花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜

木村 巴

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居場所

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「ああ、フローラ~目が覚めた? 痛い所はない? 可哀想に。でも、会えて嬉しいわ!」

 目覚めると、私の隣には笑顔のオリビア様が来てくれていた。困惑する私をよそに、オリビア様はスリスリと頬ずりを堪能した後にイソイソと私の介抱をしてくれる。

「フローラは本当に……はぁ~可愛い。可愛い子兎ちゃんみたいだわ」

 力なくか弱い存在の私が、オリビア様には子兎に見えるらしい……。もうどこも痛くもないのだが、抱きかかえられて運ばれている。
 心配をかけてしまったのだから、と受け入れているけれど……少し恥ずかしい。

 どうやら、後処理で忙しいアレックス様の代わりに護衛してくれると文字通り飛んで来てくれたのだ。……これは断れないわ。



 トルバのとうもろこし畑も、ほとんどの畑で咲かせ終わっていたのでこれで終了とし、このままオリビア様と一緒に王城に戻る事になった。

 一緒に働いた皆さんに(オリビア様に抱きかかえられたまま)挨拶だけ済ませると、パールに乗ってあっという間にお城に帰ってきた。



 うん。帰って来た。バルバドスに来て間もないけれど、この城が私の帰る場所になった。そんな実感がこみ上げてくる。

 それがなんだか嬉しい。


 帰城した当日は疲れてすぐに寝てしまったけれど、翌日にはすぐに両陛下や兄弟のみんなが会いにきてくれた。そして、ブロンディールやトルバでの事を褒めてくれた。

 ただ、今回の事を受けて城内でもオリビア様がずっと付き添ってくれている。
 明日にもアレックス様が帰城するらしいので、それまではこのままでいるらしい。




「あ~あ、もう明日にはアレックスが帰ってきちゃうのね」

 もっとゆっくりしてくれたら、私がフローラの側にいられるのに、と笑いながらオリビア様と中庭を散歩している。

 遠くから、ランドリーメイドのジェニファーが「フローラ様お帰りなさい~」と手を振ってくれて、隣にいる教育係のアンに叱られている。
 思わずフフフと笑いが込み上げる。

 歩いていると、ここまでではなくとも皆が様々な声をかけてくれる。



 この二ヶ月足らず……僅かな期間、城から離れただけなので、まだ以前咲かせた花の茎から新たな花が咲いている。そんなに花が減った訳ではないけれど、城内のみんなから花が減って……私がいなくなって寂しかったと、色んな表現で言ってくれるのだ。

 嬉しかった。

 ここに私の居場所が出来たんだと、声をかけられるたびに実感する。



 横にいるオリビア様が、最初こそ「フローラは城内の者とも親しいのだな」なんて驚いていたのが、微笑んで一緒に手をふり返してくれたりする。


 中庭の四阿に着くと、ポーラ達がお茶の用意をしてくれていた。
 オリビア様が椅子を引いてくれ、一緒に四阿でお茶を飲むことにした。


 バルバドス城があるこの場所は、私がここにきて二ヶ月もすぎ本格的な春を迎えたにもかかわらず、まだ少し風は涼しい。
 でも頬にあたる風は涼しくて、歩いた身体にはちょうどいい。
 いい香りのする温かい紅茶もぴったりだ。




「この城の雰囲気がものすごく変わったな。それもこれもフローラのおかげだ」

 温かい紅茶をゆっくり堪能したオリビア様が、優しく微笑んでくれる。
 確かにバルバドス城は、質実剛健な雰囲気が強かった。それは何時でも魔物や魔獣の攻撃に備えているからだ。
 その反動か、ただお花があるだけでも雰囲気が和らぐのかもしれない。今までは食料問題もあり、花を飾る様な余裕はなかったのだろう。


「お花の力は偉大ですね」
「ん? いや、フローラがアレックスと仲睦まじい様子を見せてくれるからだよ。もちろん花もだけどね」
「仲睦まじい……」

 かぁっと頬が赤くなる。そう見えているって事は、そう、あれよね。
 わたしたちが、いちゃいちゃしてる様に、皆にも見えるのよね。

 私も実はそうかな? と思ってた。それくらいアレックス様が優しくしてくれたり、触れたりしてくれるから……もしかして? なんてドキドキしてたのだ。よかった勘違いじゃないよね?

 アレックス様のあの言葉の数々や態度は、その、私を、好ましく思ってくれているのよね?

 これ違ったら、恥ずかしいと思っていたの。小さな子に優しくしてたのを勘違いしてるんだったら、痛いじゃない!?
 前世含めてそんな経験全くないし!

 はぁ~オリビア様からみてもそう思うなら、きっと勘違いじゃないのよね。

 なんだか嬉し恥ずかしくて、もじもじしてしまう。そんな私をみてオリビア様が「本当にフローラは可愛いなぁ」と笑う。

 そんな穏やかな午後が過ぎていった。







 深夜、カタリという物音で目が覚めた。

「アレックス様……?」
「すまない、起こしたか?」
「あの後に眠り過ぎてしまって……目が覚めちゃったんです」
「そうか……なら、そちらに行っても?」

 はいと返事すれば、扉一枚向こうからアレックス様がこちらに歩いてくる。私もベッドから出ると、そっと手を取られ一緒にバルコニーへと出る。

「いくら婚約者でも結婚前の深夜に二人きりはな……フローラ体調はどうだ?」

 月明かりで浮かべるアレックス様の笑顔が眩しくてむしろ元気が出ちゃうかも。元気ですとだけ答えるけど……ふぁぁ~アレックス様に会えて嬉しいから元気出たのかも。

「よかった。とりあえず、犯人は単独犯で特に情報漏れも無いと確認がとれた。今回はトルバに元々潜入していた情報屋が、護衛や結界が強化されて何かあるとみて動いていた様だ。仲間もいない単独の犯行だったから安心していい」
「じゃあ、最初の計画通りに予定地を周れそうですか?」
「ああ、安心して周ろう。フローラに見せたい場所もたくさんあるんだ。今回は一部地域だけだが……いつか夏に美しい森や、秋に輝く湖、冬の氷の結晶が綺麗な場所なんかも一緒に見よう」
「これから毎年、楽しみですね」
「ああ」

 安心したのと、これからの未来を示してくれるアレックス様にトキメキと、これから先一緒に生きていくという意思を感じてまた嬉しくなる。



「一緒にたくさん周ってくださいね」
「一緒に……そうだな。ずっと一緒に行こう」


 ずっと、こうやって生きていく未来を思いながら……二人で城下の明かりを眺めた。

 空にある月の明かりは明るくて、今日咲かせた中庭で揺れるガーベラの花たちも、お互いの表情も何もかもを明らかにしているように照らしていた。







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