西王母の谷-金色にして漆黒の獣魔女、蝕甚を貫きて時空を渡る-Schlucht der Königinmutter des Westens

二式大型七面鳥

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第六章-朔日-

第6章 第142話

 少し前。ドルマ及び雪風と分かれて『迎賓館』方向に向かったラモチュンは、無事にペーター少尉達と合流する事が出来ていた。『住居棟』での一件をかいつまんで説明し、ラモチュンはペマとダワに『寺院』――『迎賓館』からは回廊沿いに反時計回りに隣の区画――へ向かうように指示する。
 曲がりなりにも全体の事情を把握している同胞団員ブラザーは自分達三人のみという事から、寺院に避難した同胞団員ブラザーをまとめるためだが、同時に、『衛生棟』の様子も確認する必要があるのも間違いない事でもある。
 責任感、だけではない想いからラモチュンはその役は自分だと宣言し、有無を言わさずにペーター少尉とオーガストの先に立って『衛生棟』――回廊沿いに時計回りに隣――へ向かう。
 流石に『衛生棟』の中を確認する際には『腕に覚えのある』ペーター少尉とオーガストが先に立ったが、上層階も中層階も人気も荒らされた様子もなく、三人は首をひねりながら下層階に向かう。
「その黒い塊ショゴス達ですが」
 螺旋階段を降りながら、オーガストがラモチュンに尋ねる。
「人を襲うわけではないのですね?」
「そう、だと思います」
 ラモチュンも、半信半疑ではあったが、そう答える。
「その場に居た私に何かする、という感じはありませんでしたから」
「全部が、同じ方に向かった?」
「そのように見えました」
「フムン……」
 オーガストは、ペーター少尉に向いて、言う。
「……呼ばれた、のでしょうか?」
「そう考えるのが一番腑に落ちますが。そうだとして、では、誰に、どのようにして?」
「さて……」
 螺旋階段の終わりが見えたところで、オーガストが言う。
「その呼び出し主がこの先に居るかも知れません。用心しましょう」
 言って、オーガストは拳銃M1917を抜き、それを見たペーター少尉もストック兼用のホルスターからモーゼルC96ブルームハンドルを引き出す。
 引き出して、
「……まあ、気休めですね」
「ですね」
 言い合って、ペーター少尉とオーガストは互いに苦笑した。

 『衛生棟』下層階の螺旋階段を降りたところで、仮にも軍人と、軍人ではないが一応の訓練を受けた二人が銃口を下げ、警戒を解く。
「……誰も、居ない……?」
 ペーター少尉とオーガストに続いて螺旋階段を降りて『衛生棟』の下層階に至ったラモチュンは、人気の無いその室内を見まわし、呟いた。
「何事かあったのは間違いないようですが……」
 オーガストが、押しのけられ、散乱したテーブルその他を見ながら、言う。
「……ここから、下に行ったようですね」
 押し破られた大型リフトの格子戸を確認したペーター少尉が、戻って来ながら告げる。
「その、大量の黒い塊ショゴス達は」
「……モーセス師範ロードは……」
 ラモチュンは、本来なら一つ上の中層階に居たはずのモーセス・グースを探して、視線をあちこちに彷徨さまよわせる。
「ユモさんも、いらっしゃいませんね」
 ユモがモーセスと一緒に残ったと聞いているオーガストが、呟く。
「ドルマさんとユキさんもです。ここに向かったはずでは……」
 ペーター少尉も、聞いている情報を確認する。
「まさか……」
「いや、彼女たちに限って、そんな事は」
 ペーター少尉の言わんとする事を先回りして、オーガストは否定する。
 ドルマはともかく、オーガストにとっては、ユモと雪風はそれほどまでに、神格化されていると言ってもよいほどに、強く、気高い存在になっている。
 それが、黒い塊ショゴスごときに――ショゴスのなんたるかはよく知らないが――後れをとるとは、オーガストには到底思えなかった。
 とはいえ。
 居るはずのこの場に居ない、その事実が、オーガストの胸中にじわりと、肺と心臓を一緒いっしょくたに握られたような不安感が湧き出してくる。
 その時。
「……そぉい!」
 どこからか、妙にくぐもった、それでいて聞き覚えのある声がした。
 そして、声がしたとほぼ同時に、大音響とともに、石壁の一部が吹き飛ぶ。
「……あら」
 きっちりと長方形に空いた石壁の穴から、右の横蹴り――スピードでなく、パワー重視の足裏蹴り――の姿勢で綺麗に停まったまま、獣魔女が三人を見ていた。

「あらやだ」
 外套M36を肩に羽織り、大人びた雪風の顔の獣魔女は、足を下ろし、セーラー服の袖に通した雪風の両手でスカートの裾を捌いて愛想笑いし、小型リフトから出てくる。
「何が半人前……百人力じゃないですか……あ、ペーター様!」
 獣魔女に続いて出てきたドルマが、ペーター少尉を見つけ、声をかける。
「……あ、ドルマさん」
 吹き飛ばされた石壁――何故か、反対側の壁にぶち当たって停まったそれはリフトの扉に変わっていた――の行方を呆けた顔で見ていたペーター少尉とオーガストがぎこちなく視線を小型リフトに戻し、ドルマを認めたペーター少尉が答える。
「……ドルマ……と……」
 床に尻餅をついていたラモチュンが、ドルマから獣魔女に視線を移動させ、言う。
「……えっと」
「……ああ」
 気付いた獣魔女が、答える。
「どう呼ぶか、迷いますよね」
――ユモでもユキでも、どっちでも良いんだけど――
「そうも行かないでしょ」
 獣魔女の中から聞こえる声なきユモの声に、苦笑しながら雪風が答える。
「とはいえ、呼びづらいのは確かよね」
――ベート――
「え?」
――ジェヴォーダンの獣って知ってる?――
「聞いたことは」
――なら話は早いわ。前から考えてたんだけど、ピッタリじゃない?あっちこっちでもめ事に巻き込まれてるあたし達に――
「正体不明の、神に背いた悪魔の獣、か……」
 獣魔女は、垂れ目を細めて、にたりと嗤う。
「……悪かぁないわ」
――『福音の少女』どころか『破滅をもたらす魔女と使い魔』だもの――
「魔女見習いでしょ?」
――うさい――
 くすくすと、獣魔女ベートは笑う。
「あんた、ホント、素直じゃないわね」
 笑い含みのユモの声が、答える。
――お互い様でしょ?――
「というわけで、この姿の時は獣魔女ベートでよろしく」
「え、ええ……」
 ラモチュンは、よくわからない。
 いかに国外の情報に通じているとはいえ、18世紀半ばのフランスの片田舎で起きたバケモノ騒ぎなど、チベットの民に知る由もない。
――てゆーかニーマント、あんた、色々黙ってたわよね?――
「何の事ですか?」
アイツ・・・が消えた事、ラモチュンさん達が来てた事、ニーマントさん、知ってたんでしょ?」
「ああ、その事ですか。はい、もちろん気付いていました」
 全く悪びれず、ニーマントは言う。
「ですが、私にとっては、お二人の変容の方がはるかに重要でしたので」
――あんたね……――
「ほんっとに、ニーマントさんはマイペースなんだから……」
――……で?――
 ユモの真剣な声が、ニーマントに聞く。
――モーセスさん・・・・・・は、どこに行ったの?――
「下に向かったようです」
「下?」
 雪風の声で呟いて、獣魔女ベートは振り向き、破壊された大型リフトの格子戸を見る。
「モーセス師範ロード?」
「話が見えませんが……まさか?」
 疑問と、言い知れぬ不安に眉根を寄せて首を傾げたラモチュンの言葉を補足するようにオーガストが言い、獣魔女ベートから大型リフトに視線を移す。
「その、まさか、です」
 ニーマントが、冷静に言う。
「ミスタ・グースは、黒い塊ショゴスと共に階下に向かいました」

「……おっけ」
 獣魔女ベートが、言う。
「行く?」
――もちろん。替わって――
「ん」
 ふっと、獣魔女ベートの顔が変わる、大人びた雪風似の顔から、大人びたユモ似の顔に。
 中の腕が消えたセーラー服の袖がふわりと垂れ、外套M36の袖の中にユモの両腕が通る。
 そのユモの右手が、左腰の銃剣バヨネットを抜く。
「かりそめの大地よ!」
 獣魔女ベートは、その外套M36に包まれた右腕を、右手に握る銃剣バヨネットを振るい、言霊パワーワードを吐く。
 淡く光る法円が、籠が抜け落ちている大型リフトの垂直昇降路シャフトに浮かび上がる。
「行くって、ちょっと!」
 ラモチュンが、一歩踏み込み、引き留めるように手を伸ばす。
「行ってどうするの!」
「モーセス師範ロードをお救いするのよ」
 そのラモチュンの横を通りながら、ドルマが微笑んで答える。
「あの獣魔女ベートなら、出来る。あたしも、微力ながらお手伝いしたいし」
「……そういう事であれば」
 ため息を一つついて、オーガストも歩み出す。
「私も、御一緒いたします」
「私も行きましょう」
 ペーター少尉も、歩き出す。
「足手まといにならないように気を付けないとですが」
「……」
 ラモチュンは、逡巡する。
 あれだけ得体の知れないものを見続けて、何故、さらにその渦中に飛び込もうと思えるのか。
 獣魔女ベートは、わかる。ドルマも、そうだ。言い方は悪いが、『ただの人』では無い。しかし、『ただの人』でしかないオーガストさんとペーターさんは?
「ラモチュンさんも、見に行きませんか?」
 そのラモチュンに、ペーター・メークヴーディヒリーベとオーガスト・モーリーがどのようなもの・・・・・・・であるかをまだ知らないラモチュンに、ペーター少尉が手を差しのべる。
「神秘か、深淵か。いずれにしろ、人智を超えた何か。そのような『真理』を」
 はっと、ラモチュンは気付く。
 真理を、得る。真理を得て、それを生かす。
 自分だけでなく、誰かのために。
 この人達は、自ら進んで、それを取りに行く。
 待つだけの、待っていただけの、与えられるもので満足していた自分と違って。
「……行きます」
 ラモチュンは、頷きつつ、言う。
「私も、連れて行って下さい」
「乗って」
 法円の上から、獣魔女ベートが手招きする。
――1名様、ご案内ごあんな~い――

 光る法円『かりそめの大地』は、5人――正確には、人格で言えば7人――を載せてゆっくりと垂直昇降路シャフトを下る。
 その速度、秒速0.5メートル程、一般的なエレベーターと同等の速度。もっと速くも出来るが、気圧差で耳が痛くなるので、対応し易い速度に抑えている。
「状況を、整理させてもらえますか?」
 オーガストが、言い出す。
「大まかには聞いていますが、ラモチュンさん達がここを離れてから何があったのです?」
「ニーマント」
「はい」
「あなたが説明して。多分、一番客観的だから」
「承知しました。まず、『衛生棟』地下二階の黒い塊ショゴスのうち、大きな一体はケシュカル少年のボディであり、残りは脳無しのただ黒い塊ショゴス、これは共通認識でよろしいですか?」
――只のて――
「全然只でも何でもないけど」
「そこまでは、伺っています」
「結構。紆余曲折は端折りますが、ミスタ・グースはそれらを地下三階に居た『みやこのショゴス』に処理させる為、ユモさんの力も借りて全て地下三階に運搬しました」
「『都のショゴス』、というのは?」
「この地下都市の動力源であり各施設の空調その他もまかなう存在、との事です」
「ああ……」
「その『都ショゴス』にケシュカル少年のボディであった黒い塊ショゴスを処理させようとしたところ、返り討ちにあい、へその緒テザーで繋がっている『都ショゴス』の本体まで影響しかねなかったためミスタ・グースがこれを切断」
「なんと」
「その直後にミスタ・グースは黒い塊ショゴスに取り込まれ」
「え」
「嘘!モーセス師範ロードが!?」
 目を丸くしたオーガスト、悲鳴に近い声で聞き返したラモチュンに構わず、ニーマントは続ける。
「ユモさんもユキカゼさんも救出に失敗、そうこうしているうちに大量の小型の黒い塊ショゴスが殺到し、やむにやまれずリフトの中に退避した、という次第になります」
「なるほど……」
「……」
 オーガストは腕を組み、ラモチュンは手で口を抑え、細い目は見開かれている。
 その見開いた目で、ラモチュンはドルマを見る。ドルマは、硬い表情のまま、重く頷く。
「そんな……」
「モーセスさんの放射閃オドは消えてなかった」
 獣魔女ベートが、低めのユモの声で――元々ユモの声はアルト寄りだが――言う。
「そもそも、あの人だって『奉仕種族ショゴス』なんでしょ?簡単に喰われるとも思えないわ」
「そう……でしょうか?」
――……モーセス『奉仕種族ショゴス師範ロード、か……――
 雪風の声が、不安げなラモチュンの耳にも届く。
――割とイケてる二つ名じゃない?――
「だわね」
 にやりと、獣魔女ベートが笑う。
「じゃあ、ちゃっちゃと片付けちゃいましょうか?」

 光る法円が、『衛生棟』の直下百メートルの『処置室』に到達する。
 大型リフトの『処置室』側の扉は、浅層階の格子戸とは違いそれなりに丈夫な金属の上開き扉であったが、見事に破壊、リフト側から『処置室』ホールに向けて圧壊していた。
 当然のように、昇降ワイヤーの切れたリフトの籠もこのフロアに着床し押しつぶされており、それだけでどれほどの重量がこの籠にのしかかり、扉を押し破ってホールに溢れたか想像にかたくない。
「……居ないわね」
 そのホールを見渡して、ユモの声で獣魔女ベートが呟く。
あれ・・、どんくらいの大きさだっけ?」
――ざっくり15トン、直径5メートルの球体――
「そんなモノが、そこら辺に隠れてるわけは無いわよね」
――不定形だから、どこにでも潜り込めるだろうけど、体積はどうにもならないはずよ――
「てー事は、よ」
 獣魔女ベートは、ひしゃげ、開け放たれたホールの入り口の扉を見る。
「やっぱ、あそこから出てったって事よね?」
「追いましょう」
 オーガストが、歩き始める。
「それほど遠くには行っていないでしょう」
「……どこへ……」
「?」
 呟いたペーター少尉に振り向き、オーガストは歩みを止める。
「どこへ、何をしに行くのでしょう?」
「さて……」
 オーガストは、肩をすくめる。
「それは、黒い塊ショゴスに聞いてみないことには」
「……ですね」
 苦笑し、ため息をついて、ペーター少尉も歩き出す。
「行きましょう」

 くるりと廻した銃剣バヨネットを左の逆手に持ち替え、Gew71ライフルを肩にかけた獣魔女ベートを先頭に、一同は早足で最下層の通廊を進む。
 獣魔女ベートの後ろにはオーガストとペーター少尉、ラモチュンがそれに続き、ドルマが殿しんがりく。
――この道、通ったことない?――
「奇遇ね、あたしも今そう言おうと思った」
「宮殿の、控えの間に続く通廊です」
 雪風とユモの呟きに、ラモチュンが答える。
「宮殿に向かっているのかしら?」
「何の為に?」
「さあ……」
 ドルマに聞かれて、しかしラモチュンにも分かるはずがない。
――だーいじょうぶ、まーかせて――
 雪風の声が、それに答える。
――ふん捕まえてぶちのめしてから、ゆっくり聞いてやるから――
「やけに強気じゃない?」
 ユモが、混ぜっ返す。
――そりゃもう。今のあたし、ミッチミチにやる気に満ちてるわよ――
「そりゃ結構。せいぜい源始力マナを使わせてもらうわ」
――おうよ、ナンボでも持ってけ泥棒――
「言い方」
 悪態をつきあいながら、ユモは思う。
 思った以上に、『おまじない』が効いているみたいだ、と。
 魔法とは、ただ呪文を唱えればよいものでも、スティックワンドを振ればいいものでもない。
 正しい鍛錬、正しい詠唱、正しい印、そして、必要にして充分な源始力マナ
 それらがあって初めて成立するものだが、それだけでもない。
 もっとも大事な事、それは。
 結果をイメージし、気持ちを込める事。
 その意味において、母が子に施す『ちちんぷいぷいホクスポクス』のまじないほど強く、純粋なものはまず無い。
 ユモは、ユモの顔に似た獣魔女ベートの頬を緩ませ、思う。
 ママムティに、最初に教わった、全ての根源の呪文。究極の、まじない。やっぱり、ママムティは凄いんだわ……

――……居るわね――
「居ました」
 ニーマントよりわずかに早く、雪風がその気配に気付いた。
 宮殿直下、階段を降りたホールから入る『控えの間』。その奥の『謁見の間』の、そのさらに奥の『儀式の間』に続く大扉の前。
 回廊から階段前ホールに出たあたりでその気配に気付き、獣魔女ベートは早足から小走りになり、同時に肩からGew71ライフルを下ろす。
「……大魔法使いマーリーンに連なる我、ユモ・タンカ・ツマンスカヤが精霊に命ずる!」
 『控えの間』にすべり込んだ獣魔女ベートは、そこで足を停め、足を踏みしめ、呪文を振動させる。
 磨き上げられた石張りの床にまばゆい法円が展開し、大気中のエーテルがきらめく。
 しゃきん。外套M36に通したユモの腕がGew71ライフル銃剣バヨネットを着剣し、同時に、いつの間にかセーラー服の袖に収まった雪風の腕が外套M36のポケットから弾丸アモを取り出す。
 ユモの腕でGew71ライフルを構えたまま、雪風の腕が槓桿ボルトハンドルを引き、弾丸アモ薬室チャンバーに挿入する。
 遊底ボルトを閉じた雪風の腕は、そのまま木刀れえばていんを引き抜き、下段に構える。
 体格に優れる獣魔女ベートは、『かりそめの大地』による射撃姿勢の補佐サポートを必要としない。
く現れ出でて、我が想いを成し遂げよ!」
 声高に呪文を、聖句を振動させると共に、獣魔女ベートGew71ライフルを持ち上げ、肩付けする。
「光の弾丸よ!」
 先台フォアエンドを支える左手の人差し指を、獣魔女ベートは目標を指し示すがごとくに前に伸ばす。
 その指先に、周囲のエーテルのきらめきが集中し、光球となる。
「我が示す的を射抜け!」
 旗型フラッグ安全装置セイフティを解除し、引き金トリガーに指をかける。
 左の人差し指の光球が、ふわりと銃剣バヨネットに移る。
神鳴るごーっど……」
 目標に照星と照門を一直線に合わせ、獣魔女ベートは呪文の末節を振動させ、同時に引き金を引く。
 撃針ファイアリングピン雷管プライマーを叩く一瞬前、銃剣バヨネットの光球は銃口マズルに集束する。
「剛弓《ご-がん》!」
 閃光と共に轟音が鳴り響き、濛々もうもうたる白煙が銃口から吹き出す。
 まばゆいばかりの源始力マナの輝きをまとった鉛の弾頭が、音より速い速度で『接見の間』の向こうに居る黒い塊ショゴスへ、地下室の淀んだ大気を切り裂いて突き進んだ。
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