花咲姫のしあわせ〜国から棄てられる?こっちが棄ててやるんだから!〜

木村 巴

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パレード

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 婚約式から一転、大聖堂から王城まで豪華な馬車に乗ってパレードを行う。

 バルバドス王太子の婚約と結婚には、昔から必ず行われている慣習なのだそうだ。


 大聖堂から出て、件の豪華な馬車にアレックス様にエスコートされて乗りこむ。
 馬車が聞いていたよりも豪華で、驚いてしまう。並んで座れる広い座席はふかふかで、真っ赤なベロア素材の座面だ。金で装飾された窓枠が大きくとられて、パレード中にもよく顔が見える様に作られている。

 ちなみに馬車を引くのは大型の魔獣で、真っ白な大型蜥蜴というか竜に近い形の魔獣である。おしゃれな帽子や装飾がされていて、すごく可愛くて、かっこいい。


 私が馬車に夢中になっている間、アレックス様はどこか熱に浮かされた様子でこちらを見ていた。
 ふと目が合うと優しく微笑んでくれる。

 いやこれ、私の旦那様になるんですって! きゃーかっこいい!!


「フローラ、先程の声はフローラにも?」
「声……ですか?」
「ああ、バルバドス神の祝福だ」
「え? いいえ? ですが……神はなんと?」
「いや、我ら夫婦に大いなる幸あれと……今後は間違いが正されるだろうと…………間違いとはなんの事だろう」
「間違いですか?」


 うーん。なんの事だろう。まぁ、正されるなら、いいのかな?


「でも、神様から祝福を貰えて良かったです」
「ああ、あんなに祝福してくれるとは」


 そう話している内に大聖堂の敷地を出て、王都を進んでいく。沿道に駆けつけてくれた皆んなに、手を振りながら馬車はゆっくりと進む。
 馬車の周囲はアレックス様の軍から精鋭が揃えられ護衛されているので、そんなにこの近くには寄りつけないが、お祝いの言葉を投げかけてくれる。

 豪華な馬車から手を振っていると、アレックス様が逆の手を握ってくれる。

 この、ふとした瞬間がたまらなく嬉しい。


 このまま王城にまっすぐ進み、城壁から広場に顔を出す事になっている。



 婚約の祝いとして、焼きとうもろこしや湯でたものを串に刺した料理やコーンスープを広場で配っていた。
 そして、手土産用に一人分のシリアルを小袋に入れてお花を一輪つけて配布している。

 馬車からその様子をみながら、進んで行く。誰も彼も手に食べ物と花を持って、私達にお祝いを言ってくれる。


 さらに王城の前では、ポップコーンを配って貰った。何台かのポップコーン配布場所を用意して、塩バター味やメープル味などをそれぞれ配っている。バルバドスにはメープルの木があったのだ! これは視察中にとても嬉しい発見だった。
 爆裂種のとうもろこしもたくさん収獲できたので、今日だけでは食べ切れない量がある。皆には余裕を持って並んで欲しいと伝えて貰った。
 そもそも、軍の兵士が列を管理してくれているので怖くて皆キチンと並んでいた。


 ちなみにその兵士の皆さんには昨日のうちに、全員に試食して貰っている。魔法の使える人には、爆裂種の乾燥もお願い出来てしまった。
 そのおかげで準備にも余裕ができ、せっかくだから楽しもうとキャンプの様にみんなで鍋を囲んで焼いた。いざ試食用に調理の人達に加熱して貰ったら……ポンポンと想像以上に大きな音がするので、護衛に緊張が走っていた。
 もちろん事前に大きな破裂音がすると言ってあったので、みんな一斉に私を見るから、ウンウン頷いた。間違ってないよって!

 そんなのも思い出すと楽しい出来事となったと思う。
 その時は兵士さん達も護衛さんも、とにかく緊張感出してきて怖かったけどね。


 大きな体の兵士さん達が、小さなポップコーンを摘んで食べる姿が可愛いらしかった。
 好みはそれぞれだが、皆初めて見るポップコーンを楽しそうに食べてくれたので安心して今回のお祝いに出せた。

 お城の城壁の上からも、皆が笑顔でポップコーンや焼きもろこしの串を食べているのが見える。


 城壁の上に私たちの姿が見えると、また大きな歓声が上がる。笑顔で手をふり、レンゲの花をばらまいた。

 これから先、この国とこの笑顔を守りたいと思う。


「さあフローラ、一度休憩をとろう。お疲れ様」
「アレックス様、お疲れ様でした」

 そっと私をエスコートして城壁から、城内へと戻る。すると、私たちの住む王太子宮の目の前でオリビア様が駆け寄ってきた。

「フローラ、アレックス! とても素晴らしい式だった! 私はバルバドス神のお声をあんなに強くはっきり聞いたのは初めてだ!」
「ああ、姉さんありがとう。俺もだよ」

 オリビア様はとても興奮して、頬まで紅く色づいている。
「いや、こんな風に神託を頂けるなんて事あるんだね! フローラは、本当にウチに来てくれた天使だ!」
「えっと……ありがとうございます」

 天使はどうかと思うけど、とりあえず褒めてくれているからいいか。まぁ……否定しても、いやいや天使だ、いやいや女神だの応酬になるだけだと……学習済みだ。

「あ! それはそうと、会場の結界が人数が多いせいか、少し歪みが生じたみたいなんだ。夜会は他の貴族達も多く参加するから、アレックス修復を頼んでもいい? 主役に頼んですまない」

「いや、こんな時こそ大切だからな。早めに気がついてくれて助かった。フローラ、俺は先に夜会会場の結界の確認に行ってくる。……城内とはいえ、いつもよりも見知らぬ者がいるので十分気をつけて。トラビス、頼んだぞ」
「はい」


 アレックス様は夜会の結界確認と掛け直しが必要なので会場に向かった。

 もう、部屋の目の前なのにトラビス様まで私につけてくれるというのだ。
 正直、お城の中でここまでの警護は要らないと思うけれど、警戒するに越したことはない為ありがたい。
 オリビア様なんかは他の兄弟と一緒に、式典の後から城内を警戒して巡回してくれていたらしい。

 過保護だなとも思うけれど、その気持ちが擽ったい。


 とにかく私は、休憩と夜会に向けて着替えるめに、自室へと向かった。


 そう言って別れてから、自室までの数歩進んだ渡り廊下の先に、数人のレディ達が集まっているのが見えた。




「……いえ、本当に恐ろしいわ……」
「…………見たことあって?あら、ないの?」
「……まったく、嫌だわ」
「…………まるで、魔獣か悪魔のよう…………」



 彼女達の声が断片的に、しかしはっきりと聞こえた。








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