家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第9部 公開処刑の晩餐会

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「せめてレオンが愛人を連れて来なかったら……」

そうつぶやいたルシアの目が、決意に染まった。

次の瞬間、彼女はくるりと向きを変え、真っ直ぐにレオンのいる方へと歩き出した。

「ちょっと、ルシア!」

私は咄嗟に呼び止めたが、彼女の足取りは止まらない。

何をするつもりなの? 

私はお腹を押さえながら、彼女の後を追った。

「お待ちなさい、ルシア。今行っても、あなたが恥をかくだけよ!」

それでもルシアは振り返らない。

会場の視線がすでに彼女へと集まりつつあるのに、彼女はまったく意に介していない様子だった。

「今、行かないでいつ行くの!」

その声は怒りと悲しみに満ちていて、彼女が周りの状況をまるで見ていないことが分かった。

まるで自分の心をぶつけずにはいられないかのように――。

私は不安とともに、ルシアの背中を見つめ続けた。

ずんずんと迷いなく進むルシア。

その勢いに会場の空気がざわめき始めた。

レオンがようやく彼女に気づいたのは、ほんの数歩手前だった。

「ルシア……」

レオンは慌てて立ち上がり、隣にいた女性――愛人の前に立とうとした。

だが、その一瞬の隙をルシアは逃さなかった。

彼女はまっすぐその女の元へ歩み寄り、迷いなく、その頬を平手で打った。

パチン、と乾いた音が響く。

「セレンシア!」

レオンが叫び、すぐさまその女をかばった。

だが、ルシアはその場に立ち尽くす。怒りというより、今は――混乱しているようだった。

「セレンシア……?」

その名を、彼女はもう一度繰り返した。

どこかで聞いたことがある。

「もしかして、セレンシア王女?」

ルシアの声が、会場の空気を震わせた。

振り向いたその女性は、確かに気品を漂わせていた。

繊細な顔立ちに、流れるような金髪。

民間の娘とは思えぬ立ち居振る舞い――間違いない、王族の血筋だ。

「な、な、なんでセレンシア王女が、レオンと⁉」

ルシアの顔が、恐怖と怒りと混乱でぐしゃぐしゃになっていた。

私は息を呑み、隣のエミリアやリリアンと顔を見合わせる。

「えっ⁉ 王女⁉」

「確か、セレンシア王女って……ルシアが婚約していたアルバート王子の妹さん?」

「うん……だから知ってるのね。ルシア……」

ルシアは目を見開き、セレンシアとレオンを交互に見つめていた。

その視線には、怒りよりも“敗北”の色が浮かんでいた。

私は思わずルシアの背に手を伸ばした。

――でも、それ以上に怖かった。
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