家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第10部 ふたりの城と、落ちぶれた家族の末路

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そしてもう一人、落とし前をつけるべき人物が、泣きながら私の屋敷を訪れた。

「もう私、ダメよ……」

現れたのは、結婚したはずの妹、ルシアだった。

「どうしたの?」と尋ねると、彼女は崩れるように椅子に座り込み、顔を手で覆った。

「あの晩餐会以来、レオンとの仲は最悪なの……」

なんでも、あの日の騒動をきっかけに、レオンはすっかり彼女に冷たくなり、口もろくにきかなくなったらしい。

「全然構ってくれないし、屋敷にも帰ってこない日があるの。私もお姉様みたいに、子供が欲しいのに……これじゃあ全くできないわ」

そう言ってルシアは、涙をぽろぽろとこぼしながらすすり泣いた。

かつての傲慢な姿はそこになく、ただ愛を乞う妹の姿があった。

だが、彼女自身が招いた結果でもあった。

「これじゃあ、愛人を作られてカザリス伯爵家を乗っ取られるわ!」

ルシアは目を見開いて、まるで誰かに追い詰められているかのように叫んだ。

「まだ愛人ができると決まったわけじゃないでしょ?」

私がなだめようとすると、彼女はすぐさま首を横に振る。

「いえ!絶対作るわよ!あいつは!」

もはや“旦那様”ではなく、“あいつ”呼ばわり。

私は胸が詰まる想いだった。結婚しても、必ずしも幸せになれるわけではないのね。

「一度、レオンときちんと話し合ったら?すれ違っているのなら……」

「何度も話し合おうとしているわよ。でも、あの人は逃げるの。私と向き合おうとしないのよ!」

そう言って、ルシアはぎゅっと唇をかみしめた。

彼女の傲慢さの裏に、必死で愛を求める弱さが垣間見えた瞬間だった。

「離婚よ、離婚!」

ルシアは涙を浮かべながら叫んだ。

「まだ結婚して一年も経ってないじゃない」

私がそう言うと、彼女は床を踏み鳴らすようにして怒りを爆発させた。

「もうたくさんなの!あんな男、私のことなんて何とも思ってないのよ!」

荒れ狂う彼女の様子に、私は心のどこかで納得していた。

この激しい気性は、やはり母譲りなのだろう。自分の思うようにいかないと我慢できない。けれど――

「妻の私を大切にしようとしないなんて!なんでこうも違うのよ、クラリス!あんたの夫は――」

その時だった。

「……その口ぶり、少し聞き捨てならないな。」

静かに、けれど確かに響く声。

振り返ると、そこにはセドリックが立っていた。

ルシアの肩がビクリと震える。まるで子供が叱られる直前のように。

「グレイバーン……侯爵。」

彼のその一言が、ルシアの怒りを一気に冷ました。
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