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てきかみかたか

第三話  力があるなら

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俺はある日宇宙人に寄生されてしまった。そいつは昔見たヒーロー物とそっくりの姿をしており俺を守ってくれているらしい。


「今日は木曜か。」木曜は美佳に朝練がある為、一人で登校である。
向かい風にあたり眠気を覚ましながら悠斗は学校へ向かった。
すると小さな少年が近づいてきた。
「お兄ちゃん、風船がね、あの木にね引っかかっちゃったからさ取って。」少年は拙い言葉で言った。
(園児かな..いや小学校は行っているか。)
「うん、今取ってあげるね。よし宇宙人!!」悠斗は風船が引っかかった木を指差し叫んだ。
悠斗の命令通り宇宙人は風船を掴み地上へ降りてきた。
「はい。これ風船。」悠斗はそっと風船を少年に手渡した。
少年にはこの宇宙人が見えてないようでどうも不思議がっている。
「変なの。宇宙人とか言っちゃってさ。」そう言うとお礼も言わずに去っていった。
「まぁ仕方ないから他の人には見えないんだし、さて学校へ急ごう。」
悠斗は学校へ駆けていった。


学校にて

(週末の期末に向けた自習時間という事なのだがどうも眠い。)
「すみません、先生。顔を洗ってきてもいいですか?」悠斗は手を挙げ教師に向かって言った。
「なんだぁ松岡、高校生にもなってみっともないぞぉ。どうせトイレやらなんやらで遊ぶんだろう。全く...」ネチネチとその教師は言った。
周りの女子やら男子がクスクスと笑っていた。

「ったくあのクソ教師.....相変わらず面倒くさいな。普通に顔を洗うだけだっつうの。」不機嫌そうに言った。
廊下を抜けた先の水道に辿り着くとそこには先客がいた。
「久しぶり。」
「おぉ...久しぶり....」気まずそうに悠斗は言った。
彼は水上 公正、悠斗とは中学校からの友達である。中学校では仲が良くよく一緒に行動をしていた。運が良く同じ高校に入ったものの二人は違うクラス、違うグループに属すようになり前のような関係をしなくなった。今では廊下ですれ違っても時折り無視をする仲である。
(気まずいな...昔はあんなに仲がよかったのにな。)
「最近はどうしてるんだ?悠斗。」公正が再び口を開いた。
「あぁ..うん。上手くやってるよ。」
「そうか、なら良かった。じゃあ僕はこれで。」そう言うと公正は教室へ戻ろうとした。
もっと喋りたい、また仲良く遊びたいそう思っているが公正が戻ろうとしてどこか安心している自分が悠斗は少し嫌だった。
どばぁぁああ
蛇口を強くひねり過ぎてしまい水が勢いよく飛び出した。
すると咄嗟に宇宙人が出てきて悠斗が濡れないようにガードした。
(危ない危ない...思ったよりも力を出してしまった。気をつけなくては。)

「悠斗...お前、どうなっているんだそれは.........」気がつくと公正がこちらを見ていた。
(しまった、見られてしまった。水が俺を跳ね除けているように見えているのか。)
「なんなんだそいつは....」
「そいつ!?まさか公正、これが見えるのか!?」思わぬ返答に悠斗は声を大きくした。
「わからない...なにかが薄らと悠斗の体から出てきて....そこまでしか。」頭を抱えて公正は言った。
「公正、お前は一体...」

「すまない。やっぱり忘れてくれ。」そう言うと公正は教室の方へ戻っていった。
(まさか.........な。)




学校が終わり下校時間となった。
今日は部活がない為美佳と共に帰る事になっている。
悠斗と美佳は学校を出ていつものルートに着いていた。
「いよいよ明日からだよ.....期末、まじ不安だよね~。」美佳がダルそうに言った。
「なんだか俺も少し不安になってきたよ。」悠斗は笑いながら言った。
「あっ!!俺、俺に戻ってる!!呼び方。」
「あ、うん。あの時はふざけて僕って言ってたんだよ。」
(まぁ本当はこの宇宙人が取り憑いたせいだろうけどね。)
「良かったぁ~やっぱり悠斗は俺の方が似合うよ。」美佳は言った。
「褒めてんのか貶してんのか分からないからたちが悪いよな.......」
「もうなにそれ。」美佳は悠斗の肩を叩いた。


なんだか向こうの方が騒がしい。
「なんか煙臭くない?燃えてる臭いっていうか。」
「まさか....ごめんちょっと俺行ってみる!!」そう言うと悠斗は臭いのする方へ走っていった。
「ちゃ、ちょっと待ってよ!!悠斗!!」


「これは......!?」
町のショッピングモールが燃えている。
隣の駐車場からどんどん火が燃え移っている。
恐らく既に通報はされているだろうがここよりもだいぶ拠点が離れている為消防車が来るのはしばらく後だろう。
(恐らく中には逃げ遅れた人がたくさんいる。このまま消防車が来るのを待っていたら死んでしまうかもしれない。)
悠斗は手をグッと握りしめた。
「力を持った俺が助けにいくべきなんだ.....」
そして悠斗は燃え盛るショッピングモールへ向かっていった。



第三話 完       第四話に続く

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