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第2章 追放の噂 ③
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それは、言わずもがなの事実だった。
けれど、陛下の口から聞かされると、心がきしんだ。
「それには、理由がある。」
「……!」
足が止まりそうになった。
理由。
私が二年間、ただの“飾り”として扱われてきた理由。
それを、いま、知ることができるのだろうか。
私は息をのんで、皇帝の横顔を見つめた。
その瞳はどこか、遠い過去を見ているようだった。
「――そなたは、朕の母君に似すぎているのだ。」
「……えっ?」
あまりに意外な言葉に、私は思わず立ち止まった。
「母君……に?」
皇帝は遠くを見つめるように、小さく頷いた。
「顔立ちも、雰囲気も……それに、名前も似ていた。」
私は自然と視線を落とした。
あの、優しかった母の面影を、私がなぞっているというのか。
「後宮でも、何人かに言われた。母君にそっくりな妃がいると――だが、あまりに似すぎていてな……」
言葉の終わりが、少しだけ震えていた。
私は、陛下が言わんとしていることを理解した。
それがどれだけ、口にしがたいことかも。
「……汚したくないのですね。」
私が小さくそう言うと、皇帝は目を伏せた。
「……」
私を抱けば、きっと母君を犯すような錯覚に陥る。
それは罪悪に近く、抗えぬ嫌悪感さえ生んでしまうのだろう。
その気持ちは、理解できる。
けれど、心のどこかが、じんわりと痛んだ。
私は誰かの面影でしかなく、
“妃”でありながら、“女”として見られることすらなかったのだと。
けれど。
その理由を、自らの口で私に伝えようとした皇帝のまなざしには、確かに、偽りのない誠実さがあった。
「……では私は、実家に帰される日をただ待つしかないのですね。」
そう言った私の声は、少しだけ震えていた。
皇帝陛下が足を止める。
「はあ? 実家に……帰す?」
その表情には、明らかに困惑が浮かんでいた。
「三年が経っても、ご寵愛を受けられぬ妃は、実家に戻されると……そう、聞きました。」
皇帝は眉をひそめた。
「……なに? そんな規定が……?」
どうやら、本当に知らなかったらしい。
「それでは、せっかく迎えた意味がないではないか。」
そう言う陛下の言葉に、胸がざわついた。
「――ならば、翠蘭。」
その声に、私はゆっくりと顔を上げた。
「今夜、一夜限りでも、朕の寝所に来ないか。」
「……え。」
目が見開かれるのが自分でも分かった。
今夜――?
しかも、一晩だけ――⁉
胸の奥が、強く波打つ。
「朕も、今夜はそなただけを見るように、努めよう。」
そう言って、陛下は私の肩にそっと手を置いた。
そして、それ以上何も言わずに背を向けた。
金の刺繍があしらわれた裾が、風に揺れる。
そのまま静かに去っていく、皇帝の背中を――
私はただ、動けずに見送ることしかできなかった。
「……あ……」
ぽたり、と。
熱いものが、頬を伝った。
けれど、陛下の口から聞かされると、心がきしんだ。
「それには、理由がある。」
「……!」
足が止まりそうになった。
理由。
私が二年間、ただの“飾り”として扱われてきた理由。
それを、いま、知ることができるのだろうか。
私は息をのんで、皇帝の横顔を見つめた。
その瞳はどこか、遠い過去を見ているようだった。
「――そなたは、朕の母君に似すぎているのだ。」
「……えっ?」
あまりに意外な言葉に、私は思わず立ち止まった。
「母君……に?」
皇帝は遠くを見つめるように、小さく頷いた。
「顔立ちも、雰囲気も……それに、名前も似ていた。」
私は自然と視線を落とした。
あの、優しかった母の面影を、私がなぞっているというのか。
「後宮でも、何人かに言われた。母君にそっくりな妃がいると――だが、あまりに似すぎていてな……」
言葉の終わりが、少しだけ震えていた。
私は、陛下が言わんとしていることを理解した。
それがどれだけ、口にしがたいことかも。
「……汚したくないのですね。」
私が小さくそう言うと、皇帝は目を伏せた。
「……」
私を抱けば、きっと母君を犯すような錯覚に陥る。
それは罪悪に近く、抗えぬ嫌悪感さえ生んでしまうのだろう。
その気持ちは、理解できる。
けれど、心のどこかが、じんわりと痛んだ。
私は誰かの面影でしかなく、
“妃”でありながら、“女”として見られることすらなかったのだと。
けれど。
その理由を、自らの口で私に伝えようとした皇帝のまなざしには、確かに、偽りのない誠実さがあった。
「……では私は、実家に帰される日をただ待つしかないのですね。」
そう言った私の声は、少しだけ震えていた。
皇帝陛下が足を止める。
「はあ? 実家に……帰す?」
その表情には、明らかに困惑が浮かんでいた。
「三年が経っても、ご寵愛を受けられぬ妃は、実家に戻されると……そう、聞きました。」
皇帝は眉をひそめた。
「……なに? そんな規定が……?」
どうやら、本当に知らなかったらしい。
「それでは、せっかく迎えた意味がないではないか。」
そう言う陛下の言葉に、胸がざわついた。
「――ならば、翠蘭。」
その声に、私はゆっくりと顔を上げた。
「今夜、一夜限りでも、朕の寝所に来ないか。」
「……え。」
目が見開かれるのが自分でも分かった。
今夜――?
しかも、一晩だけ――⁉
胸の奥が、強く波打つ。
「朕も、今夜はそなただけを見るように、努めよう。」
そう言って、陛下は私の肩にそっと手を置いた。
そして、それ以上何も言わずに背を向けた。
金の刺繍があしらわれた裾が、風に揺れる。
そのまま静かに去っていく、皇帝の背中を――
私はただ、動けずに見送ることしかできなかった。
「……あ……」
ぽたり、と。
熱いものが、頬を伝った。
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