第3皇子は妃よりも騎士団長の妹の私を溺愛している 【完結】

日下奈緒

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第10部 新しい命と未来 ②

そこまで言うと、アシュレイは堪えきれなくなったように顔を歪め、声を詰まらせた。

涙が頬を伝い、肩を震わせる。

そんな弟の姿を、エドワルド殿下は優しく見つめていた。

言葉はいらない。すべては、互いの目に宿る絆が物語っていた。

アシュレイの涙は、ただの別れではなく、尊敬と感謝、そして誇りの証だった。

「顔を上げろ、アシュレイ。」

弱々しいながらも威厳を宿した声が病床から響く。

皇太子・エドワルド殿下が、はっきりと告げた。

「次の皇太子は、おまえだ。アシュレイ。」

「えっ⁉」

アシュレイはまるで雷に打たれたように目を見開き、立ち上がりかけた。

その動揺を抑えるように、私はそっと彼を抱きしめる。

「なぜ……?セシル兄がいるのに?」

その問いに答えたのは、第2皇子・セシル殿下だった。

「俺は戦いが嫌いなんだ。争いよりも、文化や学問を重んじる今の立場が好きだ。」

「それなら……俺が指揮官を続けます。」

アシュレイが食い下がるように言った。だが、エドワルド殿下はかすかに首を振る。

「それでは、民の心は付いてこないんだ。アシュレイ、おまえには民がいる。兵がいる。忠誠がある。」

その言葉に、アシュレイの瞳が揺れた。

選ばれる覚悟と重責が、胸に迫る。

「俺が……皇太子。次の国王。」

アシュレイの肩がわずかに震えていた。

受け止めきれない現実が、重くのしかかっているのだろう。

私は、そっと彼の手を握った。

「アシュレイ、あなたに伝えたいことがあるの。」

「……リリアーナ?」

私の瞳をじっと見つめるアシュレイに、静かに微笑んで伝えた。

「お腹に、あなたの子供がいます。」

一瞬、時間が止まったかのような静寂。

そしてすぐに、アシュレイの表情が驚きと喜びに染まった。

「本当⁉ リリアーナ!」

次の瞬間、彼は私を強く抱きしめた。

「ありがとう……ああ、リリアーナ。俺は、今、世界で一番幸せだ。」

私の肩に顔をうずめながら、アシュレイの声が震える。

その光景を、病床のエドワルド殿下も穏やかな笑みで見守り、セシル殿下も肩をすくめて笑った。

「いいなあ、末っ子は。全部持っていく。」

温かな空気が、部屋を包んでいた。

その夜、私はアシュレイと静かに抱きしめ合っていた。

月明かりが寝台の上に差し込み、淡い光が彼の横顔を照らしている。

「リリアーナ……俺、皇太子を受けようと思う。」

その低く真剣な声に、私はゆっくりと頷いた。

「アシュレイ、決めたのね。」

「……ああ。」

彼の手が、優しく私のお腹に触れる。

その仕草は、何よりも温かく、慎重で、そして深い覚悟を感じさせた。

「この子のためにも、平和な国を築きたい。セシル兄と二人で支え合って。」

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