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第8章 愛の宣言
③
すると父は、国王の前に深々と頭を垂れた。
「二人の仲を許したのは私です。……いつかはこのような事態が訪れるだろうと、覚悟しておりました。」
その言葉に、国王の表情が揺らいだ。
そして、あろうことか王は自らも頭を下げたのだ。
「息子が馬鹿な真似をして……すまない。」
「頭をお上げください、国王。」
慌てて父が止める。
「いいや。」
国王の声は低く、しかし震えていた。
「息子がしでかしたことは、父である私の失態だ。」
静まり返る執務室。
威厳ある王が、ひとりの父親として悔恨を示す姿に、私達は息を呑んだ。
その光景を、ユリウスはじっと見つめていた。
父の背中がこれほど小さく見えたことはない。
──自分の愛が、どれほど大きな責任を伴うものなのか。
ユリウスの胸に、新たな決意が芽生えていくのを私は感じていた。
「ユリウス、おまえも謝れ!」
国王の厳しい声に促され、ユリウスは父の前に立たされた。
「アルヴェール公爵閣下。今回の件は、すべて私が責任を負います。」
深く頭を下げるその姿に、私は胸を締めつけられる。
父はしばらく黙していたが、やがてため息をついた。
「おやおや……娘は責任で結婚させられるのか。」
その言葉に、ユリウスは顔を上げた。
「いえ、違います。」
真っ直ぐに父を見据え、力強く告げる。
「セシリアは、俺に望まれて結婚するんです。責任ではなく、愛するからこそ──」
一瞬の沈黙の後、父は静かに微笑んだ。
「ならば、よろしいかと。」
その柔らかな言葉に、ユリウスの瞳が潤んだ。
「公爵閣下……ありがとうございます。」
頬を伝う涙は、彼の真摯な想いの証。
私はその姿を見て、胸が熱くなり、改めて確信した。
──この人となら、どんな未来も歩んでいける。
両親に見送られ、私は王宮へと足を踏み入れた。
重厚な扉が開かれ、長い回廊を進む。赤い絨毯に、金で縁取られた壁。
──どこを見ても、豪奢で荘厳で、まるで別世界だった。
案内されたのは、ひとつの一室。
天井には煌めくシャンデリア、窓辺には繊細な刺繍を施したカーテン。
大きな天蓋付きの寝台が中央に据えられ、机や椅子までもが見事な工芸品だった。
「こちらが本日からお使いになるお部屋でございます。」
侍女が深く頭を下げる。
「……ありがとうございます。」
そう答えながらも、胸はざわめいていた。
あまりに豪華すぎて、息が詰まりそうだったのだ。
「ここが……私の居場所なのだろうか。」
両親の元を離れ、皇子の妃候補として王宮に迎え入れられた。
けれど足元はまだ覚束なく、心の奥には不安しかなかった。
ユリウスの隣に立つためには、この華やかな世界に馴染まなければならない。
──私は果たして、本当にやっていけるのだろうか。
「二人の仲を許したのは私です。……いつかはこのような事態が訪れるだろうと、覚悟しておりました。」
その言葉に、国王の表情が揺らいだ。
そして、あろうことか王は自らも頭を下げたのだ。
「息子が馬鹿な真似をして……すまない。」
「頭をお上げください、国王。」
慌てて父が止める。
「いいや。」
国王の声は低く、しかし震えていた。
「息子がしでかしたことは、父である私の失態だ。」
静まり返る執務室。
威厳ある王が、ひとりの父親として悔恨を示す姿に、私達は息を呑んだ。
その光景を、ユリウスはじっと見つめていた。
父の背中がこれほど小さく見えたことはない。
──自分の愛が、どれほど大きな責任を伴うものなのか。
ユリウスの胸に、新たな決意が芽生えていくのを私は感じていた。
「ユリウス、おまえも謝れ!」
国王の厳しい声に促され、ユリウスは父の前に立たされた。
「アルヴェール公爵閣下。今回の件は、すべて私が責任を負います。」
深く頭を下げるその姿に、私は胸を締めつけられる。
父はしばらく黙していたが、やがてため息をついた。
「おやおや……娘は責任で結婚させられるのか。」
その言葉に、ユリウスは顔を上げた。
「いえ、違います。」
真っ直ぐに父を見据え、力強く告げる。
「セシリアは、俺に望まれて結婚するんです。責任ではなく、愛するからこそ──」
一瞬の沈黙の後、父は静かに微笑んだ。
「ならば、よろしいかと。」
その柔らかな言葉に、ユリウスの瞳が潤んだ。
「公爵閣下……ありがとうございます。」
頬を伝う涙は、彼の真摯な想いの証。
私はその姿を見て、胸が熱くなり、改めて確信した。
──この人となら、どんな未来も歩んでいける。
両親に見送られ、私は王宮へと足を踏み入れた。
重厚な扉が開かれ、長い回廊を進む。赤い絨毯に、金で縁取られた壁。
──どこを見ても、豪奢で荘厳で、まるで別世界だった。
案内されたのは、ひとつの一室。
天井には煌めくシャンデリア、窓辺には繊細な刺繍を施したカーテン。
大きな天蓋付きの寝台が中央に据えられ、机や椅子までもが見事な工芸品だった。
「こちらが本日からお使いになるお部屋でございます。」
侍女が深く頭を下げる。
「……ありがとうございます。」
そう答えながらも、胸はざわめいていた。
あまりに豪華すぎて、息が詰まりそうだったのだ。
「ここが……私の居場所なのだろうか。」
両親の元を離れ、皇子の妃候補として王宮に迎え入れられた。
けれど足元はまだ覚束なく、心の奥には不安しかなかった。
ユリウスの隣に立つためには、この華やかな世界に馴染まなければならない。
──私は果たして、本当にやっていけるのだろうか。
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