24 / 32
黒幕の黒幕
②
しおりを挟む
「なんだ?侵入者か?」
ドアの近くにいた護衛の人達が、窓へと移動していく。
その隙に、廊下を走って角を曲がる。
あのたくさんのお姉さん達が、ジャラールさんを待っていた場所だ。
「と言う事は、ラナーの部屋はこっちだよ。」
元来た道をそのまま戻る。
私ってもしかしたら、天才?
そんな事を思いながら、廊下を進むとラナーの姿を発見。
「あっ、ラナー!……」
手を振ろうとしたら、ラナーは走ってどこかへ行ってしまった。
「うそっ!」
せっかくここまで来たのに。
案の定、ラナーの部屋には鍵が掛かっている。
勝手に制服を取る事もできない。
「仕方ないな~」
追いかけてラナーに、鍵を開けてもらうしかない。
私はラナーの後を追った。
「いた。」
やっと見つけたラナーは、また素早く廊下の角を曲がる。
「早いよ。」
私は小走りでラナーが曲がった場所へ行く。
そして気づく。
ラナーの動きがおかしい事に。
まるで誰かに知られたくないように、急に姿を消す。
「ラナー?」
姿を消した場所を探して、ラナーを見つけては、また走って追いかける。
最終的にラナーが辿り着いたのは、キッチンだった。
「なんでこんな面倒な事すんの?」
キッチンがある場所は、中央の階段を降りた場所にあった。
ラナーの部屋からは、階段を降りてすぐ側だ。
なのにわざわざ、建物の一番奥まで来て、階段を降りたら、また違う場所の階段を使って降りる。
まるでジグザグ。
わざとそうしているみたいに。
「で?ここで何をするの?」
キッチンを覗くと、ミルクを鍋で温めている。
「なんだ。温かい牛乳飲みたかっただけ?」
ガックリきて、さっさと部屋の鍵を貸して貰おうとした時だ。
ラナーが粉上のモノを、鍋の中に入れていた。
胸騒ぎがする。
ねえ、ラナー。
それは誰が飲むの?
しばらくしてラナーは、その牛乳の入ったカップを、誰にも見られないようにトレーに乗せる。
そしてまたキョロキョロ。
キッチンのドアを開けても、キョロキョロ。
怪しい。
素人の私から見ても、かなり怪しい。
そう思った私は、キッチンから姿を消したラナーの後をついて行く。
見失わないように、と思ったら今度はゆっくりと廊下を歩いて行く。
さっきの、そそくさと逃げるような動きとは、全く違った。
ラナーの向かった先は、ジャラールさんと同じくらい、いやもっと大きな扉の前だった。
護衛はラナーの顔を見ただけで、扉を開けた。
「どこなんだろう……」
ただラナーの部屋の鍵を貸してほしいだけで、こんなところへ来てしまって。
仕方がない。
今日は諦めるかと、後ろを振り向いた瞬間。
「………っ!!」
長い指で口を覆われ、カーテンの後ろへ、連れて行かれる。
「静かに。」
聞いた事のある声に、少しだけ振り向く。
「ジャラ……」
名前を呼ぼうとして、また口を塞がれた。
「どうして……寝てたはずじゃ……」
「クレハ。それ以上言うと、今度は唇でその口を塞ぐぞ。」
ジャラールさんにキスされたんじゃ、敵わない。
大人しく黙っている事にした。
扉の前にいるラナーは、護衛の人にあっさり通され、あの大きな扉へ入って行く。
「クレハはここで待っていろ。」
「あっ、ジャラールさん!!」
振り向いたその姿は、マンガに出てきそうな程のカッコよさ。
思わずよろめく。
「クレハ?」
「あっ、いやいや。私も一緒に行っていい?」
「ダメだ。」
ジャラールさんは、即答すると背中を向けた。
「おっと!」
必死にジャラールさんの腕を掴む。
「私、ラナーに部屋の鍵借りに来たんだよね。」
へへへと笑って見せたけど、ジャラールさんの表情は変わらない。
「……なぜ鍵を借りる必要があるのだ。」
「これ、ラナーに借りた服なんだよね。自分の服はラなが持っているから……」
「だとしたら、しばらくその服でいろ。」
そう言ってジャラールさんは、扉へ行こうとした。
「おっと!」
「今度はなんだ!」
「欲しいのは服じゃなくて、携帯なの!」
「携帯?」
「携帯電話。それが必要なの!」
この国にはまだ携帯がないのか、ジャラールさんは"なんだ、それは?"と言う顔。
まずい。
通話やメールは出来ないって諦めてたけど、もしかしたらゲームもできなかったりして。
「分かった。中に連れて行ってやる。」
「やった!」
「その代わり……」
「はい?」
ジャラールさんは、どこか一点を見つめながら、考えている。
「いや、いい。その時はその時だ。」
今度は私が頭の上にクエスチョンマーク。
「来い。」
ジャラールさんはそう言うと、私を連れて、大きな扉の前に立った。
「ジャラール王子。」
護衛の人達が、直立不動になる。
「扉を開けてくれ。」
「はい。」
扉を開けると、護衛の人達は私に気づく。
まずいよ。
「ジャラール王子。そちらの方は?」
「この者は、私の付き人だ。」
「失礼しました。」
初めて会った人達が、私に頭を下げる。
不思議な感じ。
大きな扉を開けると、贅沢を施した装飾品満載の廊下が現れた。
「キレイ……」
一歩ずつ歩く度に、見たこともないような、美しいモノに目を奪われた。
「すごいだろう。」
「うん……」
「広さも俺の部屋の倍はある。」
「ええっ!?倍?」
ジャラールさんの部屋だって、相当な広さだよ?
「次の国王になられる方だ。格が違う。」
「次の国王……」
思わず息を飲む。
背筋が真っ直ぐになる。
もしかしたら、私。
とんでもないところへ来ているんじゃないか……
そして長い廊下の真ん中辺りに来た時だ。
「ここからは声を出さないように。」
私は大きく頷いた。
目の前の扉を、音を立てないように開け、更に奥の部屋へ向かう。
そしてジャラールさんは、奥の部屋の扉を、少しだけ開けた。
そこから漏れた光に、ジャラールさんの顔が照らされる。
その表情は、見たこともない程に厳しい。
こんな顔見せられたら、"声を出すな"って言われなくても、出せないでしょう
しかしなんで、そんな難しい顔してるかな。
滅多にお目にかかれない王子様の真剣顔に、ラッキーと思いながら見惚れていた。
う~ん。
やっぱりカッコいい。
すると急に扉を開けて、ジャラールさんはスッと入って行ってしまった。
「ジャ……」
あっ!と思って、口を押さえる。
声を出すなって言われてたんだっけ。
「そこまでだ。」
中からジャラールさんの声が聞こえた。
そっと覗きこむと、ジャラールさんが誰かの腕を掴んでいる。
誰?
私はもう少しだけ、扉を開けた。
「ジャラール王子……」
見えたのは、ラナーだった。
「君だったのか。通りでなかなか原因が分からないわけだ。」
えっ?
私は扉を開けた。
ラナーがハッとして、こっちを見た。
「クレハ様……どうしてここに……」
「あ、あの……私、ラナーの部屋の鍵を、貸して貰いたくて……」
「鍵?」
うわっ。
なんかそんな空気じゃない。
どうしよう。
「ラナー。すまぬが、クレハに鍵を貸してやってくれないか。」
ジャラールさんに言われ、ラナーはポケットから、部屋の鍵を取り出した。
それをジャラールさんが、受けとる。
「そして君にはこのまま、地下牢に行ってもらう。」
えっ!?
ど、どう言う事?
「ジャラールさん!?ラナーが何かしたんですか?」
するとジャラールさんは、ラナーの腕を掴みながら、こう言った。
「……ネシャートの容態は、夜中が一番酷かった。就寝前は、ネシャートの側近しか近づけないはず。護衛は必死に怪しい者が部屋に入らないか、厳重に警備したが見つからなかった。」
ジャラールさんは、ラナーの腕を掴んだまま、持っていたカップを奪い、近くにあった魚の水槽に入れた。
魚は変わらずに泳いでいたが、しばらくして小指の半分程の小さな魚は、水面に横たわりながら浮いてきた。
「これって……」
「死んでいるんだ。小魚が死ぬくらいの毒が、飲み物の中に入っている。これを飲んだら、毒に慣れている王族とて、体を病むだろう。」
私は目の前が、クルクル回りだした。
「ラナー、もしかして……あの時……」
「見ていたのですね。」
ラナーは落ち着いている。
反って私の方が、立っていられずに、そのまま座り込んでしまった。
「誰か!!」
ジャラールさんが叫ぶと、護衛の人達が中に入って来た。
「どうされました?」
「この者を地下牢に連れて行け!!」
「……ネシャート王女の侍女をですか?」
護衛達は、後ずさりをする。
「ネシャート王女への反逆だ。私が責任を持つ。連れて行け!」
「はい。」
ようやくラナーを捕まえた時も、護衛達は手が震えていた。
「……ラナーは、そんなに偉い人なの?」
「ああ。俺の次に偉いんじゃないか?何せ次期国王の侍女だからな。」
「そ、そんな人が……ネシャートさんを?どうして……」
「知らぬ。後で本人に聞くしかないだろう。とは言っても、答えぬとは思うがな。」
どうして、あのラナーが?
自分の主人を?
例えるなら、ハーキムさんがジャラールさんに毒をもるのと一緒じゃない。
そんな事!!
「どうしたのです?」
奥の部屋から澄んだ声が聞こえた。
「ネシャート。」
「ジャラール。なぜここに?」
お互い近づくと、体を寄せ合う二人。
手を触れるわけでもなく、抱き締め合うわけでもないのに、二人の仲睦まじさは分かる距離。
あっ、もしかしたら……
この人が……
見とれている私に気づいたジャラールさんは、私にこう告げた。
「クレハ。この方が未来の国王、ネシャート王女だ。」
ドアの近くにいた護衛の人達が、窓へと移動していく。
その隙に、廊下を走って角を曲がる。
あのたくさんのお姉さん達が、ジャラールさんを待っていた場所だ。
「と言う事は、ラナーの部屋はこっちだよ。」
元来た道をそのまま戻る。
私ってもしかしたら、天才?
そんな事を思いながら、廊下を進むとラナーの姿を発見。
「あっ、ラナー!……」
手を振ろうとしたら、ラナーは走ってどこかへ行ってしまった。
「うそっ!」
せっかくここまで来たのに。
案の定、ラナーの部屋には鍵が掛かっている。
勝手に制服を取る事もできない。
「仕方ないな~」
追いかけてラナーに、鍵を開けてもらうしかない。
私はラナーの後を追った。
「いた。」
やっと見つけたラナーは、また素早く廊下の角を曲がる。
「早いよ。」
私は小走りでラナーが曲がった場所へ行く。
そして気づく。
ラナーの動きがおかしい事に。
まるで誰かに知られたくないように、急に姿を消す。
「ラナー?」
姿を消した場所を探して、ラナーを見つけては、また走って追いかける。
最終的にラナーが辿り着いたのは、キッチンだった。
「なんでこんな面倒な事すんの?」
キッチンがある場所は、中央の階段を降りた場所にあった。
ラナーの部屋からは、階段を降りてすぐ側だ。
なのにわざわざ、建物の一番奥まで来て、階段を降りたら、また違う場所の階段を使って降りる。
まるでジグザグ。
わざとそうしているみたいに。
「で?ここで何をするの?」
キッチンを覗くと、ミルクを鍋で温めている。
「なんだ。温かい牛乳飲みたかっただけ?」
ガックリきて、さっさと部屋の鍵を貸して貰おうとした時だ。
ラナーが粉上のモノを、鍋の中に入れていた。
胸騒ぎがする。
ねえ、ラナー。
それは誰が飲むの?
しばらくしてラナーは、その牛乳の入ったカップを、誰にも見られないようにトレーに乗せる。
そしてまたキョロキョロ。
キッチンのドアを開けても、キョロキョロ。
怪しい。
素人の私から見ても、かなり怪しい。
そう思った私は、キッチンから姿を消したラナーの後をついて行く。
見失わないように、と思ったら今度はゆっくりと廊下を歩いて行く。
さっきの、そそくさと逃げるような動きとは、全く違った。
ラナーの向かった先は、ジャラールさんと同じくらい、いやもっと大きな扉の前だった。
護衛はラナーの顔を見ただけで、扉を開けた。
「どこなんだろう……」
ただラナーの部屋の鍵を貸してほしいだけで、こんなところへ来てしまって。
仕方がない。
今日は諦めるかと、後ろを振り向いた瞬間。
「………っ!!」
長い指で口を覆われ、カーテンの後ろへ、連れて行かれる。
「静かに。」
聞いた事のある声に、少しだけ振り向く。
「ジャラ……」
名前を呼ぼうとして、また口を塞がれた。
「どうして……寝てたはずじゃ……」
「クレハ。それ以上言うと、今度は唇でその口を塞ぐぞ。」
ジャラールさんにキスされたんじゃ、敵わない。
大人しく黙っている事にした。
扉の前にいるラナーは、護衛の人にあっさり通され、あの大きな扉へ入って行く。
「クレハはここで待っていろ。」
「あっ、ジャラールさん!!」
振り向いたその姿は、マンガに出てきそうな程のカッコよさ。
思わずよろめく。
「クレハ?」
「あっ、いやいや。私も一緒に行っていい?」
「ダメだ。」
ジャラールさんは、即答すると背中を向けた。
「おっと!」
必死にジャラールさんの腕を掴む。
「私、ラナーに部屋の鍵借りに来たんだよね。」
へへへと笑って見せたけど、ジャラールさんの表情は変わらない。
「……なぜ鍵を借りる必要があるのだ。」
「これ、ラナーに借りた服なんだよね。自分の服はラなが持っているから……」
「だとしたら、しばらくその服でいろ。」
そう言ってジャラールさんは、扉へ行こうとした。
「おっと!」
「今度はなんだ!」
「欲しいのは服じゃなくて、携帯なの!」
「携帯?」
「携帯電話。それが必要なの!」
この国にはまだ携帯がないのか、ジャラールさんは"なんだ、それは?"と言う顔。
まずい。
通話やメールは出来ないって諦めてたけど、もしかしたらゲームもできなかったりして。
「分かった。中に連れて行ってやる。」
「やった!」
「その代わり……」
「はい?」
ジャラールさんは、どこか一点を見つめながら、考えている。
「いや、いい。その時はその時だ。」
今度は私が頭の上にクエスチョンマーク。
「来い。」
ジャラールさんはそう言うと、私を連れて、大きな扉の前に立った。
「ジャラール王子。」
護衛の人達が、直立不動になる。
「扉を開けてくれ。」
「はい。」
扉を開けると、護衛の人達は私に気づく。
まずいよ。
「ジャラール王子。そちらの方は?」
「この者は、私の付き人だ。」
「失礼しました。」
初めて会った人達が、私に頭を下げる。
不思議な感じ。
大きな扉を開けると、贅沢を施した装飾品満載の廊下が現れた。
「キレイ……」
一歩ずつ歩く度に、見たこともないような、美しいモノに目を奪われた。
「すごいだろう。」
「うん……」
「広さも俺の部屋の倍はある。」
「ええっ!?倍?」
ジャラールさんの部屋だって、相当な広さだよ?
「次の国王になられる方だ。格が違う。」
「次の国王……」
思わず息を飲む。
背筋が真っ直ぐになる。
もしかしたら、私。
とんでもないところへ来ているんじゃないか……
そして長い廊下の真ん中辺りに来た時だ。
「ここからは声を出さないように。」
私は大きく頷いた。
目の前の扉を、音を立てないように開け、更に奥の部屋へ向かう。
そしてジャラールさんは、奥の部屋の扉を、少しだけ開けた。
そこから漏れた光に、ジャラールさんの顔が照らされる。
その表情は、見たこともない程に厳しい。
こんな顔見せられたら、"声を出すな"って言われなくても、出せないでしょう
しかしなんで、そんな難しい顔してるかな。
滅多にお目にかかれない王子様の真剣顔に、ラッキーと思いながら見惚れていた。
う~ん。
やっぱりカッコいい。
すると急に扉を開けて、ジャラールさんはスッと入って行ってしまった。
「ジャ……」
あっ!と思って、口を押さえる。
声を出すなって言われてたんだっけ。
「そこまでだ。」
中からジャラールさんの声が聞こえた。
そっと覗きこむと、ジャラールさんが誰かの腕を掴んでいる。
誰?
私はもう少しだけ、扉を開けた。
「ジャラール王子……」
見えたのは、ラナーだった。
「君だったのか。通りでなかなか原因が分からないわけだ。」
えっ?
私は扉を開けた。
ラナーがハッとして、こっちを見た。
「クレハ様……どうしてここに……」
「あ、あの……私、ラナーの部屋の鍵を、貸して貰いたくて……」
「鍵?」
うわっ。
なんかそんな空気じゃない。
どうしよう。
「ラナー。すまぬが、クレハに鍵を貸してやってくれないか。」
ジャラールさんに言われ、ラナーはポケットから、部屋の鍵を取り出した。
それをジャラールさんが、受けとる。
「そして君にはこのまま、地下牢に行ってもらう。」
えっ!?
ど、どう言う事?
「ジャラールさん!?ラナーが何かしたんですか?」
するとジャラールさんは、ラナーの腕を掴みながら、こう言った。
「……ネシャートの容態は、夜中が一番酷かった。就寝前は、ネシャートの側近しか近づけないはず。護衛は必死に怪しい者が部屋に入らないか、厳重に警備したが見つからなかった。」
ジャラールさんは、ラナーの腕を掴んだまま、持っていたカップを奪い、近くにあった魚の水槽に入れた。
魚は変わらずに泳いでいたが、しばらくして小指の半分程の小さな魚は、水面に横たわりながら浮いてきた。
「これって……」
「死んでいるんだ。小魚が死ぬくらいの毒が、飲み物の中に入っている。これを飲んだら、毒に慣れている王族とて、体を病むだろう。」
私は目の前が、クルクル回りだした。
「ラナー、もしかして……あの時……」
「見ていたのですね。」
ラナーは落ち着いている。
反って私の方が、立っていられずに、そのまま座り込んでしまった。
「誰か!!」
ジャラールさんが叫ぶと、護衛の人達が中に入って来た。
「どうされました?」
「この者を地下牢に連れて行け!!」
「……ネシャート王女の侍女をですか?」
護衛達は、後ずさりをする。
「ネシャート王女への反逆だ。私が責任を持つ。連れて行け!」
「はい。」
ようやくラナーを捕まえた時も、護衛達は手が震えていた。
「……ラナーは、そんなに偉い人なの?」
「ああ。俺の次に偉いんじゃないか?何せ次期国王の侍女だからな。」
「そ、そんな人が……ネシャートさんを?どうして……」
「知らぬ。後で本人に聞くしかないだろう。とは言っても、答えぬとは思うがな。」
どうして、あのラナーが?
自分の主人を?
例えるなら、ハーキムさんがジャラールさんに毒をもるのと一緒じゃない。
そんな事!!
「どうしたのです?」
奥の部屋から澄んだ声が聞こえた。
「ネシャート。」
「ジャラール。なぜここに?」
お互い近づくと、体を寄せ合う二人。
手を触れるわけでもなく、抱き締め合うわけでもないのに、二人の仲睦まじさは分かる距離。
あっ、もしかしたら……
この人が……
見とれている私に気づいたジャラールさんは、私にこう告げた。
「クレハ。この方が未来の国王、ネシャート王女だ。」
1
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる