【完結】デュラハンは逃走中-Dullahan is on the run-

コル

文字の大きさ
35 / 75
6章 二人の戦闘と取逃

アースの書~戦闘・3~

しおりを挟む
 施設内の通路を走る俺とエイラ。
 人型サソリは……今の所は追って来ている気配はないな。
 それにしても、俺の記憶が確かだとすればこの通路を通った記憶がない。
 だとするとこれはまずいぞ、明らかに出口から離れている事になる。
 窓から外に出ようとしても、どれも瓦礫に塞がれていて出ることは出来ない。
 やはり、意図的に窓を塞いでいる感じがするな。
 これをやったのが、あの人型サソリだとすれば何か意図が……。

「アース! どうするの!?」

 ラティアを背負い走るエイラが俺に聞いてくる。
 どうすると言われてもな。

『どこか、剣を振れるような広い場所があれば……あっ』

 あるじゃないか。
 どこでもいいから、この施設にある部屋の中に入ってしまえばいいだけの事。
 逃げる事で頭がいっぱいだったとはいえ、どうしてそんな簡単な事を思いつかなかったのか……。

『エイラ、あそこの部屋に入るぞ!』

 俺は目の前にあった扉に指をさす。

「あっうん! わかった!」

 俺は素早く部屋の前に立ち扉を開けた。
 そしてエイラが部屋の中に飛び込み、俺もその後に続いて扉を閉めた。

「ふぅ~これでひとまずは安心かな」

『だといいがな』

 この施設はあいつの住処になっている。
 なら、俺達が見つかるのも時間の問題かもしれん。
 警戒をしておくに越したことはない。

『ラティアの容体はどうだ?』

「ん~……駄目だね。まだ目を回しているよ」

『そうか。そういえば、エイラは回復系魔法は使えないのか?』

 使えたらラティアを治療してほしいとこなんだが……。

「あ~回復魔法は使えない。あ~しも全ての魔法が使えるわけぢゃないよ」

 だよな。
 使えたらとっくに使用しているわな。
 んーこのままエイラにラティアを背負われたままなのもあれだし、寝かせた方がいいよな。
 けど、この部屋にはベッドなんてない。あるのは物がのった机のみだ。
 かといって、床に寝かすわけにもいかないし……仕方ない。

『そこの机の上にある物をどかして、その上にラティアを寝かせよう』

 今出来るとすればそれしかない。
 机の上にもホコリが積もってはいるが、床よりはマシだ……。

「了解~――あっ! アース!!」

 突然、エイラが俺の方を見て驚きの声を出した。

『何だ!? 人型サソリが出たか!』

 俺は剣を鞘から抜き構えた。
 そして、後ろを振りかえる。

『……?』

 しかし、背後には人型サソリの姿は無かった。
 扉が破られた感じもない。

『いないじゃないか』

「違う違う、あ~しが驚いたのはアースの頭だよ。頭の部分が凹んぢゃっているよ」

 なんだ、そんな事か。
 まったく……驚かすんじゃないよ。
 俺はやれやれと肩をすくめ剣を鞘に戻した。

『エイラ、そんな事くらいで大声を……って、何だと!?』

 頭が凹んでいるだって!?
 俺は、恐る恐るアーメットに手を伸ばして擦ってみる。

『……嘘……だろ……』

 エイラの言う通り、俺の頭の一部が凹んでいた。
 しかも、その場所はレインに殴られて修理したところだ。
 恐らく、さっき人型サソリに襲われた時の一撃で凹んでしまったのだろう。

『……ショックだが、俺が受けて良かったと思うべきか』

 金属のアーメットが凹むほどの威力があったんだ。
 それがラティアの頭に当たっていたかもと思うと……想像するだけで恐ろしい。
 タンコブ程度では済まされないぞ。

「よっほっはっ」

 俺が落ち込んでいるのを気にせず、エイラが机の上にあった書類等を雑に払い落としている。
 おいおい、いくら放置された物とはいえ、そんなに雑に扱うと研究者たちに失礼だろう。

『まったく、仕方が無い奴だな』

 俺は落ちた書類を拾い、ついでに中身も読んでみた。
 しかし、専門用語が書かれていて良くわかない。
 ここは一体何の研究をしていたのだろうか。
 そう思いつつ書類を集めていると、見覚えのある名前が目に入った。

『……ベリオーブ・セイジの人工妖精論について?』

 ベリオーブ・セイジって、あの錬金術師ベリオーブの事か?
 俺も昔話でしか聞いた事がないが、遥か昔に存在した人物。
 当時、まだ謎の鉱石だった魔石と魔晶石を独自に研究していたらしい。
 そして加工技術に成功し、その手法は一般人にまで普及した。
 ベリオーブが居なければ、今の俺達の生活は無かっただろう。

「ベリオーブ・セイジ? また懐かしい名前が出て来たわね」

 机の上にラティアを寝かせたエイラが、後ろから覗き込んで来た。

『エイラもベリオーブの話は知っていたのか』

 まぁ当然と言えば当然か。
 歴史の中でもかなりの有名人だしな。

「知っているも何も、ベリオーブの家で居候させてもらった事があるし」

『……はい!?』

 嘘だろ! ベリオーブはかなり昔に……あ、そうか。
 長生きをしているエイラなら、ベリオーブと出会っていてもおかしくはないのか。
 つか、居候って……。

「いや~懐かしいな~……あっそうそう、ベリオーブと言えば――」

 ――バーン!!

 エイラがベリオーブの事を話そうとした瞬間、破壊音と共に扉が勢いよく砕け散った。
 俺は即座に書類を投げ捨て、剣を鞘から抜き構えた。
 あの人型サソリめ、随分と荒っぽい事をするな。

「やっと見つけたわよ!!」

『へっ?』

 女の声が部屋中に響く。
 さっきはシャーとかとか言っていたのに、まともにしゃべれたのか?
 それにしても、この声……妙に聞き覚えのある様な……。

「もう逃がさないわよ! デュラハン!!」

 そう言いながら、扉を破壊したと思われるメイスを握った女性が部屋の中に入って来た。
 紅色の髪で、右目の泣きぼくろのある女性……それは――。

『……レイン!?』

 俺達の目の前に現れたのは人型サソリではなく、レイン・ニコラスだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...