誰にでも優しいくせに、私だけに本気なんてズルい– 遊び人エリートのくせに、溺愛が止まらない –【完結】

日下奈緒

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第8部 嫉妬と再来する影

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その夜。

「彼女の要求に応えるのが男でしょ。」

そう言って、隼人さんはTシャツを頭から引き抜いた。

浮かび上がる引き締まった胸元に、私は思わず息を飲む。

「……本気で、するの?」

「紗英がそう言ったんだろ?拒否する理由ある?」

優しい声。だけどその奥にある熱を、私は確かに感じていた。

目を逸らすと、隼人さんが私の頬にそっと手を添えた。

「ねえ、こっち向いて。無理に脱がせたりしないよ。……でも、紗英の肌、触れたら絶対愛しくなる。だから、覚悟して?」

その一言に、心臓が跳ねた。

私は震える指で服のボタンに手をかけ、そっと脱いでいく。

恥ずかしい。けれど、隼人さんの瞳があまりにも真剣で、怖くない。

「綺麗だよ……ずっと我慢してたんだ。君に触れたくて、でも大事にしたくて……」

そっとキスされた鎖骨から、熱がじわじわと身体の奥に落ちていく。

ベッドのシーツの感触より、彼の手の温度の方がずっと確かだった。

「もっと……触れて。隼人さん……」

小さく呟いた私に、隼人さんは驚いたような、でも嬉しそうな顔をした。

「もう、我慢しない。たっぷり愛してあげる。」

ゆっくりと身体を重ねてくる彼。

ひとつひとつの動きが丁寧で、まるで私の全てを知ろうとするみたいだった。

「紗英、気持ちいい?」

「……うん。すごく……」

「嬉しい。もっと感じて……君を感じたい、もっと……深く……」

熱く、濃密に満たされる。

指先から背中、脚の先まで、彼の愛に包まれている。

欲しかったのは、こういう愛し方だった。

ただ抱かれるだけじゃない、心まで重なる夜。

「紗英……俺、本気で君が欲しい。これからも、ずっと……」

「私も……隼人さんが欲しい。何度も、何度でも……」

絡み合う視線、離れない肌、囁かれる言葉。

その夜、私は何度も、愛された。

月曜日の午後。

机の上にある請求書をめくりながら、ふと頬がゆるむ。

「ふふ……」

何でもない数字の羅列に、思い出が重なるなんて、おかしい。

——隼人さんと過ごした週末。

久しぶりだったせいか、いつも以上に求められた。

ベッドの上で、何度も何度も。

まるで、溜め込んでいた想いを全部ぶつけるみたいに。

「……コンドーム、全部使い切っちゃった……」

囁かれた「また買ってくる」の言葉と、あのしゅんとした表情が可愛くて、ひとりでまた笑いそうになる。

「篠原さん?」

ビクッと肩が跳ねた。給湯室で、お湯を注いでいた美羽さんがこちらを見ていた。

「えっ、な、なんですか?」

「いやぁ~、なんかニヤけてましたよ?いいことでもあったのかと思って。」

「そ、そんなこと……」

「ふぅん?」

美羽さんは湯呑みを揺らしながら、にやりと笑う。
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