34 / 59
フローラの価値
しおりを挟むしばらくオリビア様に「可愛い~天使~」と繰り返されながら、ギュムギュと抱きしめられていた。
オリビア様が落ち着いた頃に、アレックス様とトラビス様が「たぶん花粉がついたと思う」と声をかけてくれた。
いや、もう少し早く花粉付けは終わっていたよね? もっと早く止められたのでは?
「ありがとうございます。 そしたら、一箇所に花が数個付いているはずなので、一つだけ残して他は落とします」
「ええ? 落としちゃうの?」
オリビア様がムギュとしながら、不思議そうに聞く。
ムギュムギュ、ぐぇっ……なんか出そう。
「……はい。そうする事で一つ一つの林檎の実が大きくなるんですよ」
「じゃ~アレックスとトラビスでまたお願いね~。私の魔法じゃ無理だわ。木ごと燃やすか、すべて氷漬けにしそう」
「では、私はもう一対の林檎の花を作ります!」
そうして私は「私もフローラといく~」というオリビア様と共に、林檎の花をもう一対の木に咲かせ、先ほどと同じ作業をアレックス様とトラビス様にお願いした。
オリビア様はただただ、私を愛でる振りをして私の体調を気にかけてくれているみたいだった。
いや……もしかしたら、本当にただ愛でていた……だけ? ギュっと抱きつくのがお気に召した様だった。
そして今日は林檎の花を、数本の木に咲かせてから部屋に戻る事にした。
部屋に帰っても、オリビア様はひっつき虫の様に、ムギュムギュとくっついている。本当にお気に召したのか、今日はずっとこの調子だ。
「姉さん、気持ちはわかるが、くっつき過ぎだ。フローラが困っているだろ」
「何よ~羨ましいんでしょ~? あ~ごめんごめん。分かってるんだけど、なんかコレ気に入っちゃったのよね」
アレックス様がため息をつきながら、オリビア様に言う。トラビス様は困った顔で苦笑いだ。
「フローラ、今朝の話に繋がるんだが……少し話そう」
アレックス様が真剣な表情に、急に緊張してしまう。何かしてしまっただろうか。
不安を感じとったのか、アレックス様は安心させるかの様に一度優しくほほ笑んでから、真剣に話し続ける。
「フローラのギフトは、君が考えているよりも、ずっとずっと凄いものだ。真実、女神のギフトで最上位なんだと思う。母国で隠していてくれていて良かった」
そうかもしれないと、私は静かに頷く。
「恥ずかしながら、世界の中でも我が国が一番フローラの力が欲しいだろう。しかし、君のその力はどの国でも、何としてでも……何をしてでも欲しいと思うほどの力だ……」
アレックス様は一度目を閉じて、再び私を強く見つめた──
「そう、力尽くでも」
力尽くと聞いて、ギクリとする。
そして、アレックス様の力強い言葉と、二人の真剣な表情を見て私はやっと気がついた……だから、オリビア様は今日、こんなに私にべったりと…………。私が狙われるという可能性を考えての行動だったんだ。
今までの私は、確かにそこまでとは考えてはいなかった。あの国を出て、あの国から自由に生きたいと……ただ私らしく生きたいと考えていた。
私らしく生きる。
でも、それは前世の記憶からの影響で、自由に生きるのが当たり前の世界の話なのだ。
キュプラ国は、女神に愛された国で豊かすぎるほどの国だったから、そんなに危機感もなかったけれど……他国では違う。
いや、前世でも世界をみたら食料問題はあっただろうし、色々な問題がたくさんあった。
私の身近になかっただけで。
日本とキュプラで生きてきた私には、危機感が足りないのだろう。
「今後の事は王宮に帰ってから相談させて貰うにしても、とにかく力の使用とその事を知る者は最低限にしていこうと思っている」
「とりあえず不便かもしれないけれど、フローラは私と一緒に行動してね」
私はそこまで考えが及んでいなかった自分が恥ずかしくなってしまった。そうだよね。今までの環境が恵まれ過ぎていただけだよね。そうやって、自分の力を生かせるつもりでこの国に来たのに、やっぱり考えが甘いんだと、少し苦しく思う。
「御迷惑をおかけします……」
そんな私の考えはお見通しなのか、アレックス様は私の座るソファーの前に片膝をつき、両手を握る。
「フローラ違うんだ。迷惑なんかじゃない。君と出会えたこと、君が俺を……バルバドスを選んでくれたことを本当に感謝している。あの日、あの木陰で出会えて良かった」
「でも……」
「もちろん君の力は、我が国にとって喉から手が出る程に欲しい力だ。そして、世界中のどこよりも欲しがっているに違いないけど……でも、そんなことよりも、俺にはフローラに出会えたことが一番大切なことだ。だから、フローラの身を守ることが最優先だと思っていて欲しいって事だ」
そんな……まさか……だって。
私はまだ子供で……親も、頼りになる親族もいなくて……後ろだても何もなくて、キュプラ王族としても、いまひとつで……。
手紙はずっとやりとりしていたけど、出会ってまだ数回で……力を使えるから、役に立つからと、ここで生きていかせて欲しいとお願いしているくらいで……。
私を守ってくれていた母は亡くなって……私は乳母を守りたいと頑張って……。
涙を流しながら、必死に言葉にしようと思っても、何一つ言葉にはならなかった。
「ギフトとか関係ないんだ。俺にはフローラが大切なんだ」
「……っ! ゔわぁぁ~ん」
もうそこからなんにも言葉にならず、ただただ子供の様に泣き続けた。
そんな私に、みんな静かに寄り添っていてくれた。それは私が泣きつかれて眠るまで、ずっと寄り添ってくれたのだった。
「フローラは大人みたいな時と、子供らしい時があるわね……やっぱりキュプラでの生活のせいかしらね」
「そうかもしれないな。豊かだが、子供に対する嫌がらせという仕打ちでは片付けられないことが日常的に行われていたようだからな」
「それでもアレックスが介入してからは、だいぶ危険は減ったのでしょ?」
「命の危険はな。でも一人で、王宮という場所で戦うのは……辛かっただろうな」
「そうね」
長い沈黙が続く。
「お二人とも、過去を悔やんでも仕方ありません。今後の予定を組み直しましょうか」
「そうだな。姉さんはこのままフローラを頼む」
「私は可愛いフローラにくっつけて嬉しいからいいけどね。城に先触を出しとくわ」
☆別の短編もUPしています。よろしければそちらもご覧ください(*´ω`*)
※なろうサイトにて氷雨そら先生主催 #愛が重いヒーロー企画 参加作品でした!
企画お祭り初参加!こちらでも楽しんでいただけます様に☆( *´艸`)
13
あなたにおすすめの小説
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました
iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
イベント企画会社に勤める水木 茉穂は今日も彼氏欲しさに合コンに勤しむ、結婚願望が強い女だった。
ある日の週末、合コンのメンツが茉穂に合わず、抜け出そうと考えていたのを、茉穂狙いの男から言い寄られ、困っていた所に助けに入ったのは、まさかの男。
同僚で根暗の印象の男、【暗雨】こと村雨 彬良。その彬良が会社での印象とは全く真逆の風貌で茉穂の前に現れ、茉穂を助けたのである………。
※♡話はHシーンです
※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】のキャラを出してます。
※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
※終了したら【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開します。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる