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ヴァルシャ帝国編

出発準備②

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 無事今日泊まる宿をとる事が出来た俺たちは再び外へ出てある場所へと向かっていた。
 それは普段生活するにおいて欠かせないものが売っている場所。
 そう―――服屋だ。
 今日は予てから決めていたようにリリムの服を幾つか見繕うつもりだ。
 その為リリムには霊体化を解いてもらい(彼女が嫌でなければ暫くは可視化した状態でいてもらうつもりでいる。勿論他意はない!)《上位悪魔》の姿でいて貰っている。
 もちろん、あの露出の多い格好で外を歩かせるわけにもいかないので(と言うか今後一切あの格好をさせるつもりはない!)、今は魔導袋に仕舞っていた俺の服を着て貰い、何とか未然に肌の露出を防ぐ事が出来た。
 にも関わらず、道中男女問わず行き交う人達がリリムに視線を向ける。

「……」

 何故だろうか、リリムにそう言った視線を向ける奴らに若干の苛立ちを覚える。
 さっきなんてリリムに視線を向けてしまっていたあまりに、隣にいた彼女に平手打ちされてその場で別れを告げられた奴を見てザマァと思ってしまったくらいだ。

 とまぁ、そんなこんなで服屋に辿り着いた。

 中に入ってまず驚かされたのは、服の種類とその数の多さだ。

 平民から貴族が着るようなものまで揃っていて、それらは季節に沿ったものからパーティーの時などに着るもの、冒険者が着るような動きやすいもの。同じ服なのに生地の色が違っているものなど、もはやその規模はリーベルの街にある服屋とは比べ物にならない程だ。
 更に部屋の端に目をやるとそこには試着室があり、その中には人一人の全長を映せる程の大きさの鏡があり、それで自分の姿を確認出来る。

 正直、女性が着る服なんて男である俺がわかるわけもないので、そこはプロである店員さんに任せてる事にして俺は近くにある椅子に腰掛けて待つ事にした。

 それから約一時間以上が経った。
 やはり女の人って買い物が長いんだなぁとしみじみ思っていたところにコツコツと足音を立てて何者かが近づいて来た。

 誰だろうかと確認するべく、俯けていた顔を見上げた次の瞬間――俺は思わず息を呑んでしまった。

 そこにいたのは燃え盛る様な紅い髪と瞳と同じ色のドレスを身に纏ったリリムだった。
 ドレスと言っても貴族が着るような派手で豪華な物では無く、動きやすいどちらかというとワンピースに近い様なドレスだ。

 普段から一緒に過ごしていた事で気付かなかったが、こうして改めて見るとかなりの美女ではないだろうか。
 きめ細やかな肌にスラっとした細長い手足と露出したなだらかな肩が妙に色っぽく感じる。
 そしてドレス越しでも分かる、出る所は出て引っ込む所は引っ込むという理想的な引き締まった身体。
 露出度で言えば前の格好の方が高かったにも関わらず、紅いドレスが彼女を大人の魅力へと引き立てている。
 それはまるで完成された芸術品のようで、見る人の心の奥底まで魅了してしまいそうな美しさを醸し出していた。成る程、行き交う人達がリリムへと視線を向けてしまうのも頷ける。

「主あるじ……?」
「え?…あ、ああ。よく…似合ってるよ、本当に……」
「そ、そうか?……えへへへ」

 リリムが声を掛けていなかったら俺はその美しさに魅入ったままだったのかもしれない。
 しかしあれだな――今の格好で外へ出たら更に注目を浴びるのでは無いだろうか?―――なんか嫌だな。

「……じゃあそろそろ出るか」
「うむ!」

 それから支払いを済ませた後、日が暮れるまで王都の街並みを楽しんだ。
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