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第四章:深淵より来たる水曜日
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「ラムダ3、君はボクの起動命令無しに稼働状態になっていた形跡がある。これについて、記録があれば音声で報告せよ」
緒方いおりが、計測器のモニタを注視しながら、作業台上のラムダに命令する。
ラムダを井ノ頭邸に持ち込んだ酒井と蒲田、興味津々でかぶりつきの信仁は、作業台手前の最前列で様子を見ている。柾木と玲子はその少し後ろに、さらに玲子の後ろに時田と袴田が控える。巴と馨はイマイチ興味がないのか、人混みから少し離れて作業台の頭側に、菊子は自分を計測器のサポートに使っているのか、自身も首の後ろに接触型コネクタを貼り付けた状態で作業台のいおりサイドの頭側にいる。
ラムダが、エータを経由して答え始める。
「5月18日から、セキュリティシステムに不正規入力による制御中枢への干渉が記録されています。セキュリティは不正規入力に対する対応として、スタンバイ状態であった制御中枢をシャットダウンし、以降ラムダ3は約30秒前のマスターからの起動命令まで、セキュリティの監視機能及びログ機能以外は機能停止を維持しました」
エータの話す声は、当然のように柾木の声そのものだ。
「よろしい、ラムダ3、次の命令まで待機」
「はい」
いおりは視線を聴衆に向けた。
「詳しい事はセキュリティのログを解析しないと分かりませんが、ラムダ3の言っている事に間違いはないようです。ラムダ3はあの日、強奪された時は試運転後のパーツレベルでの作動検証の為に分解状態にあり、制御系はスタンバイ状態でしたから、言っている事と整合します。不正規入力というのは、何者かが呪的な方法で無理矢理ラムダ3をコントロールしようとしたのだと考えられます」
「よく分からないのですが……つまり、スイッチ切っておいたのに、誰かが魔法だかなんだかで勝手に動かしたって事ですか?」
酒井がいおりに聞く。いおりは頷くと、
「さっきも言いましたが、ボクのオートマータは構造的には人間に近いので、人間を使役する呪術で動いてしまった可能性が高いです。その場合、本来の制御系が死んでいても、外部からコントロール出来ちゃったんだと思います……ああ、これだ」
いおりは、計測器のトラックパッドを操作して、何か手がかりとなるログの記述を見つけたらしい。
「ボクの知っている錬金術や魔法の系統じゃないですね、シャーマニズム系の何かかな?菊子さん、該当する記録を検索出来ますか?」
「ちょっと待って下さいね……」
いおりが菊子に尋ねると、菊子の返事と共に実験室の隅の棚にいくつもの小さな明かりが灯り、めまぐるしく瞬く。
「……うわ、あれ全部NASかなんかだったのか」
信仁が呟く。瞬く明かりに照らされたそれは、大きな本棚くらいの大きさの、しかし本ではなく、びっしりとガラス瓶が並んでおり、ガラス瓶の中はしわくちゃなスポンジ状の何かが詰まっている。
「ああ、記憶専用のポジトロン大脳皮質です、USロボット社から試作品を分けてもらいました。ボクのオートマータ達の制御中枢もみんなこれです」
「USロボット社て……」
何でもないことのように答えたいおりの台詞に信仁が絶句しているが、酒井も蒲田もその意味がわからない。やはり分かっていない柾木は、そんなに凄いんですか、と玲子に聞こうと横を見て、玲子も信仁と同じように絶句している事に気付く。
「……はい、このあたりがヒット率高いですね」
ややあって、菊子が言う。モニタに検索結果が表示されているらしく、いおりがモニタをのぞき込む。
「あー、これはボクも知らないわけだ、なるほど……これなら確かに動くかも」
何事か納得した様子のいおりは、聴衆に向き直ると、皆に聞く。
「皆さん、殭屍って知ってます?」
緒方いおりが、計測器のモニタを注視しながら、作業台上のラムダに命令する。
ラムダを井ノ頭邸に持ち込んだ酒井と蒲田、興味津々でかぶりつきの信仁は、作業台手前の最前列で様子を見ている。柾木と玲子はその少し後ろに、さらに玲子の後ろに時田と袴田が控える。巴と馨はイマイチ興味がないのか、人混みから少し離れて作業台の頭側に、菊子は自分を計測器のサポートに使っているのか、自身も首の後ろに接触型コネクタを貼り付けた状態で作業台のいおりサイドの頭側にいる。
ラムダが、エータを経由して答え始める。
「5月18日から、セキュリティシステムに不正規入力による制御中枢への干渉が記録されています。セキュリティは不正規入力に対する対応として、スタンバイ状態であった制御中枢をシャットダウンし、以降ラムダ3は約30秒前のマスターからの起動命令まで、セキュリティの監視機能及びログ機能以外は機能停止を維持しました」
エータの話す声は、当然のように柾木の声そのものだ。
「よろしい、ラムダ3、次の命令まで待機」
「はい」
いおりは視線を聴衆に向けた。
「詳しい事はセキュリティのログを解析しないと分かりませんが、ラムダ3の言っている事に間違いはないようです。ラムダ3はあの日、強奪された時は試運転後のパーツレベルでの作動検証の為に分解状態にあり、制御系はスタンバイ状態でしたから、言っている事と整合します。不正規入力というのは、何者かが呪的な方法で無理矢理ラムダ3をコントロールしようとしたのだと考えられます」
「よく分からないのですが……つまり、スイッチ切っておいたのに、誰かが魔法だかなんだかで勝手に動かしたって事ですか?」
酒井がいおりに聞く。いおりは頷くと、
「さっきも言いましたが、ボクのオートマータは構造的には人間に近いので、人間を使役する呪術で動いてしまった可能性が高いです。その場合、本来の制御系が死んでいても、外部からコントロール出来ちゃったんだと思います……ああ、これだ」
いおりは、計測器のトラックパッドを操作して、何か手がかりとなるログの記述を見つけたらしい。
「ボクの知っている錬金術や魔法の系統じゃないですね、シャーマニズム系の何かかな?菊子さん、該当する記録を検索出来ますか?」
「ちょっと待って下さいね……」
いおりが菊子に尋ねると、菊子の返事と共に実験室の隅の棚にいくつもの小さな明かりが灯り、めまぐるしく瞬く。
「……うわ、あれ全部NASかなんかだったのか」
信仁が呟く。瞬く明かりに照らされたそれは、大きな本棚くらいの大きさの、しかし本ではなく、びっしりとガラス瓶が並んでおり、ガラス瓶の中はしわくちゃなスポンジ状の何かが詰まっている。
「ああ、記憶専用のポジトロン大脳皮質です、USロボット社から試作品を分けてもらいました。ボクのオートマータ達の制御中枢もみんなこれです」
「USロボット社て……」
何でもないことのように答えたいおりの台詞に信仁が絶句しているが、酒井も蒲田もその意味がわからない。やはり分かっていない柾木は、そんなに凄いんですか、と玲子に聞こうと横を見て、玲子も信仁と同じように絶句している事に気付く。
「……はい、このあたりがヒット率高いですね」
ややあって、菊子が言う。モニタに検索結果が表示されているらしく、いおりがモニタをのぞき込む。
「あー、これはボクも知らないわけだ、なるほど……これなら確かに動くかも」
何事か納得した様子のいおりは、聴衆に向き直ると、皆に聞く。
「皆さん、殭屍って知ってます?」
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