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第5話 一人占めしたい
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1か月後。私は、派遣の仕事と清掃の仕事を辞めて、林人さんの会社に入社した。
「今日からスタッフの一員になりました、川畑結野です。宜しくお願いします。」
皆さんに挨拶をすると、拍手で迎えられた。
「川畑さん。一緒に働く深谷留美子です。遠慮しないで留美子って言ってね。」
「宜しくお願いします、留美子さん。」
留美子さんは、茶髪のセミロングで、スカートが似合う女子だ。
「早速なんだけど……」
留美子さんが、分厚いカタログを持って来た時だ。
「川畑さん。ちょっと来て下さい。」
黒いスーツを着た、黒髪ロングの人に手招きされた。
「うわっ!亀山さんだ。川畑さん、何かしたの?」
「いいえ。まだのはず。って、亀山さんって誰ですか?」
「社長秘書よ。クールビューティーって感じ。」
「クールビューティー……」
それだけで、怖いイメージが彼女に付いてしまった。
「川畑さん、早く。」
「は、はい。」
今日はまだ出社して、挨拶しただけだと言うのに、何かしでかしてしまったんだろうか。
もしかして、この服装が悪かった?
初日くらい、スーツを着て来いとか?
もしそうだったら、事前に言って欲しかったな。
亀山さんの側に行くと、社長室に連れて行かれた。
ふと見ると、社長である林人さんはいない。
「社長は、本日外の用事で出かけていらっしゃいます。」
振り返って亀山さんを見ると、無表情で立っている。
もしかして、笑わない人?
「立ち話も何なので、ソファにお座り下さい。」
「はい。」
私がソファに座ると、その隣に亀山さんが座った。
「私は、社長の秘書をしております、亀山詩歌と申します。」
「宜しくお願いします。」
「お話というのは、あなたのプライベートの事よ。」
「プ、プライベートですか?」
入社していきなりの話が、プライベート?
一体何?
「突然ですが、社長と別れて頂けますか?」
「はい?」
プライベートって、林人さんとの事?
「私は、社長のお父様とも親しくさせていただいています。勿論、結婚相手の事も知っています。だからこそ、言うのです。」
いや、そんな事言われたって、それは私と林人さんの話なんだし。
「申し訳ないのですが、私の一存では決められませんので、林人さんとお話合いさせて頂きます。」
「大丈夫ですよ。あなたが別れると言えば、それで済む事ですから。」
ちょっと、何を言っているの?この人。
「私は、別れるつもりはありません。林人さんも、同じ考えだと思います。」
すると亀山さんは、うんうんと頷いている。
「何も、私はあなたの事を考えて、教えてあげているのよ?」
「分かっています。」
「いいえ。分かってないわ。」
無表情でこちらをじっと見る亀山さん。
はっきり言って、怖い。
「失礼だけど、あなたのご両親は、どんなお仕事をされていたの?」
「普通の会社員でした。」
「申し訳ないけど、その時点で社長とは釣り合わない訳。お分かり?」
私は、ごくんと息を飲んだ。
「林人さんが、井出グループの御曹司だって言う事は知っています。けれど、林人さんは私の生い立ちを知った上で、私を選んでくれたんです。」
「もしかしてあなた、社長と結婚できると思っているの?」
私はその一言に、カチンときた。
どうして、そこまで言われなきゃいけないの?
「まあ、今日はここまでにしましょう。仕事に戻っていいわよ。」
「失礼します。」
立ち上がって、社長室を出たけれど、きっと額にシワが寄っていると思う。
「大丈夫だった?川畑さん。」
「ははは、大丈夫、です。」
作り笑いをして、留美子さんの元に戻った。
こうなったら、仕事では一目置かれるように、頑張ってやる!
この会社に入って、一日目の仕事は、新商品がきちんとネットで検索できるかどうかだった。
「今はネット社会でしょう?いくらカタログが分厚くて見やすくても、ネットで検索して注文できなきゃ、意味ないのよ。」
留美子さんは、分厚いカタログから一個一個、商品を確認していく。
「ウチはまだ、ネット環境を他社に依存しているの。だから発注通りになっているか、確認しているのよ。」
「へえ。それを私達で確認していくんですね。」
「そう。」
「分かりました。」
私は留美子さんに教えて貰いながら、一緒に仕事を始めた。
留美子さんは前のページから確認しているから、私は後ろのページから確認していった。
「驚いたでしょ。ウチ、事務用品扱っている会社なのに、ソファとかも売ってるなんて。」
「え、ええ。驚きました。」
実は林人さんから、教えて貰っているなんて、口が裂けても言えない。
「社長のこだわりなんですって。オフィスにある物は、何でも発注できるようにって。」
「……そうなんですね。」
なんだか、林人さんらしい。
「ねえ。結野さんって、彼氏いるの?」
急に留美子さんが、距離を縮めてきた。
「一応、います。」
「そうなんだ。ああ、私も早く、彼氏欲しい。」
その時だった。
林人さんが会社に戻って来た。
「お帰りなさい。」
社員達から、声がかかる。
「ああ、いつ見ても社長って、素敵よね。」
留美子さんが、手を合わせながらハートマークの目になっている。
「留美子さん、社長のファンなんですか?」
「あら、この会社で社長のファンじゃない女子なんて、いないわよ。」
そんなに林人さん、大人気なんだ。
「彼女、いるのかしら。どんな人なんだろう。」
まさか、こんな人ですなんて、言えなかった。
「今日からスタッフの一員になりました、川畑結野です。宜しくお願いします。」
皆さんに挨拶をすると、拍手で迎えられた。
「川畑さん。一緒に働く深谷留美子です。遠慮しないで留美子って言ってね。」
「宜しくお願いします、留美子さん。」
留美子さんは、茶髪のセミロングで、スカートが似合う女子だ。
「早速なんだけど……」
留美子さんが、分厚いカタログを持って来た時だ。
「川畑さん。ちょっと来て下さい。」
黒いスーツを着た、黒髪ロングの人に手招きされた。
「うわっ!亀山さんだ。川畑さん、何かしたの?」
「いいえ。まだのはず。って、亀山さんって誰ですか?」
「社長秘書よ。クールビューティーって感じ。」
「クールビューティー……」
それだけで、怖いイメージが彼女に付いてしまった。
「川畑さん、早く。」
「は、はい。」
今日はまだ出社して、挨拶しただけだと言うのに、何かしでかしてしまったんだろうか。
もしかして、この服装が悪かった?
初日くらい、スーツを着て来いとか?
もしそうだったら、事前に言って欲しかったな。
亀山さんの側に行くと、社長室に連れて行かれた。
ふと見ると、社長である林人さんはいない。
「社長は、本日外の用事で出かけていらっしゃいます。」
振り返って亀山さんを見ると、無表情で立っている。
もしかして、笑わない人?
「立ち話も何なので、ソファにお座り下さい。」
「はい。」
私がソファに座ると、その隣に亀山さんが座った。
「私は、社長の秘書をしております、亀山詩歌と申します。」
「宜しくお願いします。」
「お話というのは、あなたのプライベートの事よ。」
「プ、プライベートですか?」
入社していきなりの話が、プライベート?
一体何?
「突然ですが、社長と別れて頂けますか?」
「はい?」
プライベートって、林人さんとの事?
「私は、社長のお父様とも親しくさせていただいています。勿論、結婚相手の事も知っています。だからこそ、言うのです。」
いや、そんな事言われたって、それは私と林人さんの話なんだし。
「申し訳ないのですが、私の一存では決められませんので、林人さんとお話合いさせて頂きます。」
「大丈夫ですよ。あなたが別れると言えば、それで済む事ですから。」
ちょっと、何を言っているの?この人。
「私は、別れるつもりはありません。林人さんも、同じ考えだと思います。」
すると亀山さんは、うんうんと頷いている。
「何も、私はあなたの事を考えて、教えてあげているのよ?」
「分かっています。」
「いいえ。分かってないわ。」
無表情でこちらをじっと見る亀山さん。
はっきり言って、怖い。
「失礼だけど、あなたのご両親は、どんなお仕事をされていたの?」
「普通の会社員でした。」
「申し訳ないけど、その時点で社長とは釣り合わない訳。お分かり?」
私は、ごくんと息を飲んだ。
「林人さんが、井出グループの御曹司だって言う事は知っています。けれど、林人さんは私の生い立ちを知った上で、私を選んでくれたんです。」
「もしかしてあなた、社長と結婚できると思っているの?」
私はその一言に、カチンときた。
どうして、そこまで言われなきゃいけないの?
「まあ、今日はここまでにしましょう。仕事に戻っていいわよ。」
「失礼します。」
立ち上がって、社長室を出たけれど、きっと額にシワが寄っていると思う。
「大丈夫だった?川畑さん。」
「ははは、大丈夫、です。」
作り笑いをして、留美子さんの元に戻った。
こうなったら、仕事では一目置かれるように、頑張ってやる!
この会社に入って、一日目の仕事は、新商品がきちんとネットで検索できるかどうかだった。
「今はネット社会でしょう?いくらカタログが分厚くて見やすくても、ネットで検索して注文できなきゃ、意味ないのよ。」
留美子さんは、分厚いカタログから一個一個、商品を確認していく。
「ウチはまだ、ネット環境を他社に依存しているの。だから発注通りになっているか、確認しているのよ。」
「へえ。それを私達で確認していくんですね。」
「そう。」
「分かりました。」
私は留美子さんに教えて貰いながら、一緒に仕事を始めた。
留美子さんは前のページから確認しているから、私は後ろのページから確認していった。
「驚いたでしょ。ウチ、事務用品扱っている会社なのに、ソファとかも売ってるなんて。」
「え、ええ。驚きました。」
実は林人さんから、教えて貰っているなんて、口が裂けても言えない。
「社長のこだわりなんですって。オフィスにある物は、何でも発注できるようにって。」
「……そうなんですね。」
なんだか、林人さんらしい。
「ねえ。結野さんって、彼氏いるの?」
急に留美子さんが、距離を縮めてきた。
「一応、います。」
「そうなんだ。ああ、私も早く、彼氏欲しい。」
その時だった。
林人さんが会社に戻って来た。
「お帰りなさい。」
社員達から、声がかかる。
「ああ、いつ見ても社長って、素敵よね。」
留美子さんが、手を合わせながらハートマークの目になっている。
「留美子さん、社長のファンなんですか?」
「あら、この会社で社長のファンじゃない女子なんて、いないわよ。」
そんなに林人さん、大人気なんだ。
「彼女、いるのかしら。どんな人なんだろう。」
まさか、こんな人ですなんて、言えなかった。
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