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王都学園編

ルームメイト

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 学園寮は男子と女子で別々になっていて、再び王都に来た俺とエリナは途中で別れてそれぞれの寮に向かい、現在俺はこれから入寮する男子寮の管理人であるおばちゃんに寮の説明を受けている。

  「いいかい?この寮は四階建てで一階は食堂で朝食や夕食、あと授業がない日とかに利用すれば良いからね!そして二階からが生徒達の部屋で二階が一年、三階が二年そして四階が三年だから間違えるんじゃないよ。それと、部屋は二人で一部屋のルームシェア になっているから同じ部屋の子と仲良くしなさいよ!」
  「分かったよ」
  「…それじゃあここまでで何か質問はあるかい?」
  「いや、特に無いな」
  「そうかい……それじゃあはいっ。これが部屋の鍵ね」

 そう言って渡されたのは、カード型の鍵、いわゆるカードキーでと言うやつで其処には数字で205と記されていた。

  「其処に記されてる数字があんたの部屋の番号だからね!呉々も無くすんじゃないよ!」

 成る程つまり俺の部屋は205号室と言うわけか。

  「分かったよ…ありがとおばちゃん!」

 おばちゃんに礼を言い、俺は自分の部屋がある場所へと向かった。





  「205っと…お!?あった!此処だな!」

 自分の部屋の前に着いた俺はさっそく先程渡されたカードキーを使ってドアを解錠し部屋の中へとはいると、既に中には誰か居た様で俺に気付くと声を掛けてきた。

  「あ!もしかして此処の部屋の人ですか。」

 声のする方へ視線を負けると其処には、栗色の髪をした男が居た。彼は二段ベットの一段目に腰を掛けていて、手には本をもっていた。どうやら俺が来るまで読書をしていたようだ。

  「あぁそうだが」
  「じゃあルームメイトですね!あの僕、マルコって言います。クラスはA組です」
  「俺はアルスだ。因みに俺もA組だ。……て言うか同級生なんだから敬語は無しにしようぜ!」

 アルカナ王立学園はA組.B組.C組と三つのクラスに別れていて、入試の合格通知と共に自分のクラスが知らされる形となっている。別に成績が良いからA組と言うわけではなく、ランダムでクラス分けされている。因みにエリナもA組だ。

  「……うん、そうだね!…じゃあ宜しくねアルス」

 そう言ってマルコは左手を差し出してきた。それに応える様に俺は自分の右手を差し出し、握手を交わした。

  「あぁ、宜しく!」





 自己紹介を終えた俺達は、それぞれ入学式までの暇な時間を潰していた。

 ふとマルコの方に視線を移すと、彼は手に持っていた本を開げ読書を再開ていた。

  「……なぁさっきから何読んでんだ?」
  「ん?これかい?これは『勇者黙示録』って言うこれまでの勇者様の功績とかが書かれている本だよ」
  「へぇ~もしかして勇者好きなのか?」
  「いや、好きって言うよりも興味があるんだよ。ほら、この国には勇者が造ったと言われる迷宮があるでしょ?」

 父さんから聞いたことあるな、確か王都から南側にあるらしくて、冒険者とか腕に自信がある人たちがよく挑んでいて、現在の最高突破階層は二十五階層だって言われてるんだっけ。―――そう言えば学園の実戦訓練も其処で行うんだっけな。

  「有ったな」
  「なんでそんな所に迷宮を造ったのか気になってこの本を読んでたんだけど……どうやらそれっぽい事は書いてないみたいなんだよね」
  「それでもその本を読んでるって事は、やっぱり勇者好きなんじゃないのか?」
  「あはは、かもね」
  「……なぁ、ちょっと其れ見せてくれないか?」
  「いいよ。はい」
  「ありがと……ふむ」


 読んでみると確かにこれまでの勇者の功績などが書かれている本で、纏めるとこんな感じの内容だった。



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 トウマ・イチジョウ

 この世界アルテシアには三柱の神が存在する。その内の一柱 である邪神ゼノスを信仰する魔族によって人類は窮地に立たさ れていた。しかし其れを悔んだ創造神フォーリアが自らの使者である"トウマ・イチジョウ"を勇者として人類の元に召喚した事で魔族の侵攻を止める事に成功し、人類は平和を取り戻した。

 初代勇者とも呼ばれている。

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 《六勇者》

 かつて世界各地にあるダンジョンから大量の魔物が地上に溢れかえり、近隣の街や村は不安と恐怖の日々が続いていた。(後にこの事件の事を"スタンピード"と呼ばれる様になった)そんな中たった六人の男女が魔物に立ち向かい街や村を護っていた。その結果、被害は最小限に抑える事が出来た。そんな彼らに護られていた街や村の人々は、彼らの事を勇気ある者として"勇者"と呼ぶ様になった。



 シンジ・オダ(稀人)

 《六勇者》の一人、"双剣の勇者"

 アルカナ王国には彼の造った迷宮が在る。何故造ったのかは未だ不明である。また、東の最果てには彼の建国した国が在ると言われているが、東の最果てには強力な魔物が生息しており迂闊に近づく事が出来ないため、その存在もまた不明である。



 ジャック・A・ハインツ(稀人)

 《六勇者》の一人、"自由の勇者"

 誰よりも自由を愛したと言われている。
 この世界の何処かに彼の造った"楽園"が存在し、其処は種族の壁を越えた自由な場所だと言われている。



 キム・スジョン(稀人)

 《六勇者》の一人、"知恵の勇者"

 "スタンピード"の際、彼女の膨大な知識で戦況を優位に立たせた。



 マモル・サジョウ(稀人)

 《六勇者》の一人、"守護の勇者"

 "スタンピード"の際、迫り来る数多の魔物から街や村を護った。他の《六勇者》が魔物の殲滅に集中出来たのも彼の存在があっての事だ。


 ヒカリ・サジョウ(稀人)

 《六勇者》の一人、"癒しの勇者"

 サジョウ・マモルの妹
 "スタンピード"の際、怪我した人達を治しに掛かっていた。彼女の手にかかれば、切断された腕や脚なども一瞬で治してしまうと言われていた。
 戦闘面に関しても他の《六勇者》に劣らないと言われていた。



 ノーネーム(稀人)

 《六勇者》の一人、"漆黒の勇者"

 とある国の王が彼らに名を聞いた時、「俺は影に生きる者。故に俺に名などない」と言ったそうだ。彼の真名を知るのは、《六勇者》だけである。
 他の《六勇者》から厨二病だと言われていた。


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  「…なぁ、この名前の隣にある"稀人"ってのは何だ?」
  「"稀人"って言うのは、この世界じゃない何処か別の世界から来た人達のことを言うんだよ。」
  「ふぅん。別・の・世・界・ねぇ」
  「《六勇者》全員"稀人"だったって言われてるんだけど、《六勇者》以外に"稀人"が居たって言う記録は無いんだよね………それより制服に着替えないの?もうすぐ入学式が始まる時間だよ」

 そう言った彼は既に制服に着替えていた。

 そう言えば午後から入学式があったけ。

 アルカナ王立学園の制服は紺色に白のラインが入っていて、襟元には学園の校章そして胸ポケットにはアルカナ王国の紋章が其々付いていた。

  「もうそんな時間か。じゃあ着替えるか」

 そう言って持って来た荷物の中から学園の制服を取り出して着替え始める。

 ―――うん、サイズもピッタリで丁度いいな。


  「さて、じゃあ行くか!」
  「うん!」

 着替え終わった俺は、マルコと共に部屋を後にした。
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