欲望のシーツに沈む夜~50のベッドの記憶~

日下奈緒

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5、終電を逃した夜、ベッドの隅で

夜が明けて

翌朝、私はまだうつらうつらとまどろんでいた。

まぶたの奥がほんのりと温かくて、頬には誰かの体温。

目を開けると、すぐ隣に蓮の顔があった。

「おはよう、美桜。」

優しく微笑む彼の声が、胸にじんと響く。――そうだ、昨夜、私はこの人に抱かれたんだ。

その事実が一気に目を覚まさせる。

だけど恥ずかしくて、蓮の顔が見られない。

「……おはよう。」

か細く返すと、蓮はふわりと微笑んで、私の頬にキスを落とした。

くすぐったくて、心がくすぐられて、私はふわっと笑ってしまう。

「今日さ、どこか遊びに行こうか。」

「うん!」

思わず即答してしまった。蓮とデート。

そんな言葉が頭に浮かぶなんて、昨日までは考えられなかった。

ベッドから起き上がろうとして、自分の姿に気づく。

――あっ、裸……。

慌ててシーツを引き寄せた私を見て、蓮がくすくす笑っていた。

朝の光に包まれたその笑顔は、眩しくて優しくて、あたたかくて――私の心を、さらにときめかせた。

私たちは、近くのショッピングモールに来ていた。

人の波に揺られながら、ふたりで歩くのがなんだか新鮮で、くすぐったい。

「お昼、何食べようか?」

「軽めでいいかな……」

「美桜は、うどん好きだよな?」

「え、なんでわかるの?」

驚いて顔を上げると、蓮は照れもせずに言った。

「ずっと好きだったから。おまえのこと、何でも知ってるつもり。」

その言葉に胸がキュッと締めつけられる。

変わらない幼馴染のはずなのに、もう、ただの“友達”じゃいられない。

並んで頼んだうどんの会計。財布を出そうとした私より先に、蓮が支払っていた。

「ちょ、待ってよ。割り勘で――」

「いいよ。彼女だから。」

その一言が、胸の奥にじんわりと染みこんでくる。

私は、この人の隣にいていいんだ。

ずっと、蓮の隣に――。

食事が運ばれてくるのを待ちながら、私は意を決して言葉を口にした。

「ねえ、蓮……私と、ちゃんと付き合ってくれる?」

緊張で、胸がドクドクと高鳴る。

だけど蓮は、驚くでもなく、笑みを浮かべて答えた。

「もう付き合ってるよ?」

「えっ……?」

思わず拍子抜けしてしまう。

「美桜を抱いたときから、もう美桜は俺の彼女です。」

その言葉に、嬉しさが胸いっぱいにこみ上げてくる。

こっちから言おうと決めてたのに。いつだって蓮は、私の先を行く。

「いいね、もうただの幼馴染じゃないよ。俺たち。」

そう言って笑う彼の顔に、私も自然と笑顔になる。

「……宜しくお願いします。」

そう頭を下げた私に、蓮はすぐに頷いた。

「はい、任せて。」

その返事が、こんなにも頼もしくて、温かいだなんて思わなかった。

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