砂漠での甘い恋~女医は王子様に溺愛される~

日下奈緒

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一人の医師として

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そして2年の歳月が過ぎ、私はモルテザー王国に帰って来た。

あの時と同じように、飛行機とバスを乗り継いで、モルテザー王国に着いた。

そしてあの時と違う事は、アムジャドが迎えに来てくれた事だ。


「お帰り、チナ。」

「ただいま、アムジャド。」

私は日本から持ってきた機材を置いて、アムジャドに抱き着いた。

「ああ、アムジャドの匂いがする。」

「チナが気に入ったと言うから、香を変えなかった。」

アムジャドの匂いに包まれ、私は幸せだった。

「また、こんなところでイチャイチャしてる。」

そう、それに津田先生も、私と一緒について来た。

「早く土井先生の元へ行こう。先生も待ってるだろう。」

「はい。」

私は津田先生と一緒に、またバスに乗り込もうとした。

「チナ。」

アムジャドが手を握ってくれる。

「心配しないで、アムジャド。夕方には戻るわ。」

「分かった。」

そして私は土井先生のいるサハルに向かった。

「皆さんが来るようになってから、首都ジアーからサハルへバスが増えたんです。そのおかげで、買い物も楽になりました。」

「よかった。」

交通の便がよくなったのは、いい事だ。

何かあったら、ジアーのお医者様と連携できる。

そして私は、アムジャドのいる宮殿と土井先生がいるサハルを往復できる。

サハルへの道のりは、新たな道を切り開く、希望の道でもあった。


現地に着いたのは、お昼過ぎ。

ここでも土井先生と通訳のアリさんが、迎えてくれた。

「久しぶりだな、二人共。」

「お久しぶりです。」

津田先生と私は、土井先生と握手をした。

「津田先生はいづれ戻ってくるだろうと思っていたが、千奈も戻ってくるとはな。」

「はい。医師免許取って戻ってきました。」

「また大きくなったな、千奈。」

土井先生にそう言われると嬉しい。

「早速、患者の治療にあたろう。」

「はい。」

診療所に行くと、建物が新しく変わっていた。

「綺麗。あっ!ベッド数も増えている。」

「アムジャド皇太子が、整備してくれたのだよ。」

アムジャドの優しい気持ちが伝わってくる。

「荷物はそこに置いて。今日も患者は多い。」

「はい。」

津田先生と私は、手分けして患者の診療に当たった。


「喉見せて、あーん。うん。風邪だね。」

そしてカルテを見た。

この男の子、何度も風邪で来ている。

「まだ、治らないんですか?」

通訳のアリさんを通じて、お母さんに聞いてみた。

お母さんは、首を横に振った。

「他の病気かもしれませんね。レントゲンを撮りましょう。」

そう言ってハッとした。

ここには、レントゲンもないのだ。

「どうした?」

土井先生が話しかけてきた。

「この男の子、2週間も風邪が治らないんです。」

「レントゲンを撮りたいのか?」

「できれば。」

「首都ジアーに連れて行け。あそこの病院では、レントゲンを撮れる。」

「はい。」

急いでバスの運転手に時間を聞くと、バスが出るのは夕方だそうだ。

前は昼間に1回しかバスが出なかったのに、今は朝、昼、夕方と3便あるからこれでもマシだと言われた。

「仕方ない。ベッドで休ませるしかない。」

土井先生は、男の子にベッドで寝るように伝えた。

「他に方法はないんですか?」

「ない。その子は抗生物質も投与した。それでも治らないと言う事は、千奈の言う通り他の病気があるかもしれない。だがここにはレントゲンがない。直ぐに病状を特定する事はできない。」

「待つしかないんですか?」

「ああ、そうだ。」

私が茫然と男の子を見ていると、土井先生が体に当たって来た。

「なんだ、邪魔だ。」

「すみません。」

「一人の患者に構っている暇はないぞ。患者は次から次へと来るのだからな。」

私はゴクンと息を飲んだ。

「次の患者さん。どうぞ。」

見た目何でもないおばあさんだった。

「どうされました?」

通訳のアリさんが聞くと、頭が痛いと言っていた。

「最初に血圧測りますね。」

最初に来た時は、血圧を測ってばかりだった。
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