お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました 【完結】

日下奈緒

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第5章 皇帝の嫉妬 ③

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尚も私が喘ぎ声を我慢していると、皇帝陛下が耳元で囁いた。

「あの男が、どうなってもいいのか?」

ああ、私はなんてことをしてしまったのだろう。

景文の元に行かなければ、彼を苦しめる事もなかったのに。

でも、行かなければ。私は愛を知らなかった。


「あぁ……」

私は、景文の為にわざと甘い声を出した。

「おおっ、翠蘭……」

陛下が私の体を奪う。

「ああんっ!」

「ううっ……なんと、気持ちいい体だ。」

陛下が激しく、私の体に腰を打ち付ける。

「ああっ……ああっ!」

「許せ、翠蘭。今までそなたを放って置いた事を。」

そして、陛下が最後の一振りを終えると、私の体の中に熱いモノが注がれた。

「陛下っ!」

はぁはぁと息遣いが荒い、陛下がまた欲情しているのが、分かった。

「今夜は、翠蘭のおかげで長い夜になりそうだ。」

そしてまた、その欲情を私の体に打ち付けた。

「ああ……陛下……もう、お許しを……」

「許さぬ……許さぬぞ、翠蘭。そなたは朝まで、朕のモノだ。」

それから何度、陛下が私の中に子種を注いだのか分からない。

朝は、抱き疲れてぐったりしてしまった。

「翠蘭、今夜も夜伽を申し付けるぞ。」

そう言って私の肩を叩いた。

今夜も、陛下の夜伽を務めなければならない。

私は陽の沈まぬうちから、湧き上がる涙を止められずにいた。

心が壊れてしまいそうだった。

景文に抱かれたぬくもりが、まだこの体に残っているのに。

そして夜。

身を清めようと浴場へ向かう途中、廊下の向こうからガタンと音がした。

「誰?」

思わず声を上げる。だが、その影を見た瞬間、息が止まった。

「翠蘭……俺だ。」

低く、懐かしい声。

「景文!」

私は走った。迷わず彼の元へ。

窓を開け放ち、その腕に飛び込んだ。

「生きていたのね……っ」

「当たり前だ。お前がこの宮にいるのに、死んでいられるか。」

その言葉に、涙がまたあふれた。

景文の腕が、迷いなく私を包む。

誰の目もない夜の風の中、ようやく私は、自分を取り戻せた気がした。

「改めて、俺の元に来い。」

景文は、真っ直ぐな瞳で私に手を差し出した。

その手が、あの日と同じ温もりを宿しているのがわかる。

でも……私は、もう景文の女ではない。

「……昨夜、皇帝陛下のご寵愛を賜りました。」

一瞬で、景文の瞳が揺れた。

そして、その奥にある痛みを、私は見てしまった。

「何度も……何度も、求められました。もう……あなたとは――」

そう言いかけたとき、景文の腕が、私を強く抱きしめた。

そのまま、口づけが落ちてくる。切なく、激しく、哀しみに満ちた口づけ。

「……そなたは、どっちを選ぶ?」

囁くような声に、胸が締めつけられた。

「涙を流しながら皇帝に抱かれるのか。それとも……この手を取るのか。」

私は震えながら唇を噛んだ。

愛しているのは誰?

私の心は――どちらにある?

「俺と皇帝、どっちを……愛しているんだ、翠蘭。」

景文の声が、痛いほどまっすぐに胸に響いた。

私は、震える手で景文の頬に触れた。

そして、自分からそっと唇を重ねる。

「私を救ってくれたのは、あなたです。景文。」
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