31 / 59
竜の谷とギフト 2
しおりを挟むアレックス様達の部屋に戻って四人で食べた朝食は、固くて小さなパンとスープが少しだった。
「フローラ、竜の谷から竜の山が見えるから後で一緒に見に行こう。まぁそれ以外に見るところも少ないのだが、上手くいけば新しい竜に会える」
「アレックス様、嬉しいです! でもせっかくここに三日もいるので、試したい事もあるんです! いいですか?」
試したい事? と三人とも首をかしげている。
私の力をここで活かせると思う。むしろ、ここみたいに足りない場所こそ、この力が生きると思うの。
「えと、どなたか土属性の魔法でこの土地を耕せたりしますか?」
「俺がやろう。二人は攻撃特化だし、俺はどの属性の魔法も使える」
え? アレックス様すごい!
「ただ、耕せばいいのか?」
「はい、本当はもっとやりようもあるんですが、時間もないので今回は耕すだけでお願いします」
アレックス様は「わかった」と言ってから、私の指定した範囲の土を掘り返し耕してくれた。
耕された土を確認してみると、そこは思ったよりも悪い土ではなかったので少し安心だ。
周囲に誰もいないのを確認してから、目の前の耕された土地の大きさを確認する。
「アレックス様。私もどれくらい出来るのか試した事がないので、分からないのですが……もし力が足りず倒れる事があれば、その後はお願いします。先日お話したように眠れば大丈夫なので心配しないでくださいね」
「今でなくても…………いや、理由があるんだな。わかった」
私は大きく深呼吸を一つしてから、大地に跪きふかふかの土に手を置いた。
何もないところ──無から有(う)み出す時には、こうやって有る物を触って有る物を活かす形で力を込める方が効率がいい事は既に実証済みだった。
大きくふぅ~と一つ息を吐く。
また一つ大きく息を吸い込んでから……
ふぅ~と二つめの息を吐いて──
私は目の前にある畑一面に、花を咲かせる様に力を込める。
ぶわぁっと音がしそうな程、いっせいに土から芽が出た──かと思うとそのまま、グーっと茎が伸び……ポポポポポンと花が咲いていく。
──目の前には一面のオクラの花だ。
「やった! 成功しました!!」
オクラは開花から三日から五日ほどで収獲出来る。
ナスと同じで花が咲けば、必ず実がなる家庭菜園初心者に向いている植物だ。
前世の実家でも庭に植えていて、花が咲いてすぐに食べられるので気に入っていた。
「アレックス様! 私やりました!」
「ああ」
「喜んでいるところ、ごめんねフローラ。これは何の花なの?」
「オリビア様! これはオクラです!」
「「「オクラ??」」」
三人揃って首をかしげているので、この世界にはないのかもしれないし、この国にないだけかもしれない。
でも、そんな事は問題じゃないのだ!
「見ていてくださいね。明後日には早ければ収獲出来ます。明後日はオクラパーティーです!」
オクラパーティーって何? とオリビア様が笑っているので、説明しようと立ち上がろうとしたら、身体がふらついた。
倒れるっ! と思った瞬間アレックス様が身体を支えてくれる。
「アレックス様。ありがとうございました」
「ああ、力を使った後の事は任されていたからな」
少し頬を赤くしたまま、私を抱き上げてくれる腕はとても頼りがいがある。やっぱり、アレックス様は素敵だ。
オリビア様もアレックス様も心配そうな様子で私を覗き込んでくる
「部屋で休むか?」
「いいえ! 少し休めば……このくらいなら全然平気です。それよりも、さっき言ってた竜の山を見に行きたいです!」
興奮ぎみにそう答えると、三人は一瞬ぽかんとしてから笑い──
そしてアレックス様に抱えられたまま、竜の山に向かったのだった。
16
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
イベント企画会社に勤める水木 茉穂は今日も彼氏欲しさに合コンに勤しむ、結婚願望が強い女だった。
ある日の週末、合コンのメンツが茉穂に合わず、抜け出そうと考えていたのを、茉穂狙いの男から言い寄られ、困っていた所に助けに入ったのは、まさかの男。
同僚で根暗の印象の男、【暗雨】こと村雨 彬良。その彬良が会社での印象とは全く真逆の風貌で茉穂の前に現れ、茉穂を助けたのである………。
※♡話はHシーンです
※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】のキャラを出してます。
※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
※終了したら【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開します。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる