幼馴染み皇子の強引すぎる婚約破棄と溺愛

日下奈緒

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第8章 愛の宣言

翌日、私はユリウスに手を引かれて王宮へと連れて行かれた。

「どうしたの? ユリウス⁉」

胸がざわめき、不安が募る。

「もう我慢できない。父に直談判する。」

「えっ……!」

私の心臓は跳ね上がった。

運が悪いことに、国王は執務室にいた。

「父上。」

重厚な扉を押し開けると、ユリウスの真剣な声が響く。

「なんだ、急に。」

机から顔を上げた国王の視線が、私に注がれた。

居たたまれず、私はうつむいてしまう。

「お話があります。」

ユリウスはためらうことなく私を抱き寄せた。

「セシリアとの結婚を、今すぐに認めてください。」

「なに……?」

国王の声が低く響き、空気が凍りつく。

「彼女を妃にしたい。誰にも渡さない。俺のすべてを賭けても構いません。」

ユリウスの瞳は決意に満ちていた。

私はただ、彼の腕の中で震えるしかなかった。

──まさか、こんな形で国王に訴えるなんて。

国王はしばし沈黙し、冷静な眼差しで息子を見つめた。

「……ユリウス。おまえは本気で言っているのか。」

「はい。命を賭けても構いません。」

迷いなく答えるユリウス。その声は揺るぎなかった。

国王の視線が、今度は私に向けられる。

「セシリア嬢。これはおまえの望みでもあるのか。」

「わ、私は……」

声が震え、言葉が出ない。

私の答えひとつで、この国の未来さえ変わってしまうのだ。

「愛は尊い。しかし、婚姻は個人の想いだけで決めるものではない。」

国王の声は静かだが、厳しさを含んでいた。

ユリウスは一歩も退かず、私の肩を抱きしめる。

「父上。俺にとって、セシリア以上の相手はいません。」

重苦しい空気が執務室を満たしていく。

──ここから先は、ただの恋では済まされないのだ。

「父上……彼女のお腹の中に、俺の子がいるかもしれないんです。」

ユリウスの言葉に、私は息を呑んだ。

「えっ……⁉」

国王は目を見開き、信じられないというように私と息子を交互に見た。

「それは……確かなことなのか。」

「月のモノが遅れているのです。」

ユリウスの告白に、国王の顔色が変わる。

「……結婚の許しも得ていないのに、夜を共にしたのか!」

低い怒声が執務室に響いた。

「俺は……彼女を愛しているから抱いたんです!」

ユリウスは一歩も退かず、私を庇うように抱き寄せた。

「黙れ!」

国王の体が震え、その手が振り上げられる。

乾いた音が響き、ユリウスの頬が赤く腫れた。

「父上……!」

私は思わず声を上げたが、ユリウスは痛みに顔を歪めながらも真っ直ぐに父を見据えていた。

「俺は後悔していません。彼女を愛し、守り抜く覚悟です。」

国王の瞳には、怒りと苦悩が入り混じっていた。

──愛と責任、その両方が試される時が来たのだ。
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