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てきかみかたか
第一話 僕は守られている。
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ここは山陵町、日本のS県にある。隣町の国前町とは付き合いが良く何の変哲もなく至って普通の町だ。
町の開発も程よくされており都会になった今でも森や山など自然の姿は残されている。
そこに住む誰しもがこの町の住人として誇りを持っていた。
しかしこの町の運命は大きく変わろうとしていたのだった。
ある日の事、いつもの様に僕が眠っていた所、少し奇妙な夢を見た。
知らない顔をした少年が話しかけてきたのである。
「悠斗、まだだ。まだ出来る。俺はね。生きるんだ。まだだ。まだ出来る。」その少年はその言葉をずっと繰り返しこちらを見つめていた。
奇妙な夢だがその声にはどこか懐かしい物もあった。
やがて僕は目覚めた。気味の悪い夢だったが夢精をした時のような、そんな言葉に出来ぬ気持ちよさ、心地よさが今の僕にはあった。
起きたら顔を洗い歯を磨くのが僕の朝のルーティンだからベッドから降りるとすぐさま洗面所に向かった。
水が顔に当たる感触がいつもよりも余計心地よく感じた。
次は歯を磨こうと思ったが歯磨き粉が切れていたので母に新しいのはないかと聞いたところ洗面台の上の棚にあるというので「あった。あった。」歯磨き粉が6本入った箱を見つけた。
僕はそれを取ろうとしたが高すぎてなかなか取れないので近くにあった棒のような物で箱をつついてみた。
すると思ったより力を入れすぎてみたいで箱がバランスを崩しこちらへ ガタっと落ちてきた。
僕はすかさず腕で頭を覆い守ろうとした。しかし箱が僕に当たるどころか落ちた音すらしなかった。
気になった僕は目を開け上を見てみた。
すると驚きの光景があったんだ。
僕の頭の真上で歯磨き粉の箱がピタッと止まっている。まるで何かに支えられているように。
僕がそれに気づいた瞬間に箱を支える何かはなくなり真っ逆さまに落ちてきた。
落ちる瞬間を見ていた為、キャッチ出来たのだが。
こんな風にあの夢の日から僕は何かに守られている。
夢を見た日から3日が過ぎ悠斗は自分を守っている存在の事も少し頭から薄れてきていた。
「悠斗遅いよ~。」今日は幼なじみの美佳と一緒に登校する日だ。美佳はバレー部に所属しており朝練がない日は悠斗と登校するようにしている。
「ごめんごめん!!母さんがさやたらお弁当張り切っちゃってさぁ...」
「もういいから、行くよっ」悠斗と美佳は学校へ向かった。
「今週の期末、マジでヤバイかもしれないんだよね...」美佳は大きくため息をついた。
「まぁ確かに今回は範囲も広いし覚える所多かったよね。」悠斗は同調した。
「それそれ!!ほんとウチの学校鬼畜だわ~」美佳はまた大きなため息をついた。
「僕も今回はかなり厳しいかなぁ 」悠斗は少し笑いながら言った。
すると美佳は少し黙り込んで悠斗を見つめた後 再び口を開いた。
「あれ、悠斗って自分のこと僕って言ってたっけ?」
え?
唐突の質問に悠斗は固まった。
「悠斗!!危ない!!」美佳が咄嗟に叫んだ。
突如、歩道に乗り上げた車が悠斗に向かって猛スピードで走ってきたのだ。しかし美佳の質問でボーッとしていた悠斗は気付くのが遅く、避けようとしても間に合いそうになかった。
(僕はこんな事で死ぬのか...まだだ。まだ生きていたいのに...)
悠斗は目を瞑りこの瞬間、死を覚悟した。
ガコンッ!!物凄い音が辺りに響いた。
「誰か人がはねられてんじゃないの!?」「見に行こう!!」周りにはヤジが集まってきた。
悠斗はこの車にはねられてしまったのか。答えは否である。
悠斗にぶつかる寸前で車がピタッと止められている。タイヤが回り続けているのにも関わらず車は見えない壁にぶつかっているように、いや何か物凄い力で押さえつけられているかのように全く前へ進まない。
「ねぇ、あんた!!ブレーキを踏みなさい!!早く!!」車の運転手に美佳が怒鳴り、すかさず車のタイヤは動きを止めた。
その光景をみた誰もが奇妙に思った事だろう。一体何故、車はうごきをとめたのか道路の溝にうっかりハマってしまったのだろうか。
しかしそれは違う。
悠斗は見ていた。薄らと人型の何かが悠斗が轢かれそうになる直前、体から出てきて両手で車を押さえたのを。
(これは一体何なんだ...コイツは...コイツが今まで僕を守っていた正体なのか..)
そんな疑問を抱え悠斗は学校へ向かった。
学校が終わり、悠斗は下校していた。帰りは美佳に部活がある為1人である。
悠斗は美香に勧められサッカー部に入ったものの自分には合わず今ではすっかり帰宅部になってしまった。
(こんな僕を見ていると真面目に部活をやっている美佳が本当に素晴らしいと思うよ。しかし今はそれどころじゃない。朝見た存在について考えなくては。)
「おいおい!!兄ちゃん!!随分といい制服だなぁ...どこ校よ?」柄の悪そうな男が悠人に絡んできた。カツアゲだろうか。
「凌武校です...」
「ほう...なら俺の後輩だなぁ...俺、凌武校の卒業生なんだよなぁ。そんでよ後輩くんさぁ、お金くれねぇかな。」
やはりカツアゲである。
「後輩がよぉ...先輩様にお金をあげるって事はとても名誉な事だと思うんよなぁ...」
「すみません...持ってないんです。」悠斗はブレザーのポケットにある財布を握り締めた。
「てめぇ...先輩様に逆らおうってんだなぁ...」
(まずい殴られる、財布を渡すべきか。いや違うだろ。何をビクビクしているんだ僕は。もう一度あの力を見るチャンスじゃないか!!)
悠斗は尚も財布を握り締め、キッとその男を睨みつけた。
その態度に更に激昂した男は悠斗に殴りかかろうとした。
「後輩は後輩らしく先輩にペコペコしてればいいんだよぉ!!」
(さぁ出てこい!!もう一度僕を守れ!!)
バシィ!!
「痛ッ!!」また守られる事はなく悠斗は地面に転がり込んだ。
「なんだよ...弱っちいな。ただのヘナチン野郎だなてめぇ。」グヒヒと品がない声で男は笑った。
「どうしてだ...何故出てこない...あの力はただの幻覚だったのか!?」地面に這いつくばりながら悠斗は言った。
「ゴタゴタうるせぇよ!!さっさと財布をよこせ!!カス!!」男は地面に寝転んだ悠斗を蹴飛ばした。
蹴飛ばされた悠斗は手から離してしまい財布は地面に転がってしまった。
「おっとぉ...中々いい財布だ。どれ幾ら入ってるかなぁ...」気味の悪い笑みを浮かべながら男は財布を拾おうとした。
すると....
バァンッ!!
突然、男の顔面が思いっきり何者かによって殴られた。
「コイツは....そうかやっと僕を守ったんだな!!」
そこにいたのは今朝、悠斗に向かって来た車を止めていた存在だった。
第一話 完 第二話に続く
町の開発も程よくされており都会になった今でも森や山など自然の姿は残されている。
そこに住む誰しもがこの町の住人として誇りを持っていた。
しかしこの町の運命は大きく変わろうとしていたのだった。
ある日の事、いつもの様に僕が眠っていた所、少し奇妙な夢を見た。
知らない顔をした少年が話しかけてきたのである。
「悠斗、まだだ。まだ出来る。俺はね。生きるんだ。まだだ。まだ出来る。」その少年はその言葉をずっと繰り返しこちらを見つめていた。
奇妙な夢だがその声にはどこか懐かしい物もあった。
やがて僕は目覚めた。気味の悪い夢だったが夢精をした時のような、そんな言葉に出来ぬ気持ちよさ、心地よさが今の僕にはあった。
起きたら顔を洗い歯を磨くのが僕の朝のルーティンだからベッドから降りるとすぐさま洗面所に向かった。
水が顔に当たる感触がいつもよりも余計心地よく感じた。
次は歯を磨こうと思ったが歯磨き粉が切れていたので母に新しいのはないかと聞いたところ洗面台の上の棚にあるというので「あった。あった。」歯磨き粉が6本入った箱を見つけた。
僕はそれを取ろうとしたが高すぎてなかなか取れないので近くにあった棒のような物で箱をつついてみた。
すると思ったより力を入れすぎてみたいで箱がバランスを崩しこちらへ ガタっと落ちてきた。
僕はすかさず腕で頭を覆い守ろうとした。しかし箱が僕に当たるどころか落ちた音すらしなかった。
気になった僕は目を開け上を見てみた。
すると驚きの光景があったんだ。
僕の頭の真上で歯磨き粉の箱がピタッと止まっている。まるで何かに支えられているように。
僕がそれに気づいた瞬間に箱を支える何かはなくなり真っ逆さまに落ちてきた。
落ちる瞬間を見ていた為、キャッチ出来たのだが。
こんな風にあの夢の日から僕は何かに守られている。
夢を見た日から3日が過ぎ悠斗は自分を守っている存在の事も少し頭から薄れてきていた。
「悠斗遅いよ~。」今日は幼なじみの美佳と一緒に登校する日だ。美佳はバレー部に所属しており朝練がない日は悠斗と登校するようにしている。
「ごめんごめん!!母さんがさやたらお弁当張り切っちゃってさぁ...」
「もういいから、行くよっ」悠斗と美佳は学校へ向かった。
「今週の期末、マジでヤバイかもしれないんだよね...」美佳は大きくため息をついた。
「まぁ確かに今回は範囲も広いし覚える所多かったよね。」悠斗は同調した。
「それそれ!!ほんとウチの学校鬼畜だわ~」美佳はまた大きなため息をついた。
「僕も今回はかなり厳しいかなぁ 」悠斗は少し笑いながら言った。
すると美佳は少し黙り込んで悠斗を見つめた後 再び口を開いた。
「あれ、悠斗って自分のこと僕って言ってたっけ?」
え?
唐突の質問に悠斗は固まった。
「悠斗!!危ない!!」美佳が咄嗟に叫んだ。
突如、歩道に乗り上げた車が悠斗に向かって猛スピードで走ってきたのだ。しかし美佳の質問でボーッとしていた悠斗は気付くのが遅く、避けようとしても間に合いそうになかった。
(僕はこんな事で死ぬのか...まだだ。まだ生きていたいのに...)
悠斗は目を瞑りこの瞬間、死を覚悟した。
ガコンッ!!物凄い音が辺りに響いた。
「誰か人がはねられてんじゃないの!?」「見に行こう!!」周りにはヤジが集まってきた。
悠斗はこの車にはねられてしまったのか。答えは否である。
悠斗にぶつかる寸前で車がピタッと止められている。タイヤが回り続けているのにも関わらず車は見えない壁にぶつかっているように、いや何か物凄い力で押さえつけられているかのように全く前へ進まない。
「ねぇ、あんた!!ブレーキを踏みなさい!!早く!!」車の運転手に美佳が怒鳴り、すかさず車のタイヤは動きを止めた。
その光景をみた誰もが奇妙に思った事だろう。一体何故、車はうごきをとめたのか道路の溝にうっかりハマってしまったのだろうか。
しかしそれは違う。
悠斗は見ていた。薄らと人型の何かが悠斗が轢かれそうになる直前、体から出てきて両手で車を押さえたのを。
(これは一体何なんだ...コイツは...コイツが今まで僕を守っていた正体なのか..)
そんな疑問を抱え悠斗は学校へ向かった。
学校が終わり、悠斗は下校していた。帰りは美佳に部活がある為1人である。
悠斗は美香に勧められサッカー部に入ったものの自分には合わず今ではすっかり帰宅部になってしまった。
(こんな僕を見ていると真面目に部活をやっている美佳が本当に素晴らしいと思うよ。しかし今はそれどころじゃない。朝見た存在について考えなくては。)
「おいおい!!兄ちゃん!!随分といい制服だなぁ...どこ校よ?」柄の悪そうな男が悠人に絡んできた。カツアゲだろうか。
「凌武校です...」
「ほう...なら俺の後輩だなぁ...俺、凌武校の卒業生なんだよなぁ。そんでよ後輩くんさぁ、お金くれねぇかな。」
やはりカツアゲである。
「後輩がよぉ...先輩様にお金をあげるって事はとても名誉な事だと思うんよなぁ...」
「すみません...持ってないんです。」悠斗はブレザーのポケットにある財布を握り締めた。
「てめぇ...先輩様に逆らおうってんだなぁ...」
(まずい殴られる、財布を渡すべきか。いや違うだろ。何をビクビクしているんだ僕は。もう一度あの力を見るチャンスじゃないか!!)
悠斗は尚も財布を握り締め、キッとその男を睨みつけた。
その態度に更に激昂した男は悠斗に殴りかかろうとした。
「後輩は後輩らしく先輩にペコペコしてればいいんだよぉ!!」
(さぁ出てこい!!もう一度僕を守れ!!)
バシィ!!
「痛ッ!!」また守られる事はなく悠斗は地面に転がり込んだ。
「なんだよ...弱っちいな。ただのヘナチン野郎だなてめぇ。」グヒヒと品がない声で男は笑った。
「どうしてだ...何故出てこない...あの力はただの幻覚だったのか!?」地面に這いつくばりながら悠斗は言った。
「ゴタゴタうるせぇよ!!さっさと財布をよこせ!!カス!!」男は地面に寝転んだ悠斗を蹴飛ばした。
蹴飛ばされた悠斗は手から離してしまい財布は地面に転がってしまった。
「おっとぉ...中々いい財布だ。どれ幾ら入ってるかなぁ...」気味の悪い笑みを浮かべながら男は財布を拾おうとした。
すると....
バァンッ!!
突然、男の顔面が思いっきり何者かによって殴られた。
「コイツは....そうかやっと僕を守ったんだな!!」
そこにいたのは今朝、悠斗に向かって来た車を止めていた存在だった。
第一話 完 第二話に続く
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