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第4章 仮面夫婦説
④
仕事を終えて家に帰ると、私は何気なく律さんをじっと見つめた。
「え?何?俺、そんなにカッコいい?」
おどけたように笑う律さんに、思わず手に持っていた食器を落としそうになる。
「はいはい、カッコいいですよ。」
肩をすくめて返すと、律さんはキッチンまでやってきて、私の背中にぴたりと寄り添った。あたたかな腕が、腰にまわる。
「……今日、欲しいの?」
小さく囁かれたその一言に、心臓が跳ねた。
「律さんって……私のこと、そういうふうに“欲しい”って思う時あるの?」
自分でもびっくりするような言葉が口をついて出た。律さんの動きがぴたりと止まる。
「え、え? なんで急に?」
「だって、同僚に言われたの。新婚のうちは、夜のルーティンがあるべきだって……」
ぼそっとそう言うと、律さんが後ろで吹き出したのがわかった。
「なんだそれ。じゃあ今日から“ルーティン”始める?」
「……冗談じゃない!」
振り返って睨んだつもりだったのに、律さんの笑顔を見てるうちに、こっちまでつられて笑ってしまった。
「確かに、俺たち……回数は少ないかもな。」
夕食の準備をしていたキッチンで、律さんがぽつりと漏らした。
次の瞬間、冷蔵庫の前に追い詰められ、壁に手をつかれる――まさかの壁ドン。
「千尋がいいのなら、俺、頑張るけど?」
真剣な眼差しに、私は首を横に振る。
「そうじゃないの。律さんが、したいかどうかです。」
その言葉に、律さんの頬がみるみる赤く染まっていくのがわかった。
「……俺主導でいいの?」
私は小さく、でもしっかりとうなずく。
「千尋ーっ!」
律さんは子どもみたいに私に抱きついた。
「俺がしたいって思った時に、全部受け入れてくれるの? 本当に?」
「……その時によりますけど。」
律さんの肩が一瞬だけしゅんと落ちる。
「やっぱり、千尋主導じゃん……」
拗ねたようにキッチンを離れようとする律さん。その背中を、私はすぐに抱きしめた。
「でもね、律さんが欲しがってくれるの、すごく嬉しいよ。」
ぎゅっと抱き返されたその腕の温もりが、私の胸をじんわりとあたためてくれた。
休日の昼下がり。
柔らかな陽射しがリビングに差し込むなか、律さんはソファで気持ちよさそうにうたた寝していた。
その静寂を破ったのは、ピコンというスマホの通知音。
ぼんやりとその音に反応した律さんは、手元のスマホを一度見て、それを裏返した。
──なに、今の。
ほんの小さな違和感だった。でも、その行動が気になって仕方なかった。
寝息を立てている律さんを横目に、私はそっとスマホを手に取る。
《元気?結婚したんだって?会ってお祝いしたい。》
送り主の名前は──涼花。
知らない名前。でも、その文面から察するに、律さんの知り合い、しかもかなり親しげな女性のようだった。
「え?何?俺、そんなにカッコいい?」
おどけたように笑う律さんに、思わず手に持っていた食器を落としそうになる。
「はいはい、カッコいいですよ。」
肩をすくめて返すと、律さんはキッチンまでやってきて、私の背中にぴたりと寄り添った。あたたかな腕が、腰にまわる。
「……今日、欲しいの?」
小さく囁かれたその一言に、心臓が跳ねた。
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自分でもびっくりするような言葉が口をついて出た。律さんの動きがぴたりと止まる。
「え、え? なんで急に?」
「だって、同僚に言われたの。新婚のうちは、夜のルーティンがあるべきだって……」
ぼそっとそう言うと、律さんが後ろで吹き出したのがわかった。
「なんだそれ。じゃあ今日から“ルーティン”始める?」
「……冗談じゃない!」
振り返って睨んだつもりだったのに、律さんの笑顔を見てるうちに、こっちまでつられて笑ってしまった。
「確かに、俺たち……回数は少ないかもな。」
夕食の準備をしていたキッチンで、律さんがぽつりと漏らした。
次の瞬間、冷蔵庫の前に追い詰められ、壁に手をつかれる――まさかの壁ドン。
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真剣な眼差しに、私は首を横に振る。
「そうじゃないの。律さんが、したいかどうかです。」
その言葉に、律さんの頬がみるみる赤く染まっていくのがわかった。
「……俺主導でいいの?」
私は小さく、でもしっかりとうなずく。
「千尋ーっ!」
律さんは子どもみたいに私に抱きついた。
「俺がしたいって思った時に、全部受け入れてくれるの? 本当に?」
「……その時によりますけど。」
律さんの肩が一瞬だけしゅんと落ちる。
「やっぱり、千尋主導じゃん……」
拗ねたようにキッチンを離れようとする律さん。その背中を、私はすぐに抱きしめた。
「でもね、律さんが欲しがってくれるの、すごく嬉しいよ。」
ぎゅっと抱き返されたその腕の温もりが、私の胸をじんわりとあたためてくれた。
休日の昼下がり。
柔らかな陽射しがリビングに差し込むなか、律さんはソファで気持ちよさそうにうたた寝していた。
その静寂を破ったのは、ピコンというスマホの通知音。
ぼんやりとその音に反応した律さんは、手元のスマホを一度見て、それを裏返した。
──なに、今の。
ほんの小さな違和感だった。でも、その行動が気になって仕方なかった。
寝息を立てている律さんを横目に、私はそっとスマホを手に取る。
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