欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~

日下奈緒

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5、終電を逃した夜、ベッドの隅で

終電を逃した夜

今日は久しぶりに、幼馴染み同士で集まっての飲み会だった。

駅前の居酒屋の一角には、懐かしい顔ぶれが揃い、その中に——高峰 蓮の姿もあった。

子供の頃、密かに想いを寄せていた彼。

少しだけ大人びたその横顔は、あの頃よりずっとかっこよくなっていて、私は思わず見とれてしまう。

「おまえ、いつものカシオレでいい?」

「……うん。」

笑いながら聞いてくるその声も、変わっていなかった。

——この関係、ずっとこうなんだろうな。

たまに会って、笑って、昔話をして。

でも、“幼馴染”のまま。そこからは一歩も進めない。

「ん?どうした?」

「ううん。……ねえ、蓮ってさ、今彼女いるの?」

ふと気になって、勢いで聞いてしまった。

「いないよ。」

あっさりとした答えに、思わず驚く。

「……うそっ! だって、蓮って……」

——かっこいいのに。

その言葉は、ギリギリで飲み込んだ。

飲み会がお開きになった頃、ふと時計を見て私は顔をしかめた。

——しまった。終電、逃してる。

「タクシー……?」

スマホで検索しながら、財布の中身を確認する。

──ない。こんな時に限って。

「どうした? 美桜。」

気づけば、蓮が隣に立っていた。

「あ、ううん。……いや、ちょっと。終電、逃しちゃって。」

気まずそうに笑った私に、蓮は眉を寄せた。

「タクシー拾う?」

「……持ち合わせなくて。」

言った瞬間、また“ドジだな”って笑われるかと思った。

でも——

「仕方ないさ。」

あっさり返ってきたその言葉に、胸がきゅっとなった。

「俺の家、近いから。寄っていく?」

優しい声。あの頃と同じ、いや、それ以上に優しかった。

一瞬迷ったけれど、他に選択肢もない。

「……うん」

気づけば私は、小さく頷いていた。

蓮の家は、駅から本当にすぐだった。

「入って入って。」

気さくな声に促されて玄関をくぐると、シンプルで片付いた部屋が広がっていた。

無駄な装飾はなく、隅に置かれた大きなベッドだけが、妙に目に入る。

「これ、Tシャツ。着替えに。」

差し出されたのは、彼が普段着ているであろうゆるめの白いTシャツ。

——蓮の匂いがした。柔軟剤と、少しだけ大人の香水のような。

「適当に寝てていいよ。」

そう言ってベッドの方を指差す蓮。私は慌てて首を横に振った。

「えっ、蓮は? ソファで寝るの?」

「うん。まあ、そうなるよね」

笑ってはいたけれど、私はなんとなく心苦しくなる。

「……でもさ。」

蓮がふいにベッドへ近づいてきた。

「女の子をソファで寝せるなんて、俺にはできないよ。」

そう言って、優しい手つきで私をベッドに導いて、そっと横たえた。

——鼓動が、速くなる。

さっきまで飲み会で笑っていた幼馴染が、今、こんなに近くにいる。

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