴方はア、アース……様、ですカ?」
『――何を言っているのかわからないと思いますが俺も……へっ?』
女性が俺の名前を聞いて来たぞ。
この姿で、俺だとわかっているのか?
えーと……なら、これは素直に答えた方がいいのかな。
もしかしたら女性から色々と聞けるかもしれないし。
『……はい……そうです。俺はアース・カルデナスですけど……』
さあ、どんな反応を返してくるかな。
「っっっ! やった! やっタ! ついに成功しタ!」
女性がぴょんぴょんと飛んで喜んでいる。
何がそんなに嬉しいのだろうか。
やった? 成功した? 俺がこの姿になったのはこの女性が何かしたのか?
「エイラ~! 私やったヨオオオオオオオオオ!」
『えっ? あっ! ちょ――』
女性が部屋から飛び出して行っちゃった。
こんな状況で、俺一人置いて行かないでほしいんですけど。
呼びかけたら帰って来るかな。
『君! ちょっとまっ――アアッ!』
――ガッシャーン
手を滑らせてアーメット、いや俺の頭を落としてしまった。
だが、それでちょっとわかった事がある。
それは落ちた衝撃も痛みも全く感じなかったという事だ。
今思えば触った感触も感じられなかった。
におい……もしない、体が空っぽだから味覚が感じられるわけがない。
となると、五感で残っているのは視覚と聴覚のみか。
どうしてこの2つのみ残っているのかわからんが、残っているだけありがたいと思っておこう。
そう自分に言い聞かせとかないと心が折れそうだ。
『とにかく俺の頭を回収しないと』
自分の体を見ながら、自分の体を動かす。
操り人形を動かしている気分になってきた。
これ今は見えているからいいけど、逆向きで見えてなかったら大変だったな。
『よっと』
俺の頭を自分の体に乗せる。
うん、やっぱりこの位置がしっくりくるな。
右向きよし、左向きよし。
頭が体に付いている状態だと首が動かせるのか。
「ほら、見て見テ!」
「見るって言っているでしょ。だから、そんなに引っ張らないでよ~」
さっき女性が小さな女の子を連れて戻ってきた。
少女は腰位にまで伸びた黒髪に、緑のニーソックス、ロンググローブ、ビキニをという過激な格好……いや、違う! よく見れば緑の部分は全て鱗じゃないか!
そして背中には翼が生え、お尻にはトカゲの様な尻尾……間違いない、こいつはドラゴニュートだ!
何故ドラゴニュートの様な高レベルモンスターがこんな所にいるんだ!?
いや、今はそんな事どうでもいい。早く逃げないと女性が危険だ。
この体を移用して俺が囮になって……。
「お~あんたが有名なアースか。あ~しはエイラ、よろしくね~」
笑顔のドラゴニュートに肩を叩かれた。
何だ? このドラゴニュートから殺気だったものを全く感じない。
今まで出会ったドラゴニュートとは全然違う。
こっちが敵視をしなければ大丈夫そうだが、一応いつでも動けるように警戒はしておこう。
にしても、何でこいつも俺の名前を知っているんだ?
それに有名ってどういう事なんだろうか、とくに名を広げる様な事をしていないんだが……。
「あれ? なんか状況がよくわからないって顔をしているね」
確かにその通りなんだけどさ、このアーメットの顔面を見てそう見えるのがすごいよ。
まぁそんな事はどうでもいいか。
このドラゴニュートなら今の状況を教えてくれそうだし。
「もしかして、ラティから何も聞かされない?」
『ラティ?』
人の名前みたいだけど、ドラゴニュートの横に居る女性の事だろうか。
「も~ラティったら現状はおろか自己紹介すらしていないの? 全くしょうがない娘ね~」
ドラゴニュートに叱られる人。
こんな光景を見るのは初めてだ。
やっぱり、このドラゴニュートはどこか普通じゃないぞ。
「だっだって術が成功したからつい興奮しテ……あっすみません! 私はラティア・ストレイトでス」
ラティア・ストレイト……。
ストレイト……ストレイトだって?
『まさか、フランクさんの娘さんのラティアちゃん!?』
フランク・ストレイト。
魔神ファルベイン討伐で知り合った死霊魔術師だ。
1度フランクさんの故郷に寄った時、家族を紹介してくれた。
妻アリソン、長男トロイ……そして長女ラティア。
「そうでス! そのラティアでス!」
いや、それだとおかしい。
だって俺の知っているラティアちゃんは……。
『ラティアちゃんは10歳だぞ……』
俺達が寄った時、丁度ラティアちゃんは10歳の誕生日だった。
だから10歳なのは間違いない。
『……けど……けど……』
目の前にいるラティアちゃんは、どう見ても大人の女性だ。
別れてから数ヶ月しか経っていないのに……ここまで成長するものなのか?
「あ~私はもう20歳でス」
『20歳!?』
やばい、訳がわからなすぎて眩暈がしてきた。
おまけに頭が空っぽで痛覚が無いはずなのに頭が痛く感じて来たし。
「あ~そっカ。アース様が亡くなられて10年経った事はわからないですよネ」
『……え? ……亡くなられて? ……10年経った?』
それって……もしかして……。
「はい、アース様は10年前の魔神ファルベインとの戦いで亡くなっていまス」
やっぱりあいつの自爆で俺は死んでいたのかよ!
「でっ英雄となったアース様の名前は歴に使われていまして、今はアース歴9年になりまス」
『っ!?』
俺の名前が歴に!?
英雄で名前が残る事はともかく、歴で残さないでくれよ!
俺からしたらものすごい羞恥プレイなんですけど!
誰だよ! 人の名前を勝手に歴にした馬鹿野郎は!
俺が死んだからって好き放題するんじゃないよ!!
ファルベインと戦い、自爆され、意識が飛んで、気が付けばプレートアーマーの身体……。
なにがどうなってこうなった? 頭が全然ついていけないんですけど。
「……………………カ?」
ん? 今、人の声が聞こえたような……。
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自分の事ばかりでいた事に全く気が付かなかった。
明らかに丈が合っていないダボダボのローブを着て、肩にかかるくらいの薄紫色の髪。
前髪が目の所までかかっているせいで顔はよく見えないが、恐らく女性だと思うけど。
「…………です……カ?」
女性はすごい小声だから、何を言っているのかわからない。
『あのーもう少し大きな声でしゃべってもらえませんか?』
「っ!」
俺が言葉をかけると女性は体をビクッとさせた。
話し掛けたくらいでそんなに怯えなくても……って、今の俺は怯えられて当たり前の姿じゃないか!
これはまずい!
『いや! あの! これはですね目が覚めたら鎧の姿になっていまして――』
「す~は~す~は~……あっあの、貴方はア、アース……様、ですカ?」
『――何を言っているのかわからないと思いますが俺も……へっ?』
女性が俺の名前を聞いて来たぞ。
この姿で、俺だとわかっているのか?
えーと……なら、これは素直に答えた方がいいのかな。
もしかしたら女性から色々と聞けるかもしれないし。
『……はい……そうです。俺はアース・カルデナスですけど……』
さあ、どんな反応を返してくるかな。
「っっっ! やった! やっタ! ついに成功しタ!」
女性がぴょんぴょんと飛んで喜んでいる。
何がそんなに嬉しいのだろうか。
やった? 成功した? 俺がこの姿になったのはこの女性が何かしたのか?
「エイラ~! 私やったヨオオオオオオオオオ!」
『えっ? あっ! ちょ――』
女性が部屋から飛び出して行っちゃった。
こんな状況で、俺一人置いて行かないでほしいんですけど。
呼びかけたら帰って来るかな。
『君! ちょっとまっ――アアッ!』
――ガッシャーン
手を滑らせてアーメット、いや俺の頭を落としてしまった。
だが、それでちょっとわかった事がある。
それは落ちた衝撃も痛みも全く感じなかったという事だ。
今思えば触った感触も感じられなかった。
におい……もしない、体が空っぽだから味覚が感じられるわけがない。
となると、五感で残っているのは視覚と聴覚のみか。
どうしてこの2つのみ残っているのかわからんが、残っているだけありがたいと思っておこう。
そう自分に言い聞かせとかないと心が折れそうだ。
『とにかく俺の頭を回収しないと』
自分の体を見ながら、自分の体を動かす。
操り人形を動かしている気分になってきた。
これ今は見えているからいいけど、逆向きで見えてなかったら大変だったな。
『よっと』
俺の頭を自分の体に乗せる。
うん、やっぱりこの位置がしっくりくるな。
右向きよし、左向きよし。
頭が体に付いている状態だと首が動かせるのか。
「ほら、見て見テ!」
「見るって言っているでしょ。だから、そんなに引っ張らないでよ~」
さっき女性が小さな女の子を連れて戻ってきた。
少女は腰位にまで伸びた黒髪に、緑のニーソックス、ロンググローブ、ビキニをという過激な格好……いや、違う! よく見れば緑の部分は全て鱗じゃないか!
そして背中には翼が生え、お尻にはトカゲの様な尻尾……間違いない、こいつはドラゴニュートだ!
何故ドラゴニュートの様な高レベルモンスターがこんな所にいるんだ!?
いや、今はそんな事どうでもいい。早く逃げないと女性が危険だ。
この体を移用して俺が囮になって……。
「お~あんたが有名なアースか。あ~しはエイラ、よろしくね~」
笑顔のドラゴニュートに肩を叩かれた。
何だ? このドラゴニュートから殺気だったものを全く感じない。
今まで出会ったドラゴニュートとは全然違う。
こっちが敵視をしなければ大丈夫そうだが、一応いつでも動けるように警戒はしておこう。
にしても、何でこいつも俺の名前を知っているんだ?
それに有名ってどういう事なんだろうか、とくに名を広げる様な事をしていないんだが……。
「あれ? なんか状況がよくわからないって顔をしているね」
確かにその通りなんだけどさ、このアーメットの顔面を見てそう見えるのがすごいよ。
まぁそんな事はどうでもいいか。
このドラゴニュートなら今の状況を教えてくれそうだし。
「もしかして、ラティから何も聞かされない?」
『ラティ?』
人の名前みたいだけど、ドラゴニュートの横に居る女性の事だろうか。
「も~ラティったら現状はおろか自己紹介すらしていないの? 全くしょうがない娘ね~」
ドラゴニュートに叱られる人。
こんな光景を見るのは初めてだ。
やっぱり、このドラゴニュートはどこか普通じゃないぞ。
「だっだって術が成功したからつい興奮しテ……あっすみません! 私はラティア・ストレイトでス」
ラティア・ストレイト……。
ストレイト……ストレイトだって?
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フランク・ストレイト。
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1度フランクさんの故郷に寄った時、家族を紹介してくれた。
妻アリソン、長男トロイ……そして長女ラティア。
「そうでス! そのラティアでス!」
いや、それだとおかしい。
だって俺の知っているラティアちゃんは……。
『ラティアちゃんは10歳だぞ……』
俺達が寄った時、丁度ラティアちゃんは10歳の誕生日だった。
だから10歳なのは間違いない。
『……けど……けど……』
目の前にいるラティアちゃんは、どう見ても大人の女性だ。
別れてから数ヶ月しか経っていないのに……ここまで成長するものなのか?
「あ~私はもう20歳でス」
『20歳!?』
やばい、訳がわからなすぎて眩暈がしてきた。
おまけに頭が空っぽで痛覚が無いはずなのに頭が痛く感じて来たし。
「あ~そっカ。アース様が亡くなられて10年経った事はわからないですよネ」
『……え? ……亡くなられて? ……10年経った?』
それって……もしかして……。
「はい、アース様は10年前の魔神ファルベインとの戦いで亡くなっていまス」
やっぱりあいつの自爆で俺は死んでいたのかよ!
「でっ英雄となったアース様の名前は歴に使われていまして、今はアース歴9年になりまス」
『っ!?』
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