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Ⅲ
⑨
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国王は中央にある、大きな絨毯に、腰を降ろした。
それを見た俺は、ハーキムに手を伸ばした。
「よい、ハーキム。」
「はい。」
俺の掛け声で、ハーキムが立ち上がると、国王は俺に、手招きをした。
「ここに座ってごらん、ジャラール。ハーキムも。」
国王に言われ、その側にハーキムと共に座った。
「素晴らしいだろう?私の、先々代の王が、星を見る為に、宮殿の天井の部分を、改築したのだ。」
「星を見る為に、ですか?」
「ああ。なんだ、ジャラールは星を見る為に、ここに来たのでは、ないのか?」
「えっ!あ、ああ……そう、ですね。」
まさか月とは言えず、まだ夕方で見えるはずもない星を、探す振りをした。
「そのうち、満天の星空が見える。私がジャラールくらいの時は、覚えたての星を、探すのが何よりも楽しくてな。」
「へえー。」
その時の国王の顔が、子供に戻った表情をしていた。
「星を見ていると、何もかも、忘れる事ができる。辛い事も、悲しい事も……」
その時、先生の言葉が、ふと頭を過った。
国王は生まれた時から
逃げる事はできなかった
今も
あなた様がお生まれになった時も
逃げられる事ができない運命を、少しでも忘れようと、していたのかもしれない。
そんな事を考えると、国王が辛い顔で、この空を見上げている姿が、思い浮かんだ。
「父上……」
「どうした?ジャラール。」
「……私が生まれた時も、ここに来たのですか?」
すると国王は、私の頭をそっと、撫でてくれた。
「ジャラール。ここに横になりなさい。」
そう言われ、俺は絨毯の上に、寝そべった。
「何が見える?」
「はい。西の空に沈む太陽。南には薄い月が見えます。そして東の空には、星々……」
「ああ、そうだ。この世の全てが、ここから見える。」
すると国王は、私の隣に仰向けになった。
「ジャラール。確かに私は、そなたが生まれた日、ここへ来た。」
俺はまた、天井を見上げた。
「だが、悲しかったのではない。そなたに相応しい名を、授かりに来たのだ。」
驚いた俺は、ガバッと起き上がった。
「いづれ、私の全てを受け継ぐこの子に、ここから見える全ての世界を手に入れる、偉大な男になってほしいと……」
「父上……」
「ジャラール。そなたは、この満天の星のように回る運命さえも、自分の力で回せるようになれ。」
そう言うと国王は、ゆっくりと起き上がり、そのまま星の間を、出て行ってしまった。
「ジャラール様。」
「ああ……」
自分の名前に、そのような意味があったなんて、今初めて知った。
「ハーキム。ここへ連れて来てくれて、有り難く思うぞ。」
「いいえ。私こそ……ジャラール様のお名前の、由来をお聞きする事ができて、嬉しく思います。」
俺とハーキムは笑い合うと、その後二人で、満天の星空を見て帰った。
それを見た俺は、ハーキムに手を伸ばした。
「よい、ハーキム。」
「はい。」
俺の掛け声で、ハーキムが立ち上がると、国王は俺に、手招きをした。
「ここに座ってごらん、ジャラール。ハーキムも。」
国王に言われ、その側にハーキムと共に座った。
「素晴らしいだろう?私の、先々代の王が、星を見る為に、宮殿の天井の部分を、改築したのだ。」
「星を見る為に、ですか?」
「ああ。なんだ、ジャラールは星を見る為に、ここに来たのでは、ないのか?」
「えっ!あ、ああ……そう、ですね。」
まさか月とは言えず、まだ夕方で見えるはずもない星を、探す振りをした。
「そのうち、満天の星空が見える。私がジャラールくらいの時は、覚えたての星を、探すのが何よりも楽しくてな。」
「へえー。」
その時の国王の顔が、子供に戻った表情をしていた。
「星を見ていると、何もかも、忘れる事ができる。辛い事も、悲しい事も……」
その時、先生の言葉が、ふと頭を過った。
国王は生まれた時から
逃げる事はできなかった
今も
あなた様がお生まれになった時も
逃げられる事ができない運命を、少しでも忘れようと、していたのかもしれない。
そんな事を考えると、国王が辛い顔で、この空を見上げている姿が、思い浮かんだ。
「父上……」
「どうした?ジャラール。」
「……私が生まれた時も、ここに来たのですか?」
すると国王は、私の頭をそっと、撫でてくれた。
「ジャラール。ここに横になりなさい。」
そう言われ、俺は絨毯の上に、寝そべった。
「何が見える?」
「はい。西の空に沈む太陽。南には薄い月が見えます。そして東の空には、星々……」
「ああ、そうだ。この世の全てが、ここから見える。」
すると国王は、私の隣に仰向けになった。
「ジャラール。確かに私は、そなたが生まれた日、ここへ来た。」
俺はまた、天井を見上げた。
「だが、悲しかったのではない。そなたに相応しい名を、授かりに来たのだ。」
驚いた俺は、ガバッと起き上がった。
「いづれ、私の全てを受け継ぐこの子に、ここから見える全ての世界を手に入れる、偉大な男になってほしいと……」
「父上……」
「ジャラール。そなたは、この満天の星のように回る運命さえも、自分の力で回せるようになれ。」
そう言うと国王は、ゆっくりと起き上がり、そのまま星の間を、出て行ってしまった。
「ジャラール様。」
「ああ……」
自分の名前に、そのような意味があったなんて、今初めて知った。
「ハーキム。ここへ連れて来てくれて、有り難く思うぞ。」
「いいえ。私こそ……ジャラール様のお名前の、由来をお聞きする事ができて、嬉しく思います。」
俺とハーキムは笑い合うと、その後二人で、満天の星空を見て帰った。
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