家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました

日下奈緒

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第10部 ふたりの城と、落ちぶれた家族の末路

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「冗談じゃないわ! 私は公爵令嬢なのよ!」

ルシアは椅子を蹴る勢いで立ち上がった。

「伯爵夫人の間違いでしょ?」

私は冷静に、でもしっかりと釘を刺した。

「くわーっ!」ルシアは悔しそうに歯を食いしばると、「もういいわ!クラリス!覚えておきなさいよ!」と叫びながら部屋を飛び出して行った。

ドアがバタンと閉まった後、私たちは一瞬の静寂に包まれ、次の瞬間――

「ぷっ……」

「ふふっ……」

「ははははっ!」

セドリックと私は顔を見合わせ、大笑いしてしまった。

「見た?あのルシアの顔。」

私は笑いすぎて涙が出そうだった。

「いやあ……逆に忘れられないよ。」

セドリックも腹を抱えて笑っている。

久しぶりにこんなに笑った気がする。

あれほど手を焼いた妹だったけれど、なんだかんだで、やっぱり彼女の存在は私たちの生活にスパイスを加えてくれるのだ。

「さて、次は何をしでかすかな。」

セドリックのその言葉に、また笑いがこみあげてきた。

しばらくして、リリアンとエミリアが遊びに来てくれた。

お茶を飲みながら他愛のない話に花が咲く。

「そう言えば、あなたの妹さん……」

リリアンが口を濁すように切り出した。

「えっ?何?」

私は思わず身を乗り出した。

なんだか面白い話の予感。

二人は顔を見合わせ、微妙な表情を浮かべる。

「……愛人になっているって話だけど。」

「愛人?」

私は目を丸くした。

まさか、ルシア自身が愛人に?と驚きを隠せない。

「誰の?」

思わず問い詰めるように聞く。

「それが……」

エミリアも言いにくそうにしている。

「お願い、教えて!」

私はもう、気になって仕方がなかった。

「……アルバート王子の。」

リリアンがそっと囁いた。

「ぷっ……ふふっ……あっはははは!」

私は思わず吹き出して、大笑いしてしまった。

あれだけ「王子は不細工だ!」と言っていた妹が、今度は“愛人”になっているなんて! 

人生とは、なんと皮肉に満ちているのだろう。

「ほんと、あの子は毎回予想を超えてくるわ……」

私は笑いすぎて涙が出そうになっていた。

月が満ち、いよいよ私は出産に臨むこととなった。

お腹の子が元気に動くたび、不安と期待が胸を交錯させる。

「大丈夫、大丈夫よ。」

セドリックのお母様が、優しく私のお腹を撫でてくれる。

「……無事、産まれますかね。」

私はつい、本音を漏らしてしまった。

痛みも怖いけれど、何よりこの小さな命が無事に生まれてきてくれるか、それだけが心配だった。

するとお母様は穏やかな笑顔で言った。

「クラリス、この世に生まれなかった命なんてある?」

私はその言葉に、ふっと肩の力が抜けるのを感じた。

「命はね、自然に生まれてくるようにできているの。あなたの体も、赤ちゃんも、ちゃんと準備してるわ。」

目に涙が浮かぶ。私は静かに、お母様の手を握った。

「ありがとうございます。……頑張ります。」

お母様の温もりが、私に力をくれる。

どこか神聖な気持ちで、私はこの奇跡の瞬間に向かって歩み始めていた。
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