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6、禁断の温泉宿、貸切の夜
出会いは旅先の温泉宿で
久しぶりに訪れた温泉宿は、山間の静かな一件宿だった。
風の音と木々のざわめきだけが聞こえる――そんな空気が、張り詰めた心をゆるりと解いていく。
「静かなところ……」
思わず、独りごとのように呟く。
玄関を入ると、若女将が笑顔で迎えてくれた。
「ようこそお越しくださいました。当宿は五部屋だけの小さな宿でして、お一人様でもゆっくりとお寛ぎいただけます。」
「ありがとうございます。静かなのが一番だったので、嬉しいです。」
案内された部屋は、木の香りがほのかに漂う和室。
窓の外には渓流が流れ、鳥の声まで聞こえてきた。
「ここなら、何も考えずに過ごせそう。」
私は大きく息を吸い込み、やっと日常から切り離されたことを実感した。
予約しておいて、よかった。
自分のためだけに選んだ、贅沢な時間の始まりだった。
お楽しみの夕食。宿の夕食処は個室ではなく、落ち着いた半個室風のカウンター席だった。
「お品書き、素敵ですね……」
そう呟きながら着席すると、隣にいたのは私より少し年下に見える男性だった。
柔らかい髪に、すっきりした顔立ち。かわいい系の、いまどきの男子だ。
ふと視線を感じて彼の方を見ると、目が合った。
「どうも。」
彼は軽く笑って、会釈した。慣れているのか、動じた様子はない。
「おひとりですか?」
「はい、一人です。」
「僕も一人なんですよ。」
少し間があって、彼が箸を置いて言った。
「仕事ですか? それとも、リフレッシュ旅行?」
「後者ですね。なんか、疲れちゃって。」
「わかります。僕も仕事に詰まって、逃げてきた感じです。」
自然と会話が続いていく。仕事のこと、趣味の映画の話、好きな食べ物……不思議と初対面とは思えないほど、言葉がポンポンと飛び交った。
「あー、楽しかった。」
露天風呂に入ると、ほっと息が漏れた。肩まで沈み、空を仰ぐと、夜風が気持ちいい。
そのとき、湯気の向こうに人影が見えた。
「あれ?」
向こうもこちらに気づいたらしく、軽く手を挙げる。
「奇遇ですね。」
声で分かった。さっきの夕食で隣だった男性だ。
「……ここ、混浴だったんですね。」
「ええ、貸し切りじゃないと男女一緒になるみたいで。」
「そうだったんだ……」私はちょっとだけ身を沈めた。
「冬馬です。」
「……あっ、紗月です。」
湯気越しの自己紹介は、少し照れくさい。
「なんか、すごい偶然ですね。」
「たしかに。」
しばしの沈黙。けれど、気まずさはなかった。
「そうだ。この後、俺の部屋で一杯飲みませんか?」
「えっ……」
「もちろん、無理にとは言いません。でも……話しやすくて、もっと話したいなって。」
一瞬迷ったけれど、私は旅に日常を持ち込まないと決めたんだ。
「はい。」
頷いた私に、冬馬はふわりと笑った。
風の音と木々のざわめきだけが聞こえる――そんな空気が、張り詰めた心をゆるりと解いていく。
「静かなところ……」
思わず、独りごとのように呟く。
玄関を入ると、若女将が笑顔で迎えてくれた。
「ようこそお越しくださいました。当宿は五部屋だけの小さな宿でして、お一人様でもゆっくりとお寛ぎいただけます。」
「ありがとうございます。静かなのが一番だったので、嬉しいです。」
案内された部屋は、木の香りがほのかに漂う和室。
窓の外には渓流が流れ、鳥の声まで聞こえてきた。
「ここなら、何も考えずに過ごせそう。」
私は大きく息を吸い込み、やっと日常から切り離されたことを実感した。
予約しておいて、よかった。
自分のためだけに選んだ、贅沢な時間の始まりだった。
お楽しみの夕食。宿の夕食処は個室ではなく、落ち着いた半個室風のカウンター席だった。
「お品書き、素敵ですね……」
そう呟きながら着席すると、隣にいたのは私より少し年下に見える男性だった。
柔らかい髪に、すっきりした顔立ち。かわいい系の、いまどきの男子だ。
ふと視線を感じて彼の方を見ると、目が合った。
「どうも。」
彼は軽く笑って、会釈した。慣れているのか、動じた様子はない。
「おひとりですか?」
「はい、一人です。」
「僕も一人なんですよ。」
少し間があって、彼が箸を置いて言った。
「仕事ですか? それとも、リフレッシュ旅行?」
「後者ですね。なんか、疲れちゃって。」
「わかります。僕も仕事に詰まって、逃げてきた感じです。」
自然と会話が続いていく。仕事のこと、趣味の映画の話、好きな食べ物……不思議と初対面とは思えないほど、言葉がポンポンと飛び交った。
「あー、楽しかった。」
露天風呂に入ると、ほっと息が漏れた。肩まで沈み、空を仰ぐと、夜風が気持ちいい。
そのとき、湯気の向こうに人影が見えた。
「あれ?」
向こうもこちらに気づいたらしく、軽く手を挙げる。
「奇遇ですね。」
声で分かった。さっきの夕食で隣だった男性だ。
「……ここ、混浴だったんですね。」
「ええ、貸し切りじゃないと男女一緒になるみたいで。」
「そうだったんだ……」私はちょっとだけ身を沈めた。
「冬馬です。」
「……あっ、紗月です。」
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「なんか、すごい偶然ですね。」
「たしかに。」
しばしの沈黙。けれど、気まずさはなかった。
「そうだ。この後、俺の部屋で一杯飲みませんか?」
「えっ……」
「もちろん、無理にとは言いません。でも……話しやすくて、もっと話したいなって。」
一瞬迷ったけれど、私は旅に日常を持ち込まないと決めたんだ。
「はい。」
頷いた私に、冬馬はふわりと笑った。
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