不誠実なカラダ 【R18】

日下奈緒

文字の大きさ
11 / 12
第4章 愛されたい それよりも

「いいわよ。」

会社でするのも、燃え上がるわね。

そんな風に、悪魔が囁いて行った。


「どこでする?」

「おっ、乗ってきたね、お姉さん。」

典浩は舌なめずりしながら、辺りを見回した。

「トイレは?」

「見つかるわよ。」

「じゃあ、非常階段?」

私と典浩は、非常階段の方へ向かうと、誰もいなくなったところで、その扉を開けた。

「1階上がるぞ。」

「ええ?」

「ばあか。入るところを偶然見た奴が扉を開けたら、びっくりしちまうだろ。」

典浩の”ばあか”も、久しぶりに聞いた。

「下に降りるのは、駄目なの?」

「ああ。下は意外と見つかるんだよ。」

そう言って典浩は、私の手を引いて、非常階段を昇り始めた。


意外と見つかるって、前にもしてるんじゃない。

心の中でツッコミながら、手を引いてくれている典浩の優しさも、感じている。

1階上がるのは、意外と早かった。

「ここなら、誰も来ない。」

典浩に腰を抱かれ、キスをした。

舌が口の中で、ねっとりと動き回る。

その時、典浩と付き合っていた時の事を、思い出した。

典浩は、確か私が初めての女だと、言っていた。

前戯もたどたどしく、本番もそんなに上手くなかったから、本当にそうなのだろう。


だが、今目の前にいる典浩は、そんな男ではなかった。

キスの最中に、もう胸を揉んできて、しかもそれが上手い。

情けないけれど、体が火照ってきて、今直ぐ奥まで可愛がってもらいたいくらいだ。

「ねえ、典浩……」

「なんだ。もう欲しいのか。」

イヤらしい女だな、そんな目線で典浩はベルトを外し、私の太ももの間に、入ってきた。

「んん……」

繋がった途端に感じる、この快感。

何とも言いようがない。

典浩に縋り付き、ただただ快感の波に、自分の身を任せていた。


その時だった。

「誰かいるのか?」

部長の声がした。

やばい。

こんなところ、見られたくない。

私は典浩を押しのけて、下着を履いた。

「おい!」

部長が昇ってくる。

私は咄嗟に、典浩の背中に隠れた。

「すみません。」

典浩が後ろを向いて、部長に両手を挙げて見せた。

「なんだ、いたのか。」

「はい。彼女とイチャイチャしてました。」

「ははは。若い奴はいいな。」

部長は笑いながら、階段を降りて行く。

ほっとしたその時だ。


部長と、目が合った。


ドキッとする。

顔を見られた?

ドキドキが治まらない。


「大丈夫だ、行ったよ。」

典浩が私の肩を掴んだ。

「うん、有難う。」

お礼を言うその声も、細かく震えている。

「環奈?大丈夫か?」

「うん。典浩、私先行くね。」

「ああ……」

私は典浩を置いて、非常階段から出た。


あんなに情熱的なキスをしたのに、一つに繋がったのに。

思い出すのは、部長のふとこっちを見た顔だけ。

もやもやする。

私が他の男としていても、何とも思わないの?

「……っ!」

悔しくて涙が出てくる。


部長とセフレになんて、なるんじゃなかった。

ドライな関係を望んでいていたのに、こんなに部長の事、気にするなんて。

もしかして、私……


「おい、高杉。」

「えっ?」

顔を上げると、目の前に部長がいた。

「あ、あれ……」

辺りを見回すと、私はいつの間にか、非常階段からオフィスの前まで来ていたみたい。

「ボーっとしてるな。」

「すみません。気を付けます。」

何となく赤くなっている顔を、この人に見られたくなくて、私は俯きながらオフィスに戻ろうとした。

その時だ。

部長の手が、私の腕を掴んだ。

「今日、いつものホテルで待ってる。」

それだけを言うと部長は、どこかへ行ってしまった。


”いつものホテルで”

その言葉に、どんどん顔が赤くなっていく。

今日も、あの人に抱かれる。


その思いが、私の胸を逸らせた。


数時間後、仕事が終わった。

「お先に失礼します。お疲れ様でした。」

同僚に挨拶をして、ちらっと部長を見た。

「ああ、お疲れ様。」

「お疲れ様です、部長。」

この後私達は、裸で抱き合うと言うのに、素知らぬ顔をして、挨拶をするのだ。

何て、秘密の香りが漂うシチュエーションなのだろう。

そして、私は会社を出た後、真っすぐにいつものホテルに向かった。

何だか足取りも軽い。

部長と会えると言う事が、こんなにも心躍る事になるなんて。

思いもしなかった。


しばらくしてホテルに着き、その入り口のソファで待っていると、数分遅れて部長がやってきた。

「待たせた。」

「いいえ。」

何気ない会話が、ほんのり嬉しい。

今日は何号室を使うのだろう。

そう思っていると、部長は思わぬ場所を指さした。

「最初、飯にしよう。」

「夕食……ですか?」
感想 0

あなたにおすすめの小説

鬼上官と、深夜のオフィス

99
恋愛
「このままでは女としての潤いがないまま、生涯を終えてしまうのではないか。」 間もなく30歳となる私は、そんな焦燥感に駆られて婚活アプリを使ってデートの約束を取り付けた。 けれどある日の残業中、アプリを操作しているところを会社の同僚の「鬼上官」こと佐久間君に見られてしまい……? 「婚活アプリで相手を探すくらいだったら、俺を相手にすりゃいい話じゃないですか。」 鬼上官な同僚に翻弄される、深夜のオフィスでの出来事。 ※性的な事柄をモチーフとしていますが その描写は薄いです。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

ワケあり上司とヒミツの共有

咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。 でも、社内で有名な津田部長。 ハンサム&クールな出で立ちが、 女子社員のハートを鷲掴みにしている。 接点なんて、何もない。 社内の廊下で、2、3度すれ違った位。 だから、 私が津田部長のヒミツを知ったのは、 偶然。 社内の誰も気が付いていないヒミツを 私は知ってしまった。 「どどど、どうしよう……!!」 私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

藤白ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。