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実食
しおりを挟む私が目覚めると、オリビア様が気遣わしげに顔を覗き込んできた。
「フローラ目が腫れてるわ、後でアレックスに回復をかけて貰おうね」
泣いて朝まで寝てしまうなんて恥ずかしい。謝ろうとするが、先にオリビア様に抱きしめられてしまう。
「フローラ。あなたはアレックスの婚約者で、もう家族なんだから私達に甘えてね。一人でよく頑張ったね」
朝から、また泣いてしまいそう。私は小さく「はい」と返事をしてから、オリビア様とアレックス様たちの部屋に移動し朝食をとることにした。
食事をとる間も、みんなが優しい目で見てくるので……なんだかそわそわした。このそわそわの正体は……。
嬉しいんだ。嬉しくてくすぐったい。
私だけで、力なんて関係なくても望んでくれるアレックス様。
私を家族として受け入れてくれるオリビア様。
微笑んで全て受け入れてくれるトラビス様。
私、どんなに危険でもやっぱり頑張りたい。この人たちの為に……この国の為に頑張りたいと密かに決意した。
とにかく今は気持ちを切り替えていこう!
まずはオクラの収獲をしなくっちゃね!
「今日はオクラを収獲して調理した後、近くの街で売りましょう! その後に先生達とパーティーをしましょうね!」
「パーティー……?」
「はい! そうと決まったらまずはオクラを収獲しましょう。オリビア様は私と一緒にキッチンを見学に行ってくれますか?」
「この時間なら、マルクが厨房にいるでしょう。私からマルクに手伝う様に伝えておきますね」
あ、昨日話した手伝いが出来る者です。とトラビス様が説明してくれる。確かに調理器具なんかは、ここの人に聞いた方が早いだろう。
そうして、収獲担当と調理担当に分かれて準備をはじめた。
キッチンは綺麗に整頓されていて、ここで全ての先生やスタッフの食事が準備されているとの事だった。普段はギルドから調理の方たちが派遣されて来ていて、一週間分を作成し保存して食べているのだそうだ。
調味料や鍋も全てあるし、いい感じだ。
ふと、調理室の端っこに、明らかな異質なモノが見えた。
「マルクさん、あの端にあるのって……」
「ああ、あれはいつだったか……ゴールド様が超大型の鳥獣を咥えていらした事がありまして……とにかく調理場所がたりないので、屋台と調理人をギルドから派遣してもらいました」
「ああ! あったわね、そんな事! その時の鳥をフライにしたり焼いたりでここの外と近くの街で屋台が出たわね!」
「その時の屋台を、調理人がおいていったので、あの隅に置いたままです」
「その街は近くですか?」
「ええ、竜様たちの力を借りれば一瞬です」
「そうね! 売るのはそこでいいかもしれないわ! 私達が来たのと反対方向にあるんだけど、帝国領と近くてそこそこ大きな街だしね!」
屋台もあるし、売り場所も確保できた! しかも、以前に屋台として出した事があるのがありがたい!
「さて……私も何かお手伝いが出来ればと思いますが……何からいたしましょう」
話を聞くと、マルクさんは意外にも料理がかなり出来そうだ。オリビア様は遠征時に軽く焼くとか煮るならやっていると言う程度だと、しょんぼりしている。可愛らしい。
「では、オリビア様には収獲されたオクラの下処理をお願いします」
まな板の上で塩で板ずりをして産毛をとってから、一分ちょっとの下茹でをお願いした。
「簡単ね! いけるわ! 任せて」
オリビア様は嬉しそうに力こぶを見せつけてきた。
ちょうどそこに一度収獲したオクラをアレックス様が運んで来てくれた。
「すごいな、フローラ! こんなに収穫されているんだ。これでもまだほんの最初の一部だ! 後、この十倍は取れるだろう」
「オクラはたくさんなるんです! 良かった」
オリビア様は、さっそくとばかりに板ずりを始める。隣でマルクさんが大きな鍋にお湯を張り(魔法って便利)鍋を火にかけてくれた。
「マルクさんには、板ずりをしたオクラにオーク肉の薄切りを巻き付けてください」
一つ見本を作り、オクラの肉巻きだ。味は塩コショウのみだが、これはこれで美味しいと思う。
あまり色んなモノを作りすぎても難しいので、塩オクラと肉巻き、あとはオクラの唐揚げだ。
私は板ずりしたオクラを切り、味付けした後に片栗粉をまぶしておく。これはここまで準備しておいて、その場で揚げて売ったほうが美味しいだろう。
その隙に、オリビア様が茹でてくれたオクラを鶏ガラのようなこちらの調味料と塩などを合わせたモノに浸しておく。
本当は鰹節や塩昆布があれば良かったが、こちらの馴染みのある味のほうがきっと好まれるに違いない。
収獲が進むたびに、アレックス様がオクラを定期的に運んで来てくれる。そのたびに、こちらをチラッと見て微笑んでくれる。なんか……新婚さんみたいだ。
そして、一言二言交わしてまた収獲に向かう。うん。私も頑張ろう。
やはり屋台だと、揚げ物や肉が好まれるだろうと、オリビア様には一度塩オクラを終了して肉巻き作りに参戦してもらった。オリビア様が下処理してマルクさんが肉を巻き付けて仕上げる。
効率よくどんどん肉巻きが完成する……こんなに売れるかな?? というものすごい量が出来上がっていく。
私もどんどんと切って、オクラ唐揚げの準備をしておく。コレもものすごい量だ。
収獲を終えたトラビス様とアレックス様も合流したので、アレックス様には塩オクラを数個にまとめて、袋に分けて貰う。
トラビス様には紙皿とピックを用意して貰う事にした。
準備があらかた済んだので、少量の油でオクラの唐揚げを人数分揚げて小皿に盛り付ける。
「まずは試食してみてくださいね!」
たぶん、初めてみるオクラに抵抗があると思うので、唐揚げか肉巻きが良いだろう。もしかしたらネバネバが受け入れにくいかもしれないけれど……唐揚げなら、どうかしら。
ドキドキしてみんなが食べるのを祈るように見てしまう。
「……どう……ですか?」
ぱくりと一口食べた後、一番最初に声をあげたのはオリビア様だった。
「わぁ~初めて食べる食感! でも美味しいわ!」
「なんか、ぬるぬるしますか?」
「するな。でも、味はいい」
「良かった! オクラはヌルヌルするんです! 栄養たっぷりです! 刻んでヌルヌルさせても美味しいのですが、初回はこちらのが受け入れられるかもと思いこっちにしました! 塩を後から振ってもおいしいです!」
次に肉巻きを焼いて食べて貰う。
「「「「うまい!」」」」
「良かった! こっちのが好まれそうですか?」
「私は唐揚げ好きだけど、こっちのが番人うけかもね!」
「いや、ものすごくおいしいです! もっと食べたいです」
「はい! 肉巻きの方がたくさんあるので食べてください!」
「こっちの小分けのものは?」
塩オクラに関しては反応はイマイチだったが、持ち帰って刻んで肉にのせても美味しいのでその方向で売ることにした。
トラビス様とマルクさんが値段を一生懸命考えているが、なかなか決まらずにいる。
「元手がかかっている訳でもないし、今回はアレックスの婚約記念で安売り! みたいなのでどう? オクラの抵抗感も減らせるんじゃない?」
「……それは、いいな」
「そうですね! 今回の婚約を公表するにもいい機会ですし! そうしましょう」
「はい!」
こうして、収獲したオクラを売りに隣街まで売りに行くことになった。
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