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4章 轗軻不遇の輪舞曲
カタリナ対キャロル
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「久しぶりだな。確か……グレースと言ったか?」
「ああ? 何訳分かんねーこと言ってやがる? 俺はキャロルだ、忘れてんじゃーねぇぞ! えー?」
「ふむ、そうだったか? まぁいい、今日は3対1か?」
「何言ってやがる! コイツラはただの見物人だ。テメーを殺すのは俺だけに決まってんだろーが」
「ふむ、そうか。では──」
カタリナは右足を前に出して左半身に構え戦闘の姿勢を取った。
その後、突き出した右手の4本の指を舌を這わせるかのように手前に引き、キャロルを挑発した。
「かかってきなさい」
キャロルは薄汚い格好の猫と犬の獣人に一言「どけ」告げる。
獣人達は揃ってキャロルの側から離れると思った。
が、次の瞬間、猫の獣人はその跳躍力を利用しカタリナに飛びかかった。
同時に犬の獣人もその脚力を活かし、地面スレスレを高速で駆け出しカタリナへ襲いかかる。
「おまーに恨みはニャイが、覚悟するニャ!」
「倒させて貰うワン!」
『やはりな』
ここまではカタリナの予想通りであった。
冷静に獣人達の動きを見ていたカタリナは、数コンマ猫の獣人の攻撃が速く来ると予見した。
同時に犬の獣人に対応すべく、カタリナはその場でジャンプをするとその左足を鞭のようにしならせ、猫の獣人の横顔を打ち抜いた。
ガードする事すら出来ずに猫の獣人は「ギニャア」という叫びをあげ右方向へ吹き飛んでいった。
カタリナは勢いそのままに体を空中で回転させると右拳を地面へ向け突出す!
そのまま犬の獣人を地面に叩きつけようとしたカタリナであったが、何故かその場に居るはずの犬の獣人の姿はなかった。
それもそのはず──
カタリナが攻撃する前に、キャロルの重たい回し蹴りが犬の獣人の横顔を打ち砕いていたのだ。
犬の獣人はその衝撃に「ワオッフ」と叫び猫の獣人もろとも吹き飛んでいった。
文字通り地面に拳を打ち付けたカタリナは即座に距離を取り、戦闘態勢に戻った。
「……なんの真似だ? 仲間だろ?」
「キャハハハ、だから言ったろー? テメーは俺の玩具だってよー。邪魔する奴は死んだ方がマシだろ! えー?」
ふとカタリナが吹き飛んでいった獣人達を見る。
きっとジョシュの命令に従ったであろう獣人達は、キャロルの裏切りとも取れる行動や、自分達と比べカタリナとキャロルの圧倒的実力差を感じ取り、お互いに抱き合ったまま震え上がっている。
「ば、化け物揃いだニャ。どっちにしろアタシ達はここで死ぬ運命なのニャ!」
「死ぬ前にお腹いっぱい食べたかったわん……」
『ほぉ、意識を飛ばさないか。見所があるではないか』
カタリナは妙な感心を抱き、1つ決意を固めた。
「ふむ、キャロルよ。1つ賭けをしないか?」
「賭けだぁ? どういうこった?」
「なに、簡単なことだ──」
そう言うとカタリナは一枚の木版をキャロルに見せつけた。
それは簡易フェタークの改良版であり、実際に使用するのはこれが初めてである。
「私が『勝負』と言ったら、『乗った』と言うだけだ。簡単だろ?」
「んなこたいいんだよ。で? 何を賭けるってんだ? えー?」
「私が勝ったらそこの獣人を寄越せ、それと、今後2年は私達に手を出すな」
「ほーん。で、俺が勝ったらぁ?」
「好きにしろ。私達一族をお前の玩具だろうが何だろうが好きにして構わん」
「キャハハハ! いいねぇ、そそるじゃねーか! でも良いのかよ? 一族ってことはオッサンも対象になるぜ?」
「構わんと言っている。どうした? 怖気づいたか?」
「野郎……」
キャロルはポケットから何かしらの液体が入った小瓶を取り出すと、おもむろにそれを飲み干した。
直後、カタリナはキャロルから放たれる強烈なプレッシャーに無意識に後ずさりしてしまう。
「吐いたツバ飲むんじゃねーぞ……えー?」
キャロルはその液体の入った小瓶をその辺へ投げ捨てる。
一方でカタリナは自分の額に冷や汗が止まらずにいる事実を体験し、考察を余儀なくされた。
『何だこのプレッシャーは……く、やはり初撃を見てから使うべきだったか? だが、面白い!』
カタリナは簡易フェタークを取り出すタイミングを誤ったかと思ったが、同時に自分の格闘家としての血が騒ぐのを抑えられずにいた。
キャロルは蠱惑的な笑みを浮かべつつ、先程犬の獣人が見せたよりもより極端に姿勢を低くとった。
「準備はいいぜぇ……」
「ふむ、では──」
カタリナも左半身の構えを取り、ゆっくりと深呼吸した後、突き出したフェタークに勝負内容を告げた。
フェタークはその内容を受け取り、淡い光を放っている。
「カタリナ、勝負!」
フェタークが強い光を放つと同時にカタリナはキャロルから視線を外さずに、フェタークを力いっぱい右側に投げつけた。
それは猫の獣人の額に当たり「んニャア!」と言う声がファラク庭園にこだました。
「キャロル…………乗ったァアアアアアアアアッ!!」
キャロルはその獣のような低姿勢から一閃──
光速かと見間違うかのようスピードで、右拳をカタリナの顔面目掛け伸ばし突っ込んできた!
「速い! 速度16でこの距離を……」
それ以上の感想は今、カタリナは持つことは許されなかった。
既に自分の顔面に直撃しようかというその光速の拳に、普通であれば避ける選択肢を取るが、カタリナは敢えて迎撃を選んだ。
「ハァアアイッ!!」
カタリナは構えた姿勢から右足を軸にし回転させる。
回転の勢いを利用し、馬のように発達したその左足をキャロルの向かってくる拳へ向け蹴りあげた!
しかし、迎撃したと思われたキャロルの拳は迎撃の力を突き破ってカタリナに襲いかかった。
「甘え! 甘えぞカタリナァアアッ!」
「な、このパワーッ! まさか!」
咄嗟にカタリナはガードの姿勢を取るが間に合うはずもなく、触れた拳に頬骨がミシミシと悲鳴を上げた。
カタリナは瞬時に後方へ飛び、ダメージを軽減しようと試みるが、それでもそのダメージは大きかった。
「ぐあああー!」
吹き飛んだ先の地面に大の字になって寝そべるカタリナに対し、キャロルは攻撃の手を緩める事は無かった。
「まだまだぁッ!」
すかさずキャロルはカタリナへ向け飛びかかる。
カタリナが気付いた時には、逆光となって空中に佇むキャロルの姿が見えた。
キャロルはカタリナの顔面目掛け、踵を叩きつけようとする。
刹那──カタリナは寝たままの状態から首のバネを利用し、両足をキャロルへ向け跳ね上げた。
「舐めるな!」
その蹴り上げたカウンターがキャロルの腹部を突き刺さる!
「ぐはぁッ」
キャロルは舌打ちしつつ受け身を取りカタリナの方を見る。
既にカタリナも起き上がっており、息を整えてはいるが戦闘態勢をとっていた。
「キャハハハ、お寝んねの演技がよー、うめーじゃねーかカタリナァ! えー?」
「ふむ、演技を褒められたのははじめてだ。というより何だお前? その薬か?」
カタリナは疑問の答えが出ず、キャロルに問だ出すことにした。
というのも、カタリナはあの直線的なキャロルの技自体は2年前の試合でも経験していた。
だが、今日のそれはとても2年間でどうこう出来るレベルでは無いほどに人間離れしていたのである。
威力、スピード、いずれもカタリナにとって未経験の領域であった。
その要因……カタリナは決闘直前に飲んでいたあの液体であるとしか考えられなかった。
「だったらどうするよ? 負けを認めるか? えー?」
「いいや、ただ、何というかな。だとしたらお前も堕ちたなと思っただけだ」
「堕ちただと?」
「そんなものを使ったら私に勝てると思っている事が『既に堕ちている』んだ。分からんのか?」
「……もういっぺん言ってみやがれ」
「ああ、何度でも言ってやるぞ。グレ……いや、キャロルよ、お前は堕ちた。そして──」
カタリナは左半身の構えから、膝を上げ片足立ちの状態へと移行する。
ソレはまるでフラミンゴのような姿勢であり、これはカタリナが本気を出したという合図である。
「堕ちた馬鹿になんぞ、私は負けん。かかってきなさい」
「言わせておけばよー。この、クソアマがァアアアアアアアアッッ!!」
キャロルの咆哮が、ファラク邸に響き渡った──
「ああ? 何訳分かんねーこと言ってやがる? 俺はキャロルだ、忘れてんじゃーねぇぞ! えー?」
「ふむ、そうだったか? まぁいい、今日は3対1か?」
「何言ってやがる! コイツラはただの見物人だ。テメーを殺すのは俺だけに決まってんだろーが」
「ふむ、そうか。では──」
カタリナは右足を前に出して左半身に構え戦闘の姿勢を取った。
その後、突き出した右手の4本の指を舌を這わせるかのように手前に引き、キャロルを挑発した。
「かかってきなさい」
キャロルは薄汚い格好の猫と犬の獣人に一言「どけ」告げる。
獣人達は揃ってキャロルの側から離れると思った。
が、次の瞬間、猫の獣人はその跳躍力を利用しカタリナに飛びかかった。
同時に犬の獣人もその脚力を活かし、地面スレスレを高速で駆け出しカタリナへ襲いかかる。
「おまーに恨みはニャイが、覚悟するニャ!」
「倒させて貰うワン!」
『やはりな』
ここまではカタリナの予想通りであった。
冷静に獣人達の動きを見ていたカタリナは、数コンマ猫の獣人の攻撃が速く来ると予見した。
同時に犬の獣人に対応すべく、カタリナはその場でジャンプをするとその左足を鞭のようにしならせ、猫の獣人の横顔を打ち抜いた。
ガードする事すら出来ずに猫の獣人は「ギニャア」という叫びをあげ右方向へ吹き飛んでいった。
カタリナは勢いそのままに体を空中で回転させると右拳を地面へ向け突出す!
そのまま犬の獣人を地面に叩きつけようとしたカタリナであったが、何故かその場に居るはずの犬の獣人の姿はなかった。
それもそのはず──
カタリナが攻撃する前に、キャロルの重たい回し蹴りが犬の獣人の横顔を打ち砕いていたのだ。
犬の獣人はその衝撃に「ワオッフ」と叫び猫の獣人もろとも吹き飛んでいった。
文字通り地面に拳を打ち付けたカタリナは即座に距離を取り、戦闘態勢に戻った。
「……なんの真似だ? 仲間だろ?」
「キャハハハ、だから言ったろー? テメーは俺の玩具だってよー。邪魔する奴は死んだ方がマシだろ! えー?」
ふとカタリナが吹き飛んでいった獣人達を見る。
きっとジョシュの命令に従ったであろう獣人達は、キャロルの裏切りとも取れる行動や、自分達と比べカタリナとキャロルの圧倒的実力差を感じ取り、お互いに抱き合ったまま震え上がっている。
「ば、化け物揃いだニャ。どっちにしろアタシ達はここで死ぬ運命なのニャ!」
「死ぬ前にお腹いっぱい食べたかったわん……」
『ほぉ、意識を飛ばさないか。見所があるではないか』
カタリナは妙な感心を抱き、1つ決意を固めた。
「ふむ、キャロルよ。1つ賭けをしないか?」
「賭けだぁ? どういうこった?」
「なに、簡単なことだ──」
そう言うとカタリナは一枚の木版をキャロルに見せつけた。
それは簡易フェタークの改良版であり、実際に使用するのはこれが初めてである。
「私が『勝負』と言ったら、『乗った』と言うだけだ。簡単だろ?」
「んなこたいいんだよ。で? 何を賭けるってんだ? えー?」
「私が勝ったらそこの獣人を寄越せ、それと、今後2年は私達に手を出すな」
「ほーん。で、俺が勝ったらぁ?」
「好きにしろ。私達一族をお前の玩具だろうが何だろうが好きにして構わん」
「キャハハハ! いいねぇ、そそるじゃねーか! でも良いのかよ? 一族ってことはオッサンも対象になるぜ?」
「構わんと言っている。どうした? 怖気づいたか?」
「野郎……」
キャロルはポケットから何かしらの液体が入った小瓶を取り出すと、おもむろにそれを飲み干した。
直後、カタリナはキャロルから放たれる強烈なプレッシャーに無意識に後ずさりしてしまう。
「吐いたツバ飲むんじゃねーぞ……えー?」
キャロルはその液体の入った小瓶をその辺へ投げ捨てる。
一方でカタリナは自分の額に冷や汗が止まらずにいる事実を体験し、考察を余儀なくされた。
『何だこのプレッシャーは……く、やはり初撃を見てから使うべきだったか? だが、面白い!』
カタリナは簡易フェタークを取り出すタイミングを誤ったかと思ったが、同時に自分の格闘家としての血が騒ぐのを抑えられずにいた。
キャロルは蠱惑的な笑みを浮かべつつ、先程犬の獣人が見せたよりもより極端に姿勢を低くとった。
「準備はいいぜぇ……」
「ふむ、では──」
カタリナも左半身の構えを取り、ゆっくりと深呼吸した後、突き出したフェタークに勝負内容を告げた。
フェタークはその内容を受け取り、淡い光を放っている。
「カタリナ、勝負!」
フェタークが強い光を放つと同時にカタリナはキャロルから視線を外さずに、フェタークを力いっぱい右側に投げつけた。
それは猫の獣人の額に当たり「んニャア!」と言う声がファラク庭園にこだました。
「キャロル…………乗ったァアアアアアアアアッ!!」
キャロルはその獣のような低姿勢から一閃──
光速かと見間違うかのようスピードで、右拳をカタリナの顔面目掛け伸ばし突っ込んできた!
「速い! 速度16でこの距離を……」
それ以上の感想は今、カタリナは持つことは許されなかった。
既に自分の顔面に直撃しようかというその光速の拳に、普通であれば避ける選択肢を取るが、カタリナは敢えて迎撃を選んだ。
「ハァアアイッ!!」
カタリナは構えた姿勢から右足を軸にし回転させる。
回転の勢いを利用し、馬のように発達したその左足をキャロルの向かってくる拳へ向け蹴りあげた!
しかし、迎撃したと思われたキャロルの拳は迎撃の力を突き破ってカタリナに襲いかかった。
「甘え! 甘えぞカタリナァアアッ!」
「な、このパワーッ! まさか!」
咄嗟にカタリナはガードの姿勢を取るが間に合うはずもなく、触れた拳に頬骨がミシミシと悲鳴を上げた。
カタリナは瞬時に後方へ飛び、ダメージを軽減しようと試みるが、それでもそのダメージは大きかった。
「ぐあああー!」
吹き飛んだ先の地面に大の字になって寝そべるカタリナに対し、キャロルは攻撃の手を緩める事は無かった。
「まだまだぁッ!」
すかさずキャロルはカタリナへ向け飛びかかる。
カタリナが気付いた時には、逆光となって空中に佇むキャロルの姿が見えた。
キャロルはカタリナの顔面目掛け、踵を叩きつけようとする。
刹那──カタリナは寝たままの状態から首のバネを利用し、両足をキャロルへ向け跳ね上げた。
「舐めるな!」
その蹴り上げたカウンターがキャロルの腹部を突き刺さる!
「ぐはぁッ」
キャロルは舌打ちしつつ受け身を取りカタリナの方を見る。
既にカタリナも起き上がっており、息を整えてはいるが戦闘態勢をとっていた。
「キャハハハ、お寝んねの演技がよー、うめーじゃねーかカタリナァ! えー?」
「ふむ、演技を褒められたのははじめてだ。というより何だお前? その薬か?」
カタリナは疑問の答えが出ず、キャロルに問だ出すことにした。
というのも、カタリナはあの直線的なキャロルの技自体は2年前の試合でも経験していた。
だが、今日のそれはとても2年間でどうこう出来るレベルでは無いほどに人間離れしていたのである。
威力、スピード、いずれもカタリナにとって未経験の領域であった。
その要因……カタリナは決闘直前に飲んでいたあの液体であるとしか考えられなかった。
「だったらどうするよ? 負けを認めるか? えー?」
「いいや、ただ、何というかな。だとしたらお前も堕ちたなと思っただけだ」
「堕ちただと?」
「そんなものを使ったら私に勝てると思っている事が『既に堕ちている』んだ。分からんのか?」
「……もういっぺん言ってみやがれ」
「ああ、何度でも言ってやるぞ。グレ……いや、キャロルよ、お前は堕ちた。そして──」
カタリナは左半身の構えから、膝を上げ片足立ちの状態へと移行する。
ソレはまるでフラミンゴのような姿勢であり、これはカタリナが本気を出したという合図である。
「堕ちた馬鹿になんぞ、私は負けん。かかってきなさい」
「言わせておけばよー。この、クソアマがァアアアアアアアアッッ!!」
キャロルの咆哮が、ファラク邸に響き渡った──
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