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第九章 セレナの信じる想い ④
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「おまえたちには、もっと早く話すべきだったな。でも、ようやく正式に伝えられる時が来たと思って。」
「驚かせてしまって、申し訳ありません……でも私……殿下を一人の男性としてお慕いしているんです。」
ティアナの言葉はまっすぐで、曇りがなかった。
その姿に、心の中で少しだけ胸を撫で下ろした。
──ああ、この人は。
カイルではなく、最初からクラウディオ殿下を見ていたのだ。
「……そうだったんですね。」
私がそう言うと、ティアナは深く頭を下げた。
「今後も、聖女としての役目は変わりません。ですが、これからは殿下の隣に立てるよう、私も努力してまいります。」
クラウディオは静かにティアナの手を包み込むように握る。
「国王に、結婚の意思を伝える。ティアナを妃に迎えたいと。」
驚きと、わずかな感動が広間に満ちていった。
そして、カイルは同時に、ふっと笑みをこぼす。
「兄上、祝福します。」
「はい、どうかお幸せに──」
それは、ずっと心に引っかかっていた“疑念”や“すれ違い”が、ようやく晴れる瞬間だった。
そしてこの日を境に、四人の関係は、新たな信頼で結ばれていく。
王宮中央に位置する「戴冠の間」は、今朝から厳粛な空気に包まれていた。
重厚な絨毯の先には王位に座す国王。
その前に膝をついたのは、第2皇子──カイル・ヴェルナーグ。
「第2皇子、カイル・ヴェルナーグ。」
国王の声が響く。玉座の間に集まった貴族、神殿関係者、軍、そして民衆の代表たちが静まりかえる。
「そなたに、皇太子の座を任せる。次代の王として、国を導く覚悟はあるか?」
カイルは、胸に聖剣の柄をあて、深く頭を垂れる。
「はっ!」
そして次の瞬間、堂々と顔を上げ、剣を高く掲げて宣言した。
「全身全霊をかけ、この国の為に、国務を全う致します!」
その姿は、まさに「王に選ばれし者」としての風格を湛えていた。
剣の銀の輝きに照らされたその瞳に、迷いはなかった。
人々の間にどよめきが走る。
──これが、次の王だ。
そして、その隣にはもう一人の男が立つ。
摂政に任命されたクラウディオ殿下。
「父上、皇帝陛下。」
彼は跪くと、隣の女性の手を取りながら頭を下げる。
「この場をお借りして、申し上げたいことがございます」
そして、立ち上がり堂々と宣言した。
「聖女・ティアナ・エルフェリアを、私の妃として迎えとうございます。どうか──お許しください。」
ざわめきが走る。
その中には、神殿の高官もいた。
「お待ちを! まだ浄化は続いております! 聖女が妃となれば、その身は王族のものに──」
だが、ティアナは一歩前に出て、澄んだ声で告げた。
「私は、聖女の任を放棄するつもりはございません。」
その瞳は凛として、聖女としての誇りと覚悟に満ちていた。
「妃となろうとも、この命ある限り、聖なる務めを全ういたします。それが私に与えられた神の意志です。」
静まりかえる玉座の間。
国王はしばらくの間、彼女の姿を見つめ──
やがて、深く頷いた。
「……うむ。神の器にして、王家の誇り。認めよう。ティアナ・エルフェリア、王族の一員として迎え入れる。」
「謹んで──感謝申し上げます。」
ティアナが静かに頭を垂れ、クラウディオは彼女の手を強く握る。
そしてその日──
カイル・ヴェルナーグは正式に皇太子となり、クラウディオ・ヴェルナーグは摂政として国政を支え、聖女ティアナは、王家の一員として浄化の旅を続けることが認められた。
この国に、新たな時代の幕が開けたのだった。
カイルは私に囁いた。
「次はセレナが、皇太子妃になる番だね。」
私はカイルに微笑み返した。
「驚かせてしまって、申し訳ありません……でも私……殿下を一人の男性としてお慕いしているんです。」
ティアナの言葉はまっすぐで、曇りがなかった。
その姿に、心の中で少しだけ胸を撫で下ろした。
──ああ、この人は。
カイルではなく、最初からクラウディオ殿下を見ていたのだ。
「……そうだったんですね。」
私がそう言うと、ティアナは深く頭を下げた。
「今後も、聖女としての役目は変わりません。ですが、これからは殿下の隣に立てるよう、私も努力してまいります。」
クラウディオは静かにティアナの手を包み込むように握る。
「国王に、結婚の意思を伝える。ティアナを妃に迎えたいと。」
驚きと、わずかな感動が広間に満ちていった。
そして、カイルは同時に、ふっと笑みをこぼす。
「兄上、祝福します。」
「はい、どうかお幸せに──」
それは、ずっと心に引っかかっていた“疑念”や“すれ違い”が、ようやく晴れる瞬間だった。
そしてこの日を境に、四人の関係は、新たな信頼で結ばれていく。
王宮中央に位置する「戴冠の間」は、今朝から厳粛な空気に包まれていた。
重厚な絨毯の先には王位に座す国王。
その前に膝をついたのは、第2皇子──カイル・ヴェルナーグ。
「第2皇子、カイル・ヴェルナーグ。」
国王の声が響く。玉座の間に集まった貴族、神殿関係者、軍、そして民衆の代表たちが静まりかえる。
「そなたに、皇太子の座を任せる。次代の王として、国を導く覚悟はあるか?」
カイルは、胸に聖剣の柄をあて、深く頭を垂れる。
「はっ!」
そして次の瞬間、堂々と顔を上げ、剣を高く掲げて宣言した。
「全身全霊をかけ、この国の為に、国務を全う致します!」
その姿は、まさに「王に選ばれし者」としての風格を湛えていた。
剣の銀の輝きに照らされたその瞳に、迷いはなかった。
人々の間にどよめきが走る。
──これが、次の王だ。
そして、その隣にはもう一人の男が立つ。
摂政に任命されたクラウディオ殿下。
「父上、皇帝陛下。」
彼は跪くと、隣の女性の手を取りながら頭を下げる。
「この場をお借りして、申し上げたいことがございます」
そして、立ち上がり堂々と宣言した。
「聖女・ティアナ・エルフェリアを、私の妃として迎えとうございます。どうか──お許しください。」
ざわめきが走る。
その中には、神殿の高官もいた。
「お待ちを! まだ浄化は続いております! 聖女が妃となれば、その身は王族のものに──」
だが、ティアナは一歩前に出て、澄んだ声で告げた。
「私は、聖女の任を放棄するつもりはございません。」
その瞳は凛として、聖女としての誇りと覚悟に満ちていた。
「妃となろうとも、この命ある限り、聖なる務めを全ういたします。それが私に与えられた神の意志です。」
静まりかえる玉座の間。
国王はしばらくの間、彼女の姿を見つめ──
やがて、深く頷いた。
「……うむ。神の器にして、王家の誇り。認めよう。ティアナ・エルフェリア、王族の一員として迎え入れる。」
「謹んで──感謝申し上げます。」
ティアナが静かに頭を垂れ、クラウディオは彼女の手を強く握る。
そしてその日──
カイル・ヴェルナーグは正式に皇太子となり、クラウディオ・ヴェルナーグは摂政として国政を支え、聖女ティアナは、王家の一員として浄化の旅を続けることが認められた。
この国に、新たな時代の幕が開けたのだった。
カイルは私に囁いた。
「次はセレナが、皇太子妃になる番だね。」
私はカイルに微笑み返した。
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