「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています 【完結】

日下奈緒

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第七章 困惑の聖女選定 ③

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まるで、「あなたのすべてが知りたい」とでも言うように。

神に選ばれた聖女の、気高く美しい微笑み。

(あんな人と、ずっと一緒に……?)

「では、また後で。」

ティアナは優雅に一礼し、軽やかに去っていった。

「……また会うの?」

気づけば、私はそう尋ねていた。

「──ああ。浄化の打ち合わせだ。」

何でもないことのように言うカイル。

でも私の中では、小さな不安が波のように広がっていく。

気がつけば、私はカイルの袖口を掴んでいた。

「……セレナ?」

はっとして、慌てて手を離した。

「ごめんなさい。私、嫉妬なんて……するつもりなかったのに。」

心のうちを隠せなくて、情けなくなる。

けれどその瞬間。

カイルは私の頬をそっと両手で包み、唇を重ねてくれた。

──優しくて、温かくて、私の不安を包むようなキス。

「そんなセレナも、可愛いよ。」

そう囁いて、私をぎゅっと抱きしめてくれる。

「俺には、セレナだけだ。」

その言葉が、心に深く刻まれた。

胸の奥の不安が、少しだけ、やわらいでいく。

私はその日の夜、自室の窓辺に佇んでいた。

夜風がカーテンを揺らし、月の光が静かに部屋を照らしている。

──けれど、私の心は落ち着かない。

(もしかして、カイルの婚約者だと浮かれているのは……私だけなのでは?)

ティアナのあの気高く美しい姿。神に選ばれた者としての光。

それに引き寄せられるのは当然だ。

むしろ、カイルが彼女に惹かれない理由などあるのだろうか。

(彼が、本当に私だけを選び続けてくれるの?)

そんな不安が、波のように胸に押し寄せてくる。

人の心は、雲のように──つかもうとしても、指の隙間からこぼれてしまう。

たとえどれほど優しい言葉をかけられても、あの腕に抱きしめられても。

未来を、永遠を、誓ってもらえたわけではない。

もし、彼がティアナと過ごすうちに……「彼女が欲しい」と願ったら──

私は、その気持ちを止めることができない。

「……っ」

胸の奥が締めつけられるように痛む。

どうして、こんなにも苦しいのだろう。

ただの復讐のための婚約。そう思っていたはずなのに。

なのに今は──

(まるで……まるで私は、カイルに……心を奪われてしまったみたい。)

知らずに、彼に恋をしていた。

一緒に過ごす時間の中で。優しい言葉に、ぬくもりに。

気づけば、彼のことばかり考えている。

涙が一粒、頬を伝った。

それでも私は、誰にも言えない。ただ、自分の胸にそっとしまい込むしかないのだ。

月だけが、静かに私を見下ろしていた。

それから一時経った頃だった。

「カイル殿下がお見えです」

侍女の声に、私は胸を跳ねさせた。こんな時間に?──ドアが静かに開き、夜風のように静かに、彼が現れる。

「ごめん。こんな夜遅くに。」
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