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第9章 初めての春 ①
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翌日、婚礼は盛大に執り行われた。
宮中の庭には色とりどりの花が咲き誇り、貴族や高官たちが華やかな衣装に身を包み、私たちの婚礼を見守っていた。
龍鳳が舞い上がる金屏風の前、景文は第四皇子としての正装を身に纏い、凛と立っていた。
「……あれが、新たに皇子と認められた景文様か。」
「もとは文部大臣でありながら、皇族の血を引くとはな。」
「やはりただ者ではなかったか。若くして出世したのも、納得だな。」
そんなひそひそ話が、祝宴の隙間から耳に届く。
「ふんっ。」景文は小さく鼻を鳴らした。
「文部大臣をやってた頃は、俺の長い髪を見て“公務にふさわしくない”って陰口叩いてた連中が、今さら手のひら返しとはな。」
私は思わず吹き出してしまった。
「もう。そういうの、声に出さないの。」
「出さずにはいられん。今日は俺の晴れ舞台だからな。」
景文がふっと私の方に微笑みかける。その横顔は少し照れているようにも見えた。
「でもね、景文。これからの方が大変よ。皇子になったあなたを巡って、あちこちから取り入ろうとする人が出てくるはず。」
「ふむ、それは困ったな。」
「誰かが優しく近づいてきても、すぐ信じちゃダメよ?」
「大丈夫だよ。」景文は私の手をそっと取ると、親指で優しく撫でた。「俺が信じるのは、翠蘭だけだから。」
胸がじんわりと熱くなる。たとえ周囲がどれだけざわつこうと、この人のそばにいられたら、それでいい。
そして――
私たちは、名実ともに夫婦となった。
これから歩む未来が、どれほど波乱に満ちていようとも。
この手を、決して離さない。
そして私は、正式に妃となり、堂々と後宮の屋敷の中を歩けるようになった。
これまで遠慮がちに通っていた廊下も、侍女たちの視線を気にせずに歩ける。
「庭も歩けるのね……」
そう呟きながら、桃の花が咲き誇る庭園の小径をたどっていく。
まるで桃源郷のようなその場所に、微かな子供の笑い声が混じった。
「……?」
目をやると、庭の端に、三人ほどの小さな子供たちが楽しそうに駆け回っている。
「あなた達、どこから入ったの?」
私はしゃがみこんで優しく尋ねると、子供たちは声を揃えて「あっち!」と庭の奥を指差した。
指先の先には、低い垣根の下に、小さな木の扉があった。
近づいてみると、それは手作りの、まるで子供専用の出入り口のようだった。
「こんなところに……」
少し戸を開いてみると、外の裏通りにつながっている。
どうやら、誰かが内緒で作ったものらしい。
「お兄ちゃんが作ってくれたの!」
一人の女の子が得意そうに言った。
「お兄ちゃん?」
「うん。すっごく器用なんだよ。なんでも作れるの!」
私は思わず微笑んだ。
「そう……いいお兄ちゃんね。」
その時、ふと、ある顔が脳裏に浮かぶ。あの、口は悪いけど、優しくて、気づかいのできる人。
もしかして、子供たちが言う“お兄ちゃん”とは――。
宮中の庭には色とりどりの花が咲き誇り、貴族や高官たちが華やかな衣装に身を包み、私たちの婚礼を見守っていた。
龍鳳が舞い上がる金屏風の前、景文は第四皇子としての正装を身に纏い、凛と立っていた。
「……あれが、新たに皇子と認められた景文様か。」
「もとは文部大臣でありながら、皇族の血を引くとはな。」
「やはりただ者ではなかったか。若くして出世したのも、納得だな。」
そんなひそひそ話が、祝宴の隙間から耳に届く。
「ふんっ。」景文は小さく鼻を鳴らした。
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私は思わず吹き出してしまった。
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景文がふっと私の方に微笑みかける。その横顔は少し照れているようにも見えた。
「でもね、景文。これからの方が大変よ。皇子になったあなたを巡って、あちこちから取り入ろうとする人が出てくるはず。」
「ふむ、それは困ったな。」
「誰かが優しく近づいてきても、すぐ信じちゃダメよ?」
「大丈夫だよ。」景文は私の手をそっと取ると、親指で優しく撫でた。「俺が信じるのは、翠蘭だけだから。」
胸がじんわりと熱くなる。たとえ周囲がどれだけざわつこうと、この人のそばにいられたら、それでいい。
そして――
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これから歩む未来が、どれほど波乱に満ちていようとも。
この手を、決して離さない。
そして私は、正式に妃となり、堂々と後宮の屋敷の中を歩けるようになった。
これまで遠慮がちに通っていた廊下も、侍女たちの視線を気にせずに歩ける。
「庭も歩けるのね……」
そう呟きながら、桃の花が咲き誇る庭園の小径をたどっていく。
まるで桃源郷のようなその場所に、微かな子供の笑い声が混じった。
「……?」
目をやると、庭の端に、三人ほどの小さな子供たちが楽しそうに駆け回っている。
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私はしゃがみこんで優しく尋ねると、子供たちは声を揃えて「あっち!」と庭の奥を指差した。
指先の先には、低い垣根の下に、小さな木の扉があった。
近づいてみると、それは手作りの、まるで子供専用の出入り口のようだった。
「こんなところに……」
少し戸を開いてみると、外の裏通りにつながっている。
どうやら、誰かが内緒で作ったものらしい。
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「お兄ちゃん?」
「うん。すっごく器用なんだよ。なんでも作れるの!」
私は思わず微笑んだ。
「そう……いいお兄ちゃんね。」
その時、ふと、ある顔が脳裏に浮かぶ。あの、口は悪いけど、優しくて、気づかいのできる人。
もしかして、子供たちが言う“お兄ちゃん”とは――。
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