不誠実なカラダ 【R18】

日下奈緒

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第4章 愛されたい それよりも

「ああ。腹が減ってるだろう?」

意外な展開に、私は目をパチクリさせる。

「俺と夕食なんて、嫌か?」

「い、いえ。」

「じゃあ、行こう。」

誘われるままに、私は部長の後を着いて行き、エレベーターに乗った。


少しだけ間を開けて、並んで立った。

スーッと昇って行くエレベーターの中で、ただ二人きり。

これから夕食を二人で?

それから二人で、一泊でもしようと言うのかしら。

それじゃあまるで、恋人同士だ。


「ここだな。」

ホテルの最上階にあるレストランに着いて、私と部長は、隣同士に座った。

足を組んでいる部長が、セクシーに見える。

まずい。

昼間、中途半端に快楽を味わったせいか、蜜が溢れてきそうだ。

「どうした?」

「いいえ。」

慌てて太ももを両手で隠し、内ももに力を入れた。

すると部長が、耳元で囁いて来た。

「もう我慢できないか?昼間のあれでは、満足しなかっただろう。」

私は勢いよく、部長の方を見た。

意地悪そうな部長の顔。

そう。

部長はやはり、昼間の事を知っていて、私を誘ったのだ。

恥ずかしい。

他の男とHしているところを見られて、知らない振りをして、隣に座っていたなんて。

だが部長は、こうも告げて来た。

「大丈夫だ。後で満足するまで、可愛がってやる。」

その言葉にドキッとして、胸がバクバク言っている。

もう、たくさん。

「部長、知ってたんですか?」

「ああ。彼の後ろに隠れている君を、ちらっと見たからな。」

そこまで言って、どうして……

「なぜ、怒らないんですか?」

部長は、黙っている。

「怒る権利がないとでも、言うんですか?」

「……そうかも、しれないな。」


所詮、セフレはセフレ。

欲望を満たせるのであれば、誰と付き合おうが、誰と遊んでいようが、関係ないと言うのだろうか。

そんな関係を押し付けたのは、私の方なのに。

なのに、涙が一粒零れた。

「来なければ、よかった。」

私の口から出たのは、後悔の念だった。

「さっさとする事して、はい、さよならって、どうしていつもと同じようにしなかったんですか?」

部長は、まだ黙ったままだった。

「こんなところに連れて来られたら、期待してしまいます。」

「何を期待するんだ?」

やっと口を開いてくれたのに、その答えには困った。

言えば、バカな女だと思われる。

「言ってくれ。」

「嫌です。」

「言って欲しいんだ。」

私はそっと、部長を見つめた。

「……バカな女だと思いませんか?」

「思わないよ。」

息をゴクンと飲みこんだ。

「……まるで、恋人みたいだと思いました。」

「それで?」

「部長と……そんな風になりたいって……」

愚かな女。

部長はそんな事望んでいないのに。


その内、頼んだメニューが出てきて、この話は終わってしまった。

たぶん、これが最後の情事になるだろうと、私は予感した。


夕食を食べ終え、部長は部屋の鍵を取りに行った。

この景色を見るのも、終わりかもしれない。

そう思った時だ。

部長に、何気ない一言を掛けられた。

「今日は、泊まりでいいよね。」

一旦治まったと言うのに、また心臓が早く動きだす。

「高杉?」

「は、はい。」

鍵を受け取った部長と、エレベーターに乗る。


ー 泊まりでいいよね -


その一言の意味を、どう受取ればいいのか。

エレベーターが動いている間、ずっと部長の顔を見れなかった。

「もうすぐ着くよ。」

ふいに部長を見ると、彼と目が合って、恥ずかし買いもなく、見つめ合ってしまった。

部屋に着いたら、この人に抱かれる。

ドキドキして、心臓が口から出そうになった。

どうしてこんなに、緊張するの?

自分を落ち着かせようと、胸に手を当てた。


「あー、疲れた。」

だが部長は部屋に着いた途端、椅子に体を投げ入れた。

いつもは、ホテルに入ると、キスで責めてくるくせに。

「怒ってるんですか?」

「えっ?」

「他の男とヤッてたから、怒っているんですか?」

私は率直に、部長に尋ねた。

「だったら、素直に怒って貰った方が、すっきりします!」

じーっと見つめる私に、部長はフッと鼻で笑った。

「何が可笑しいんですか!」

「いや、年下の女性に、こうも気持ちを見透かされていたとはね。」

「えっ……」

すると部長は、私を抱き寄せた。

「君の言う通りだ。君を他の男が抱いているかと思うと、腸が煮えくり返えそうになる。」

「部長?」

「驚くんだ。自分の中に、こんなにも嫉妬に似た、熱い感情があるだなんて。」

「あっ……」

部長の舌が、首筋を這って、快感が教え寄せて来た。

「部、部長……」

アッと言う間に、部長に押し倒されて、私はその手で、裸にされた。

「もう、他の男に抱かれるな。」

熱い瞳が、私を包む。


「いいな。」

「あっ!」

部長と一つに繋がると、火傷しそうなくらいに、熱かった。

「部長……熱い……」

「そんな事言うな。自制が効かなくなる。」

そうは言っても、私達は男と女で、熱を分け合うには、激しさが必要だった。

「あっ、あっ、あっ!部長……もうダメ……!」

「いいよ、環奈。一緒にいこう……」

「部長……あっ、ああああー!」

激しさの後に、一気に奥に突かれて、私達は一緒に絶頂へと上り詰めた。


その後には、部長の腕枕が待っていた。

「絶対に、溺れない自信はあったんだ。」

「ふふふっ……」

少しだけ拗ねた部長の表情が、可愛らしく見えた。

「今は、はっきり言える。環奈、好きだ。」

「私もです、部長……」


こんな恋が欲しかった。

好きで好きで、たまらない人。

欲しくて欲しくて、たまらない人。


これからはずっと、部長の側にいますね。

ー Fin -
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