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黒幕の黒幕
①
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死にそうなくらいに息が切れ、足がガクガクすること2回目。
「おっ、やっと追い付いたか。クレハ。」
私を待っていてくれたラナーに比べて、ジャラールさんはそのまま先を行く始末。
いいさいいさ。
一刻を争う事なんでしょ?
私を置いて行けばいいさ!
「今、ハーキムに聞いたのだが、ネシャートの周りは何一つ変わった事がないらしい。」
「えっ?ハーキムさん?なんでハーキムさんが、ネシャートさんの周りを知ってるの?」
ハーキムさんが、しれっとした顔でこっちを見る。
「ここの番人をしている奴らに聞いたのだ。」
「番人?」
「宮殿に出入りしている者の話も聞いているからな。」
それを聞いて、あっと勘づく。
「もしかしてハーキムさんを牢屋に入れたのは!」
「まあ、そういう事だ。」
裏情報を取る為に、側近を牢屋に入れるなんて、正気の沙汰じゃない。
「それだけじゃないでしょう。」
ハーキムさんが、ジャラールさんに近づく。
「あのままでは、クレハが牢屋に入れられる事になる。私であれば、まず死ぬ事はないと思ったのでしょう。」
「どうだったかな。」
そう言ってジャラールさんは、私にウィンクをした。
ハハハ……
嬉しいけれど、複雑な気分。
私の代わりに牢屋に入れられるって。
だけど私がジャラールさんに微笑みかけた瞬間、ハーキムさんの鋭い視線。
はいはい。
必要以上に近づくなって、ここに来る前にイチャイチャしそうになったよ。
「だとしたら、ネシャートの側近を疑わざるを得ないな。」
「ラナー達ですか。」
私はハッとする。
「ラナーさんをどうする気?ハーキムさんの婚約者だよ?」
ジャラールさんもハーキムさんも、眉一つ動かさない。
「ハーキムさん?」
「ラナーが何かをしたと疑っているわけではない。ただネシャート様の周りに起こっている事を、淡々と調べるだけだ。」
「ああ、そうですか。」
ある意味すごいな。
自分の婚約者、取り調べにあうかもしれないのに、全く動じないなんて。
「ハーキム。明日、父上に宝石の事を話そうと思う。そうすれば間もなくお前は、ここを出られるだろう。その後すぐネシャートの元へ。」
「承知しました。」
ハーキムさんが頭を下げると、ジャラールさんはあの階段がある裏道へ急ぐ。
「クレハも早く行け!」
ハーキムさんに言われ、急いでジャラールさんの後を追う。
さすがは身軽。
ジャラールさんは、軽やかに階段を駆け上がる。
一方の私は足が上がらず、息もゼーゼー言っている。
「ジャラールさん……もう上まで行ったかな……」
右足、左足と一歩ずつ足を上げていたら、突然目の前にジャラールさんの足が。
「へっ?」
顔を上げると、涼しい顔のジャラールさんがいた。
「このくらいで動けなくなるとは。体を鍛えてはいないのか。」
「そう……です……ね。」
逆にこれだけの急な階段を、ヒョイヒョイ昇っていくなんて。
どれだけ鍛えているのですか。
「ほら。」
ジャラールさんが、手を差し伸べてくれた。
やった!
ラッキー!
ジャラールさんの手を、ガシッと掴んだ時だ。
スッと体を引き寄せられて、私の体はフワッと浮き上がった。
「えっ?」
「俺が抱き抱えて、クレハを部屋まで運ぶ。」
うわ~~!!
これは正に、お姫様抱っこ!
「いえ!いいです!自分で歩けます!」
「よい。しっかり捕まっていろ。」
そう言ってジャラールさんは、私を抱えながら、普通に階段を昇る。
「……重くないですか?」
「うん……」
「あっ!やっぱり重いんだ!ごめんなさい!降ろして!」
するとジャラールさんは、すぐ側でクスクス笑いかけるだした。
「クレハ、気にする事ない。大事な人を抱えて行くぐらい、男にとっては当然の事だ。」
ジャラールさんの"大事な人"発言に、身悶えする。
落ち着け、自分!
ここはジャラールさんの腕の中!
そんな自問自答を繰り返していると、あっという間に階段を登りきった。
「あっ、じゃあここで……」
「部屋まで送ると、言っただろ。」
ジャラールさんは、私を抱えながら、廊下を歩く。
その様子を廊下にいる警備の人が、ガン見してくる。
「ジャラールさん。この情況って、かなりまずいのでは?」
「そうか?」
「ジャラールさんはいつも、女の人を抱き抱えているの?」
「そう言えば、あまりないな。」
それだよ!
警備の人が、私をガン見している理由。
するとジャラールさんは、部屋のドアを開けて、そのまま隣の寝室へ。
ええ!?
な、何する気?
私の緊張を他所に、ジャラールさんは私を自分のベッドに降ろした。
私を上からジャラールさんが、覗きこむ。
めちゃくちゃ綺麗な顔。
少しでも笑ってくれれば、こっちも微笑み返せたのに、真剣な表情で私を見るから、引き込まれる。
次の瞬間、スーっとジャラールさんの顔が、近づいてくる。
こ、これは何?
もしかして、キキキス!?
私は、咄嗟に顔を両手で覆った。
するとおでこから、"チュッ"と音がする。
「えっ?」
ゆっくりと腕を離すと、そこにはニヤニヤしているジャラールさんがいた。
「もしかして、キスされると思ったか?」
「!!!!」
声にならない叫び声が出る。
「してもよかったが?」
「いやいやいや‼」
否定した勢いで、起き上がる。
「ジャラールさんには、ネシャートさんがいるでしょう!」
ジャラールさんは、目をパチクリさせる。
「まだそんな事言っているのか。」
「そんな事?」
「ネシャートは妹だって言ったはずだ。」
再び真剣な表情に代わる。
「ジャ、ジャラールさん?」
「やはりキスした方が、よかったかな。」
一歩、また一歩、私に近づいてくる。
「わっ、わっわっわっ!」
ジャラールが一歩近づく度に、私が一歩下がる。
「安心しろ、嘘だ。」
ジャラールさんは、私のオデコをペチッと叩く。
「へっ?」
「俺はソファで寝る。」
ソファ……
私の頭の中に、さっき二人で話をした、ソファが浮かぶ。
いや。
いくらなんでも王子様を、ソファで寝かせるわけにはいかないって!
「いえ、ジャラールさん。私がソファで寝ます。」
「クレハが!?」
滅茶苦茶驚かれて、ジャラールさんがこちらを向く。
「だってまさか、王子様がソファで寝るなんて、絶対問題になりますよ。」
人が真剣に話してるのに、ジャラールさんはクスクス笑うばかり。
「何が可笑しいんですか?」
「いや。」
するとジャラールさんは、寝室のドアを閉めて、ベッドにいる私の横に座った。
「実は、少し前までの俺だったら、クレハの事抱けなくてもいいから、ベッドで寝ていた。」
「へっ………」
な、何を言い出すんだ、この王子様。
「ハーキムに訓練だって言われ、宮殿の周りの茂みで野宿した事もあった。もちろん警備上の問題で、1回につき1日だけ。宮殿の、しかもベッド以外の場所で寝るなんて、もっての他だった。」
「そう……ですよね。」
それ、気持ちが分かると言うより、正統な意見だと思います。
「でも今回の旅でよく分かった。自分はなんて、世間知らずだったのだろうと。」
いや、それでいいんだと思います。
「それにもう一つ、分かった事がある。」
「何ですか?」
「本当に欲しいって思ったモノは、時間をかけてゆっくりと自分のモノにした方がいいと言う事だ。」
「はあ。」
どう言う事?
一番好きなモノは、一番最後に食べた方がいいって事?
「じゃ、クレハ。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
寝室のドアがと閉まる寸前、ジャラールさんは私を見ながら、クスッと笑った。
なぜ笑った?
王子様の笑みに疑問を感じながら、ふかふかのお布団に入る。
体全体が包まれ、疲れも一気に吹き飛ぶ。
ああ。
こんな優しさに包まれながら眠るのって、最高に幸せ。
って、待て!!
私は上半身をガバッと起こした。
このまま寝たら、現実の世界に戻っちゃうじゃんか!!
おっと!ジャラールさん!
私はベッドから降りて、ジャラールさんがいる部屋に向かおうとした。
ん?
それも待って。
さっきみたいに、襲われそうになったら嫌だ。
と言う事は、朝までここで待つしかないか。
ん~
できるかな。
朝まで寝ないで待ってるなんて。
そうだ!
ゲームだ!ゲーム!!
私は自分の服を触った。
「いけない。これラナーの衣装じゃん。制服、ラナーに預けっぱなしだし。」
今から取りに行く?
悩んだ挙げ句、睡魔に勝てない事を悟った私は、ラナーの部屋に制服を取りに行く事を決心した。
まずはそっとドアを開けて、ジャラールさんが眠ったのか確認する。
旅の間も比較的早く眠りについていたジャラールさん。
今回もソファに寝ているせいか、もうスースー寝息をたてている。
ヨシ!
この間に廊下へ脱出。
そーっと忍び足で、ドアを開け廊下へ出た。
ジャラールさんが起きてない事を確かめてから、ドアを閉める。
OK!
私、結構やるじゃん。
廊下に出て、ジャラールさんのテリトリーの場所を仕切っている大きな扉も少しだけ開ける。
そこには警備の人が立っているのが見えた。
このままじゃ、私は捕まる。
私は再びラナーの服を手でバンバン叩くと、ポケットからボタンが出てきた。
これ使えるかな。
私はもう少しだけドアを開けると、ボタンを窓に向かって投げた。
コツッと音がして、見事命中。
「おっ、やっと追い付いたか。クレハ。」
私を待っていてくれたラナーに比べて、ジャラールさんはそのまま先を行く始末。
いいさいいさ。
一刻を争う事なんでしょ?
私を置いて行けばいいさ!
「今、ハーキムに聞いたのだが、ネシャートの周りは何一つ変わった事がないらしい。」
「えっ?ハーキムさん?なんでハーキムさんが、ネシャートさんの周りを知ってるの?」
ハーキムさんが、しれっとした顔でこっちを見る。
「ここの番人をしている奴らに聞いたのだ。」
「番人?」
「宮殿に出入りしている者の話も聞いているからな。」
それを聞いて、あっと勘づく。
「もしかしてハーキムさんを牢屋に入れたのは!」
「まあ、そういう事だ。」
裏情報を取る為に、側近を牢屋に入れるなんて、正気の沙汰じゃない。
「それだけじゃないでしょう。」
ハーキムさんが、ジャラールさんに近づく。
「あのままでは、クレハが牢屋に入れられる事になる。私であれば、まず死ぬ事はないと思ったのでしょう。」
「どうだったかな。」
そう言ってジャラールさんは、私にウィンクをした。
ハハハ……
嬉しいけれど、複雑な気分。
私の代わりに牢屋に入れられるって。
だけど私がジャラールさんに微笑みかけた瞬間、ハーキムさんの鋭い視線。
はいはい。
必要以上に近づくなって、ここに来る前にイチャイチャしそうになったよ。
「だとしたら、ネシャートの側近を疑わざるを得ないな。」
「ラナー達ですか。」
私はハッとする。
「ラナーさんをどうする気?ハーキムさんの婚約者だよ?」
ジャラールさんもハーキムさんも、眉一つ動かさない。
「ハーキムさん?」
「ラナーが何かをしたと疑っているわけではない。ただネシャート様の周りに起こっている事を、淡々と調べるだけだ。」
「ああ、そうですか。」
ある意味すごいな。
自分の婚約者、取り調べにあうかもしれないのに、全く動じないなんて。
「ハーキム。明日、父上に宝石の事を話そうと思う。そうすれば間もなくお前は、ここを出られるだろう。その後すぐネシャートの元へ。」
「承知しました。」
ハーキムさんが頭を下げると、ジャラールさんはあの階段がある裏道へ急ぐ。
「クレハも早く行け!」
ハーキムさんに言われ、急いでジャラールさんの後を追う。
さすがは身軽。
ジャラールさんは、軽やかに階段を駆け上がる。
一方の私は足が上がらず、息もゼーゼー言っている。
「ジャラールさん……もう上まで行ったかな……」
右足、左足と一歩ずつ足を上げていたら、突然目の前にジャラールさんの足が。
「へっ?」
顔を上げると、涼しい顔のジャラールさんがいた。
「このくらいで動けなくなるとは。体を鍛えてはいないのか。」
「そう……です……ね。」
逆にこれだけの急な階段を、ヒョイヒョイ昇っていくなんて。
どれだけ鍛えているのですか。
「ほら。」
ジャラールさんが、手を差し伸べてくれた。
やった!
ラッキー!
ジャラールさんの手を、ガシッと掴んだ時だ。
スッと体を引き寄せられて、私の体はフワッと浮き上がった。
「えっ?」
「俺が抱き抱えて、クレハを部屋まで運ぶ。」
うわ~~!!
これは正に、お姫様抱っこ!
「いえ!いいです!自分で歩けます!」
「よい。しっかり捕まっていろ。」
そう言ってジャラールさんは、私を抱えながら、普通に階段を昇る。
「……重くないですか?」
「うん……」
「あっ!やっぱり重いんだ!ごめんなさい!降ろして!」
するとジャラールさんは、すぐ側でクスクス笑いかけるだした。
「クレハ、気にする事ない。大事な人を抱えて行くぐらい、男にとっては当然の事だ。」
ジャラールさんの"大事な人"発言に、身悶えする。
落ち着け、自分!
ここはジャラールさんの腕の中!
そんな自問自答を繰り返していると、あっという間に階段を登りきった。
「あっ、じゃあここで……」
「部屋まで送ると、言っただろ。」
ジャラールさんは、私を抱えながら、廊下を歩く。
その様子を廊下にいる警備の人が、ガン見してくる。
「ジャラールさん。この情況って、かなりまずいのでは?」
「そうか?」
「ジャラールさんはいつも、女の人を抱き抱えているの?」
「そう言えば、あまりないな。」
それだよ!
警備の人が、私をガン見している理由。
するとジャラールさんは、部屋のドアを開けて、そのまま隣の寝室へ。
ええ!?
な、何する気?
私の緊張を他所に、ジャラールさんは私を自分のベッドに降ろした。
私を上からジャラールさんが、覗きこむ。
めちゃくちゃ綺麗な顔。
少しでも笑ってくれれば、こっちも微笑み返せたのに、真剣な表情で私を見るから、引き込まれる。
次の瞬間、スーっとジャラールさんの顔が、近づいてくる。
こ、これは何?
もしかして、キキキス!?
私は、咄嗟に顔を両手で覆った。
するとおでこから、"チュッ"と音がする。
「えっ?」
ゆっくりと腕を離すと、そこにはニヤニヤしているジャラールさんがいた。
「もしかして、キスされると思ったか?」
「!!!!」
声にならない叫び声が出る。
「してもよかったが?」
「いやいやいや‼」
否定した勢いで、起き上がる。
「ジャラールさんには、ネシャートさんがいるでしょう!」
ジャラールさんは、目をパチクリさせる。
「まだそんな事言っているのか。」
「そんな事?」
「ネシャートは妹だって言ったはずだ。」
再び真剣な表情に代わる。
「ジャ、ジャラールさん?」
「やはりキスした方が、よかったかな。」
一歩、また一歩、私に近づいてくる。
「わっ、わっわっわっ!」
ジャラールが一歩近づく度に、私が一歩下がる。
「安心しろ、嘘だ。」
ジャラールさんは、私のオデコをペチッと叩く。
「へっ?」
「俺はソファで寝る。」
ソファ……
私の頭の中に、さっき二人で話をした、ソファが浮かぶ。
いや。
いくらなんでも王子様を、ソファで寝かせるわけにはいかないって!
「いえ、ジャラールさん。私がソファで寝ます。」
「クレハが!?」
滅茶苦茶驚かれて、ジャラールさんがこちらを向く。
「だってまさか、王子様がソファで寝るなんて、絶対問題になりますよ。」
人が真剣に話してるのに、ジャラールさんはクスクス笑うばかり。
「何が可笑しいんですか?」
「いや。」
するとジャラールさんは、寝室のドアを閉めて、ベッドにいる私の横に座った。
「実は、少し前までの俺だったら、クレハの事抱けなくてもいいから、ベッドで寝ていた。」
「へっ………」
な、何を言い出すんだ、この王子様。
「ハーキムに訓練だって言われ、宮殿の周りの茂みで野宿した事もあった。もちろん警備上の問題で、1回につき1日だけ。宮殿の、しかもベッド以外の場所で寝るなんて、もっての他だった。」
「そう……ですよね。」
それ、気持ちが分かると言うより、正統な意見だと思います。
「でも今回の旅でよく分かった。自分はなんて、世間知らずだったのだろうと。」
いや、それでいいんだと思います。
「それにもう一つ、分かった事がある。」
「何ですか?」
「本当に欲しいって思ったモノは、時間をかけてゆっくりと自分のモノにした方がいいと言う事だ。」
「はあ。」
どう言う事?
一番好きなモノは、一番最後に食べた方がいいって事?
「じゃ、クレハ。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
寝室のドアがと閉まる寸前、ジャラールさんは私を見ながら、クスッと笑った。
なぜ笑った?
王子様の笑みに疑問を感じながら、ふかふかのお布団に入る。
体全体が包まれ、疲れも一気に吹き飛ぶ。
ああ。
こんな優しさに包まれながら眠るのって、最高に幸せ。
って、待て!!
私は上半身をガバッと起こした。
このまま寝たら、現実の世界に戻っちゃうじゃんか!!
おっと!ジャラールさん!
私はベッドから降りて、ジャラールさんがいる部屋に向かおうとした。
ん?
それも待って。
さっきみたいに、襲われそうになったら嫌だ。
と言う事は、朝までここで待つしかないか。
ん~
できるかな。
朝まで寝ないで待ってるなんて。
そうだ!
ゲームだ!ゲーム!!
私は自分の服を触った。
「いけない。これラナーの衣装じゃん。制服、ラナーに預けっぱなしだし。」
今から取りに行く?
悩んだ挙げ句、睡魔に勝てない事を悟った私は、ラナーの部屋に制服を取りに行く事を決心した。
まずはそっとドアを開けて、ジャラールさんが眠ったのか確認する。
旅の間も比較的早く眠りについていたジャラールさん。
今回もソファに寝ているせいか、もうスースー寝息をたてている。
ヨシ!
この間に廊下へ脱出。
そーっと忍び足で、ドアを開け廊下へ出た。
ジャラールさんが起きてない事を確かめてから、ドアを閉める。
OK!
私、結構やるじゃん。
廊下に出て、ジャラールさんのテリトリーの場所を仕切っている大きな扉も少しだけ開ける。
そこには警備の人が立っているのが見えた。
このままじゃ、私は捕まる。
私は再びラナーの服を手でバンバン叩くと、ポケットからボタンが出てきた。
これ使えるかな。
私はもう少しだけドアを開けると、ボタンを窓に向かって投げた。
コツッと音がして、見事命中。
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