花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜

木村 巴

文字の大きさ
54 / 59

私の選んだ花

しおりを挟む



 アレックス様が戻った次の日は、ほとんど仕上がっている婚約披露用の衣装を試着したり、当日やそれまでのスケジュールを確認したりして過ごした。

 オリビア様は衣装合わせの段階からずっと付き添ってくれている。この国に相応しいドレスとキュプラ式のドレスとどちらにするかで、お義母様とオリビア様の間で何やら一悶着あったらしい。

 とりあえず、結婚式ではバルバドス国式で婚約式はキュプラ式のドレスを纏うのが良いのでは無いかと決まった。

 キュプラから持参したドレスもたくさんあったが、キュプラのドレスは基本的に淡い色のドレスが多いのだ。
 布も薄くて軽い物が好まれ、こちらのドレスとはだいぶ違う。前世でいう古代ローマのドレスに近い。

 そこで形はキュプラ式で、新たにアレックス様の色を合わせた赤い薄絹を基本したドレスを作成し婚約式で着用することにした。そして、黒の薄絹で作ったドレスを夜の披露宴で着る事に決まった。

 黒の薄絹のドレスは初めて着るので、似合うか心配だったけれど、大人っぽく見えてとても良かったと思う。


「キュプラのドレスは作成が簡単でいいわね。夏にはバルバドスでも、流行るかもしれないわ! 私と母も同じデザインで夜会に出ることにしたのよ!」
「そうなのですか? 嬉しいです」
「ええ。昼はフローラが天使だと知らしめる為にフローラだけにして、夜会では私達の家族と知らしめるのよ!!」

 ドレスはオリビア様が色々と一緒に考えてくれて、ちょうどキュプラとバルバドスの間の様なドレスに仕上がっていた。

 細かなレースや刺繍、小さな宝石が散りばめられた豪華なドレスに緊張してしまうけれど、とても素敵ではしゃいでしまった。


「作りが簡単だから、他の宝石や刺繍もたくさんつける余裕があったの! いい出来だわ!!」

 そう言ってオリビア様用のドレスも一緒に見て、二人してはしゃいだ。
 女子同士のおしゃれ話なんて初めてで、とっても楽しかった。




「あ~明日からまたフローラがいない生活だなんて寂しいわ」

 私を抱き寄せ頬をスリスリして文句を言いながら、話さないオリビア様に呆れた顔でアレックス様が答える。

「披露宴前には戻る」
「一週間前には戻って来るのよ! フローラの準備があるんだからね! 周辺国に、フローラは花を咲かせるだけって知らしめればいいんだから!」


 明日から国内のいくつかの街や場所を周り、花を咲かせて周る予定だ。

「ああ。フローラの力(ギフト)を知っている国も多いからな」


 そう。私達キュプラ王族のギフトは有料で開示されている。だから、私が花を咲かせるギフト持ちで最上位のギフトだと知っている国も多いのだ。

 今後の誘拐や力欲しさに狙われる事が減る為の対策として、私は普通のお花を咲かせる能力しか無いと思われたいのだ。

 そう。以前のキュプラ国内でのように。

 それが一番、無難でわかりやすい。だって、嘘を見抜けるギフトのお父様がいるんだもの。
 万が一今後のバルバドス国が豊作になって、その原因として私が怪しくても、お父様がキュプラ国内のギフトリストにそう記載しているのだから花を咲かせるだけで間違いないと思うだろう。


 だからお披露目と周遊という体で、披露宴やパレードの前に周辺に花を咲かせて歩こうという計画を立てていた。

 ああ、無駄に花を咲かせているんだな。綺麗だけど役に立たないな、と思ってくれたらいい。



 一月は小麦。
 一月はとうもろこし。この二つはは極秘で行う。

 そして最後の一月はただ花を咲かせて、見せて周るというのが私の立てた計画だった。



 残念な事に花を咲かせて周るのは、少し短くなりそうだけれど、これは披露宴後でもいい。アレックス様の討伐や視察に合わせて各地を周って行く予定だ。

 今回は特に人口の多い街や、諜報員や情報屋の入り込んでいるのが多い街、そして農業や放牧が盛んな土地を厳選して周る事になっている。


 目の前では、オリビア様が披露宴の準備もあるのだから早く帰って来いと切々と訴えている。アレックス様がフローラの安全のために打てる手は打っておきたいと、反論して訴えるのが……終わりなく続いている。



「バルバドス国を見て周りながら、お花をたくさん咲かせて来ます! お土産も買って来ますね」

 そう言うと「そんな事はいいから早く帰って来てね」とさらに抱きしめてくれる。

「姉さん、フローラにいちいち抱きつくのは止めてくれ」
「いいじゃない! 姉妹になるんだから! ああ~可愛い!! こんな可愛い妹はバルバドスにはフローラしかいないわ!」



 そんな風にオリビア様に可愛がられつつ、バルバドス城を出発した。

 竜で一緒に行くのはアレックス様とトラビス様のお二人だけ。
 それぞれ花を咲かす候補地には、侍女さん達が各地で待機してくれている。竜で移動すれば早いが、侍女さん達までは一緒に行けないので、計画的に宿泊先に待機して貰っている。


 最初の街はバルバドスの王都から一番近くて、大きな街だ。ここでは観光・視察目的だと街の代表には話してある。


 恭しく代表から歓迎の言葉と挨拶を交わす。

「今日は我が花嫁に、バルバドスの良い所を結婚前に見て欲しくてね」
「我が街を選んで頂き恐悦至極にございます」
「正式なものじゃないから楽にしてくれ」


 そうは言っても、警備や領主の態度で偉い人が来ると察していた住民がこちらの様子を伺っているのを感じる。

 これが王太子であるアレックス様だと気がついた住民は、顔色を悪くさせている。


 突然の王太子の視察は驚くし不敬が無いように慎重になるだろう。申し訳ない。


「殿下達は街を視察次第、すぐに次の場所に移動予定なのでここまでで結構です。移動場所も警護の問題上、極秘です」

 トラビス様から説明を受ける領主は、顔色が無いけど大丈夫かしら。アレックス様は完全に無視して、笑顔で私の手をひいた。


「さあ、フローラ。この街は良い布が見られるのでいくつか買おう。いくよ」
「はい」


 そうして、本当に大量の絹織物や布を購入して歩く。後ろでトラビス様が王城に届ける様に手配してついてくれる。


「本当にこんなに買わなくても……」

 こっそりアレックス様の耳元でそうというと、しょんぼりした声で「ダメだったか?」と言われるのでそれ以上強く言えなくなってしまう。

「そんなことよりも、ほら、皆が見てるよ。微笑んで?」

 そうして微笑んでから、街の中心だったと気がつく。
 そうか今か、と頷いた。


「アレックス様。たくさんの素敵なプレゼントをありがとう! 私からも皆様にしあわせのお裾分けです!」 



 そう言って、中心の広場でレンガの道沿いにたくさんのレンゲを咲かせて歩いたのだった。










しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

惚れた男は根暗で陰気な同僚でした【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
イベント企画会社に勤める水木 茉穂は今日も彼氏欲しさに合コンに勤しむ、結婚願望が強い女だった。 ある日の週末、合コンのメンツが茉穂に合わず、抜け出そうと考えていたのを、茉穂狙いの男から言い寄られ、困っていた所に助けに入ったのは、まさかの男。 同僚で根暗の印象の男、【暗雨】こと村雨 彬良。その彬良が会社での印象とは全く真逆の風貌で茉穂の前に現れ、茉穂を助けたのである………。 ※♡話はHシーンです ※【Mにされた女はドS上司に翻弄される】のキャラを出してます。 ※ これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。 ※終了したら【プラトニックの恋が突然実ったら】を公開します。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...