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竜の谷とギフト 1
しおりを挟むダルトンの街を出て、またひたすら北に飛んでいく。魔物領が近づくにつれて、町も少なく針葉樹林の森か岩山などが増えてきた。
森には魔獣の姿がたまにだけれど、見える様になって……遠目にでも魔獣の恐ろしい姿を見て驚く。やっぱりここは異世界なんだなって実感する。
日も暮れかけた頃にやっと小さな集落に到着した。町とは呼べない程の数件の家と大きな建物が三棟並んでいる。大きな建物は、きっと竜舎や竜に関係する建物なのだろう。
集落に到着すると、すぐに一人の若い男の人が近づいてきた。
「主様! お早いおつきで何よりです。ささ、お部屋もご用意しておりますので、まずは皆様は客室にどうぞ。竜様! お久しぶりでございます!! 竜様方は私が診察室までご案内いたします」
私達よりも竜に向けての熱量がすごい人が迎えてくれる。もう竜を見る目がハートに見えるのは幻覚ではなさそうだ。そして、あっという間に竜をみんな連れて行ってしまった。
「あいつは相変わらずですね」
トラビス様がため息をつきながら後ろ姿を眺めている。
「フローラ様、挨拶もろくに出来ないやつで申し訳ありません。悪いやつでは無いのですが、どうも竜至上主義な所がありまして……それ以外は目に入らないんですよ……」
「そうなのよ。たぶん、私達の事も竜の主だから認識しているだけね。きっと王族だなんて気にしていないわ」
「まぁ、そんな感じだが竜の扱いには人一倍慣れているので安心だ。先生もいつも通り竜にかかりきりだろうから、俺達も少し休もう。姉さんフローラを頼んだよ」
そう言って、別々の部屋に向かって歩き出した。
ここは魔物領に近いけれど、圧倒的強者である竜が多く降りて来る場所のために魔物も近寄らないのだそう。
ただ竜は人に対しても危険なので、あまり人も近寄らないし気候も厳しいので竜の研究者達しか住んでいないそうだ。
魔法の伝令を送ってくれていたため、部屋は私達が泊まれる様に整えてくれてあった。なのでオリビア様と割りふられた部屋でゆっくりお茶をすることにした。
「さぁ、一日中飛んでフローラも疲れたでしょう? お茶にしよう。私の入れるお茶で悪いわね」
部屋にはポットが備えつけられてあり、オリビア様自らお茶を淹れてくれる。ここでは人員も少なく物資も少ない為に、誰しもが自分の事は自分でやる事にしているそうだ。
それで、トラビス様が兎亭で持ち帰り用の食事を何人前も頼んでいたのかと納得した。(そこまで好きなんだな、と勘違いしたのは内緒にしておかなきゃ)
軽食のお弁当にしても、たくさんあったので不思議だったけれど……ここの先生達や皆さんへの差し入れなのだろう。それだけ、ここの環境が厳しいと想像出来た。
私達も同じお弁当を夕食として食べてから、今日はもう休む事にした。思ったよりも竜での長距離移動に疲れていたのでちょっとだけ、早めに休めてよかった。緊張しているのもあるかもしれないけれど、身体のあちこちが痛い。
パールの状況は明日になってから先生達と確認する事になった。
翌朝は、オリビア様曰く先生達は眠らずに竜を診ているはずだからと、起床してからすぐに支度をして竜舎に移動する。そこには、昨日の若い人以外に数人の人が集まっていた。
「先生。突然すみません」
「ああ、オリビア様。いやいや、我らもパール様に会えて嬉しいですぞ。毒による影響は特になさそうですが、この一年の成長による影響がみられますな」
どうやら先生達は本当に眠らず、昨日からパールの身体を診てくれていたようだった。特に大きな問題もなかった様で安心する。
「ただ、折角いらして頂いたのでパール様を始めレナ様とゴールド様の診察もさせて頂きたい!」
「そうです! 昨日は毒の影響を調べたので今日は健康診断で、明日はレナ様、明後日はゴールド様を! ぜひ!」
「「ぜひ!!」」
先生達の圧がすごい。
こうして(有無を言わせず)竜の谷に三日間の滞在が決まった。
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