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終章 二人の書~アースとレイン~
ニ人の書~【アース】とレイン・6~
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◇◆アース歴9年 8月23日◇◆
オリバーの提案から今日で約1ヶ月経った。
今日も今日とてオリバーは地下室に籠り、その間俺達は思い思いに時間を潰していた。
オリバーの屋敷を掃除したり、ソファーで寝転んでいたり、町に買い物へ行ったり、ベッドで寝て居たり、料理をしたり……。
最初は手伝うと申し出たが、かえって人が居ると気が散ると言われてしまった。
それで、仕方なく使用人みたいな事をしていた。
そんな日々が続いていたが、今日は客室が賑わっていた。
早朝にオーウェンがオリバーの屋敷に来たからだ。
1度組合に戻ったレイン達から事情を聴いて、本来ならすぐさま北の大陸に飛んで来たかったらしい。
が、組合の仕事で止められ、やっと目処が立ち今日来れたという事だ。
「それにしても、いまだに信じられないぜ……この中にアースが居るなんてよ」
オーウェンがコンコンと俺の頭を右手で叩く。
おい、人の頭を叩くのは止めろ。
「で、オリバーの話のヤツはいつ完成するんだ?」
そんな俺の思いを知ってか知らずか、叩きつつレインに話題をふった。
イラっと来た俺は静かにオーウェンの手をはじいた。
「知らないわよ、アタシに聞かないでオリバーに聞いて」
「いや、聞こうにも、俺を迎えに来てすぐに地下室に引っ込んじまったじゃないか」
それも怒りながらな。
こんな一番大変な時に来よってからに!! って叫んでいたし。
とは言っても、転送の魔法陣を使わないとここに来れないようにしたオリバーにも問題があると俺は思うぞ。
「もいかして、地下室で居眠りでもしてるんじゃないか?」
そう言って、オーウェンがソファーに座ろうとした瞬間。
「――しとらんわ! 相変わらず失敬な奴じゃな!」
「おわっ!?」
オーウェンは背後から突然現れたオリバーの怒声に驚いて、床に倒れ込んだ。
「び、びくりした……脅かすんじゃねぇよ……」
「お前が変な事を言うからじゃろ……それにしも、変な運の良さも相変わらずじゃな。皆は約1ヶ月も待ったのに、お前はたったの半日ですんだのじゃから」
たったの半日ですんだ……という事は!
「それって、完成したって事!?」
レインの言葉にうなづくオリバー。
「うむ。何故かはわからんが、こいつが来たとたん魔力が安定してな、完成まで一気に進められたのじゃ……もしかしたら、今日オーウェンが来るのは運命じゃったのかもしれん」
全員の目線がオーウェンへと注がれる。
「……? よくわからんが俺のおかげなの? いやー照れるな」
自分が褒められていると感じたオーウェンが自分の頭をかく。
運命って……なんだろう、約1ヶ月も待ったこっちとしては妙に納得がいかない。
「まあ良い、みんな地下室に来てくれ」
オリバーが地下室へと向かい、俺達はその後をついて行った。
オリバーの屋敷の地下室にはよくわからない物でありふれていた。
その中には大きな魔石、魔晶石も置かれている。
そんな物だらけの隙間を抜けるとベッドが1台ポツンと置かれていた。
その上には金髪の青年が横たわっている。
『これが俺の肉体……』
オリバーの提案。
それは人工妖精論を使い、人間に限りなく近い存在の肉体を新たに造り出す。
そして、その造られた肉体の中に俺の魂を入れるというものだ。
「流石に、姿形を全てアースと同じというは無理じゃからこれで勘弁してくれ」
『文句なんて無い。ありがとう、オリバー』
この肉体を造り出すのに、相当苦労をしている姿を俺は見ている。
そんなオリバーに顔が似ていないとか、我儘を言うのは間違っている。
「アース様は文句なんて無イ、ありがとう、オリバーと言っていまス」
俺の言葉を通訳してくれるラティア。
この約1ヶ月の間、通訳をしてくれて本当に助かった。
だが、それも今日限り……のはず。
「そうか……では、ラティアちゃん……後は任せたのじゃ」
「はイ、お任せくださイ。アース様、頭を取りますネ」
『ああ、頼む』
ラティアは俺の頭、アーメットをプレートアーマーから外して金髪の青年の頭に被せた。
おお……なんかドキドキして来たぞ。
「すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~…………でハ、いきまス! エイラ!」
「オッケー! まっかせて!」
ラティアとエイラの大量の魔力が、俺の中へと流れ来るのを感じる。
それに対して不快感は無い。
とても暖かく……心が穏やかになっていく。
まるで母親の腕の中に抱かれていかのようだ。
そんな温もりの中、俺の意識は少しずつ遠くなっていった。
※
「…………」
俺は意識を取り戻し、うっすらと目を開けた。
目の前には心配そうな顔をしているラティアと、俺の体の上に手を乗せているオリバーの姿があった。
俺はどのくらい眠っていたのだろうか。
「……うっ……」
うまく声が出せない。
これは成功したんだろうか……?
「――っ! アース様! お目覚めになられましたカ!?」
ラティアの声に、みんなが周りに寄って来た。
「……ふむ……今の所は異常無しじゃな……アース、体は動かせるかのぉ? 焦らんと、ゆっくりとじゃ」
オリバーの言葉に、俺はまず右手を動かしてみる。
ふとプレートアーマーで蘇ったあの日の事を思い出した。
そうだ……あの時、俺の右手を動かすと金属音がしたんだよな……。
「……」
今は動かしても金属音は全くしない。
それはそうだ、動かした俺の右手にはあのガントレットはついていないのだから。
左手も……問題なく動く。
次に、ゆっくりと上半身を起こそうとした。
「……っ」
「あッ!」
「おっと」
上半身を起こそうとしている事に気が付いたラティアとレインが俺を支えてくれた。
2人が支えてくれたおかげで上半身をあげられ、自分の体を見ることが出来た。
俺の体はプレートアーマーで覆われていない。
あの時は無かった右手がある、左手がある、両足がある。
……生身の体がある。
「……」
俺は、今被っているアーメットを両手で持って――。
「――っ!」
思いっきり持ち上げた。
あの時は持ち上げた分、目線も上がった。
しかし、今の俺の目線は一切変わらない。
ただ単にアーメットを持ち上げただけだ。
「……み……」
固唾を飲む、みんなに向かって俺は口を開いた。
「……み……んな、俺……の……声……聞こ……える……?」
たどたどしくも、自分の声を発することが出来た。
「――っアース様ッ! 良かっタ……うううウ……!」
ラティアが両手で顔を押さえて泣き崩れた。
「うん、よかったね……よかったね……ラティ……本当に……」
泣いているラティアの頭を、エイラは母親の様に優しく撫でた。
「聞こえるわ! 今度はちゃんとアースの声が聞こえるわよ!」
レインの瞳から流れている涙に、今やっと答えられた。
「アース! やったねえええ! うわああああああああん!!」
ジョシュアはこの場に居る誰よりも大粒の涙を流している。
「よっしゃあ! 今日は宴会だな!! となると酒だな! 今すぐ酒を買ってこねぇと!」
そう言って顔を逸らすオーウェン……目が潤んでいたのを見られたくないのだろう。
「……異常はなさそうじゃなぁ……アース、よくぞ帰って来てくれた……」
オリバーが俺の体に乗せていた右手を外し、そのまま俺の前に差し出した。
俺はオリバーの右手を握る。
するとラティア、エイラ、レイン、ジョシュア、オーウェンの手が乗せられる。
金属の手では感じられなかった、みんなの温もりがこの手に伝わって来る。
その温もりに自然と俺の目からも涙がこぼれ落ちるのだった。
オリバーの提案から今日で約1ヶ月経った。
今日も今日とてオリバーは地下室に籠り、その間俺達は思い思いに時間を潰していた。
オリバーの屋敷を掃除したり、ソファーで寝転んでいたり、町に買い物へ行ったり、ベッドで寝て居たり、料理をしたり……。
最初は手伝うと申し出たが、かえって人が居ると気が散ると言われてしまった。
それで、仕方なく使用人みたいな事をしていた。
そんな日々が続いていたが、今日は客室が賑わっていた。
早朝にオーウェンがオリバーの屋敷に来たからだ。
1度組合に戻ったレイン達から事情を聴いて、本来ならすぐさま北の大陸に飛んで来たかったらしい。
が、組合の仕事で止められ、やっと目処が立ち今日来れたという事だ。
「それにしても、いまだに信じられないぜ……この中にアースが居るなんてよ」
オーウェンがコンコンと俺の頭を右手で叩く。
おい、人の頭を叩くのは止めろ。
「で、オリバーの話のヤツはいつ完成するんだ?」
そんな俺の思いを知ってか知らずか、叩きつつレインに話題をふった。
イラっと来た俺は静かにオーウェンの手をはじいた。
「知らないわよ、アタシに聞かないでオリバーに聞いて」
「いや、聞こうにも、俺を迎えに来てすぐに地下室に引っ込んじまったじゃないか」
それも怒りながらな。
こんな一番大変な時に来よってからに!! って叫んでいたし。
とは言っても、転送の魔法陣を使わないとここに来れないようにしたオリバーにも問題があると俺は思うぞ。
「もいかして、地下室で居眠りでもしてるんじゃないか?」
そう言って、オーウェンがソファーに座ろうとした瞬間。
「――しとらんわ! 相変わらず失敬な奴じゃな!」
「おわっ!?」
オーウェンは背後から突然現れたオリバーの怒声に驚いて、床に倒れ込んだ。
「び、びくりした……脅かすんじゃねぇよ……」
「お前が変な事を言うからじゃろ……それにしも、変な運の良さも相変わらずじゃな。皆は約1ヶ月も待ったのに、お前はたったの半日ですんだのじゃから」
たったの半日ですんだ……という事は!
「それって、完成したって事!?」
レインの言葉にうなづくオリバー。
「うむ。何故かはわからんが、こいつが来たとたん魔力が安定してな、完成まで一気に進められたのじゃ……もしかしたら、今日オーウェンが来るのは運命じゃったのかもしれん」
全員の目線がオーウェンへと注がれる。
「……? よくわからんが俺のおかげなの? いやー照れるな」
自分が褒められていると感じたオーウェンが自分の頭をかく。
運命って……なんだろう、約1ヶ月も待ったこっちとしては妙に納得がいかない。
「まあ良い、みんな地下室に来てくれ」
オリバーが地下室へと向かい、俺達はその後をついて行った。
オリバーの屋敷の地下室にはよくわからない物でありふれていた。
その中には大きな魔石、魔晶石も置かれている。
そんな物だらけの隙間を抜けるとベッドが1台ポツンと置かれていた。
その上には金髪の青年が横たわっている。
『これが俺の肉体……』
オリバーの提案。
それは人工妖精論を使い、人間に限りなく近い存在の肉体を新たに造り出す。
そして、その造られた肉体の中に俺の魂を入れるというものだ。
「流石に、姿形を全てアースと同じというは無理じゃからこれで勘弁してくれ」
『文句なんて無い。ありがとう、オリバー』
この肉体を造り出すのに、相当苦労をしている姿を俺は見ている。
そんなオリバーに顔が似ていないとか、我儘を言うのは間違っている。
「アース様は文句なんて無イ、ありがとう、オリバーと言っていまス」
俺の言葉を通訳してくれるラティア。
この約1ヶ月の間、通訳をしてくれて本当に助かった。
だが、それも今日限り……のはず。
「そうか……では、ラティアちゃん……後は任せたのじゃ」
「はイ、お任せくださイ。アース様、頭を取りますネ」
『ああ、頼む』
ラティアは俺の頭、アーメットをプレートアーマーから外して金髪の青年の頭に被せた。
おお……なんかドキドキして来たぞ。
「すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~…………でハ、いきまス! エイラ!」
「オッケー! まっかせて!」
ラティアとエイラの大量の魔力が、俺の中へと流れ来るのを感じる。
それに対して不快感は無い。
とても暖かく……心が穏やかになっていく。
まるで母親の腕の中に抱かれていかのようだ。
そんな温もりの中、俺の意識は少しずつ遠くなっていった。
※
「…………」
俺は意識を取り戻し、うっすらと目を開けた。
目の前には心配そうな顔をしているラティアと、俺の体の上に手を乗せているオリバーの姿があった。
俺はどのくらい眠っていたのだろうか。
「……うっ……」
うまく声が出せない。
これは成功したんだろうか……?
「――っ! アース様! お目覚めになられましたカ!?」
ラティアの声に、みんなが周りに寄って来た。
「……ふむ……今の所は異常無しじゃな……アース、体は動かせるかのぉ? 焦らんと、ゆっくりとじゃ」
オリバーの言葉に、俺はまず右手を動かしてみる。
ふとプレートアーマーで蘇ったあの日の事を思い出した。
そうだ……あの時、俺の右手を動かすと金属音がしたんだよな……。
「……」
今は動かしても金属音は全くしない。
それはそうだ、動かした俺の右手にはあのガントレットはついていないのだから。
左手も……問題なく動く。
次に、ゆっくりと上半身を起こそうとした。
「……っ」
「あッ!」
「おっと」
上半身を起こそうとしている事に気が付いたラティアとレインが俺を支えてくれた。
2人が支えてくれたおかげで上半身をあげられ、自分の体を見ることが出来た。
俺の体はプレートアーマーで覆われていない。
あの時は無かった右手がある、左手がある、両足がある。
……生身の体がある。
「……」
俺は、今被っているアーメットを両手で持って――。
「――っ!」
思いっきり持ち上げた。
あの時は持ち上げた分、目線も上がった。
しかし、今の俺の目線は一切変わらない。
ただ単にアーメットを持ち上げただけだ。
「……み……」
固唾を飲む、みんなに向かって俺は口を開いた。
「……み……んな、俺……の……声……聞こ……える……?」
たどたどしくも、自分の声を発することが出来た。
「――っアース様ッ! 良かっタ……うううウ……!」
ラティアが両手で顔を押さえて泣き崩れた。
「うん、よかったね……よかったね……ラティ……本当に……」
泣いているラティアの頭を、エイラは母親の様に優しく撫でた。
「聞こえるわ! 今度はちゃんとアースの声が聞こえるわよ!」
レインの瞳から流れている涙に、今やっと答えられた。
「アース! やったねえええ! うわああああああああん!!」
ジョシュアはこの場に居る誰よりも大粒の涙を流している。
「よっしゃあ! 今日は宴会だな!! となると酒だな! 今すぐ酒を買ってこねぇと!」
そう言って顔を逸らすオーウェン……目が潤んでいたのを見られたくないのだろう。
「……異常はなさそうじゃなぁ……アース、よくぞ帰って来てくれた……」
オリバーが俺の体に乗せていた右手を外し、そのまま俺の前に差し出した。
俺はオリバーの右手を握る。
するとラティア、エイラ、レイン、ジョシュア、オーウェンの手が乗せられる。
金属の手では感じられなかった、みんなの温もりがこの手に伝わって来る。
その温もりに自然と俺の目からも涙がこぼれ落ちるのだった。
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