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黒幕の黒幕
③
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教わらなくても分かる。
この人以外に"王女"と呼べる人が、他にいるんだろうか。
高貴で端正な顔立ち。
体からは光が射しているように見えて、どんな人でも受け入れてくれそうな柔らかい表情。
高価な宝石にも負けない美しさ。
私は今までこれ程に綺麗な人に、出会った事がない。
この人が、ネシャート王女。
私の目からは、勝手に涙が流れていた。
「クレハ?」
ジャラールさんが、私の顔を覗きこむ。
「ごめんなさい。泣いちゃって。なんだかネシャートさんに会ったら泣けてきて……」
涙を拭くと、知らず知らずのうちに、気持ちが溢れだしてきた。
「ずっと、ジャラールさんからもハーキムさんからも、ネシャートさんの話を聞いていたの。」
この国の次の女王様。
とても美しい人。
ジャラールさんの血の繋がらない妹。
そして……
ジャラールさんが愛している人。
「うっうっ……」
思い出したら、また泣けてきた。
「会いたかった……ネシャートさんに。」
するとネシャートさんは、私の左手を両手でそっと握りしめてくれた。
「私もあなたの事は、ジャラールから聞いてました。」
「ネシャートさん……」
「会いたかったのは、私も同じです。クレハ。」
握りしめてくれた手が、とても温かい。
優しさが伝わってくる。
「さあ、座りましょう。二人とも。」
ネシャートさんは、私とジャラールさんをソファに座らせた。
「ジャラール。実は私の体調不良の原因が、ラナーにある事は、薄々気付いておりました。」
「ネシャート?」
驚くジャラールさんは、ネシャートさんの肩にそっと触れている。
大切なモノを扱うみたいに。
「なぜ黙っていたのだ?こんなになりながら。」
「ラナーは、幼い頃から私に付いてきてくれた侍女です。反逆など起こすような人間ではない事は、私が一番に理解しています。きっと何か理由があるのです。」
「ではラナー以外の犯人が分かるまで、病気になると知りながら、出されたモノを飲み続けていたのか?」
「ええ。」
するとジャラールさんは、私がいると言うのに、目の前でネシャートさんを抱き締めた。
その抱き締め方が、また優しくて、見ているこっちが恥ずかしくなる。
「もっと自分を大事にしてくれ。」
「すみません。でも我々は、幼い頃から少量の毒を口にしているのですから、これくらいは平気……」
「そうであっても‼」
ジャラールさんの抱き締める力が、強くなった。
「あなたを失ったら、私はどうやって生きていけばよいのか。」
「ジャラール……」
胸が痛い。
でも目が離せない。
今までジャラールさんの恋人達は、こんな想いを抱きながら、側にいたんだろうか。
ジャラールさんは、自分を大切に扱ってくれる。
けれど、それは決して一番ではない事を、想い知らされる。
私は立ち上がった。
「お二人とも、もうお休み下さい。私は、元の部屋に戻りますから。」
「クレハ。」
ジャラールさんは、ネシャートさんから離れた。
「部屋に戻るのか?ならば、俺も一緒に……」
「ううん。ジャラールさんは、ネシャートさんの側にいてあげて。」
「クレハ?」
「その代わり、ジャラールさんのベッド。一晩貸して下さい。」
ジャラールさんは、私を見ながら、優しく微笑んでくれた。
「ありがとう。クレハ。」
ジャラールさん。
本当に嬉しそう。
「クレハ。ありがとう。」
ネシャートさんも、満面の笑みを浮かべてるよ。
もしかして、二人きりで会う時間がなかったのかな。
「お休みなさい、ジャラールさん。ネシャートさん。」
「お休み、クレハ。」
二人にバイバイして、部屋を出た。
扉を締める時、隙間から二人がキスしているのが見えた。
他人の生チューなんて、生まれて初めて見たよ。
扉を閉めた私は、はああっと長いため息をついた。
異世界から来た私に、優しかったジャラールさん。
そのジャラールさんが、本当に嬉しそうなんだから、それでいい!
私は両頬を、パンパンと2度叩くと、ネシャートさんの部屋の入り口にある、大きな扉を通った。
しかし、これからどうしようかな。
ラナーの部屋の鍵は、ジャラールさんから、貰いそびれるし。
ジャラールさんのベッドは借りたものの、そのまま寝ちゃったら、元の世界に戻っちゃうし。
そうだ!
確かラナーは、地下牢に連れて行かれたんだっけ。
ジャラールさんは、ラナーは口を割らないと言っていたけれど、もしかしたらあまり知らない私には、話してくれるかも。
そんな無謀な事を考えた私は、早速例の隠し階段へ。
もう3度目だから、足取りも軽い。
と言うか、1日に3回も登り降りする人も、他にはいないと思うけど。
軽い足取りで階段を一番下まで降りると、すぐハーキムさんの牢屋が見えた。
「クレハ!」
ハーキムさんが、私の姿を見つけて、飛んできた。
「さっき、新しい罪人が牢屋に来た。上で何かあったのか?」
新しい罪人?
ハーキムさんは知らない?
その人がラナーだと言う事を。
「ハーキムさん。実は、牢屋に連れて来られた人、ラナーなの。」
「何だって?」
「ラナーが、ネシャートさんに毒入りの飲み物を渡したところを、ジャラールさんが見たの。」
「……渡しただけだろう。本当に毒は入っていたのか?」
私は、一度だけ頷いた。
「持っていた飲み物を、水槽の中に入れたら、魚は死んでしまった。それで……」
ハーキムさんは、そのまま膝をついてしまった。
「なんて事だ。何かの間違いじゃないのか!!」
「ハーキムさん。」
「ラナーは、小さい時からネシャート王女に付いていたのだぞ?命を狙うなんてそんな!!」
ネシャートさんも同じ事を言っていた。
けれどジャラールさんだけは、静かに目の前の事実を受け止めている。
「ハーキムさん。私は、ラナーに直接聞いてみようと思うの。」
「よせ。」
「どうして!?」
「あの者は余計な事は話さない。そう育てられた。」
「そんな!!」
「未来の国王に仕える身だ。必要な心構えだ。」
私は右手を固く、握りしめた。
やっぱり私の考えは、甘かったんだろうか。
ラナーとは今日初めて会ったと言うのに、お気に入りの衣装を貸して貰えたからと言って、心を開いてくれるなんて。
「クレハ。その代わり俺が行く。」
「ハーキムさんが?そこを出られるの?」
「いや、今のままでは鍵が掛けられていて無理だ。」
「どうするの?」
するとハーキムさんは、私に手招きをした。
「もう少しで、番人がここを通る。その時に、鍵を拝借する。」
「えっ!?」
そして遠くから、ガチャンガチャンと音が鳴り出した。
「番人が来る音だ。クレハ、近くに隠れていろ。」
「うん。」
私はハーキムさんに言われ、隠れ階段の中に、身を潜めた。
やがてガチャガチャと音を立てて、番人がやってきた。
「ハーキム。明日の朝、仮釈放だ。」
「はい。」
「朝、鍵を開けるまで、大人しくしていろ。」
ハーキムさんは、番人に言われても、そのままじっと見つめ続ける。
「おい。聞いているのか?」
番人が苛ついて、顔を近づけた。
「ああ。」
しばらく顔を合わせていたけれど、番人は舌打ちをして戻って行った。
「クレハ。もういいぞ。」
ハーキムさんに声をかけられ、階段の入口から出た。
「やれやれ。」
そう言いながら、ハーキムさんも牢屋の外へ。
「ええ?いつの間に鍵を?」
「簡単だ。あちらから近づいて来てくれたんだからな。」
もしかして、番人がハーキムさんとにらめっこしているうちに!?
う~ん。
ハーキムさん、侮れない。
番人から上手く鍵を盗んだハーキムさんが、牢屋から出てきた。
「ラナーはどこにいるの?」
「こっちだ。」
ハーキムさんが指差す方へ、二人で走る。
途中、さっきの番人に見つからないように、足を止め息を潜めながら。
角を2つ程曲がった頃。
私達はラナーを見つけた。
「ラナー。」
ハーキムさんの声に驚き、ラナーは鉄格子に近づくどころか、奥へと身を隠してしまった。
「ラナー、私だ。近くに来て、顔を見せてくれ。」
「合わせる顔がありません。」
いつもと変わらない冷静な声。
ラナーは、こんな暗い地下牢に連れて来られ、そこで婚約者に会ったとしても、心は掻き乱されないのだろうか。
それも、そのように育てられたから?
だとしたら、悲しい。
ラナーにだって、こんな時くらい、心を掻き乱されたっていいはずた。
「ラナー。」
私もハーキムさんのように、鉄格子に近づいた。
「ラナー。ネシャートさんやハーキムさんは、あなたが裏切るような人ではないと信じているの。」
ラナーは固まったように、動かない。
「お願い、ラナー。どうしてそんな事をしたのか、理由を教えて。きっとそうしなければならなかった訳があるんでしょう?」
ラナーの指がほんの少しだけ動く。
「ハーキムさんに言えないのなら、私でもいい。ラナー、あなたを救いたいの。」
ラナーは、ゆっくりとこっちを向いてくれた。
「ラナー!」
「偽善者。」
「えっ?」
「私の事も、ハーキム様の事も、この国の事も何も分からないくせに。」
ラナーは、怖い顔で私を睨んでいる。
ハーキムさんの言う通り、私じゃあラナーの心を開けなかった。
私が泣きそうになった時、ハーキムさんが私の腕を掴んだ。
「番人が来る。」
「ウソ!!」
「ラナー、また来る。」
それだけを残して、ハーキムさんは私を連れ、走り出した。
この人以外に"王女"と呼べる人が、他にいるんだろうか。
高貴で端正な顔立ち。
体からは光が射しているように見えて、どんな人でも受け入れてくれそうな柔らかい表情。
高価な宝石にも負けない美しさ。
私は今までこれ程に綺麗な人に、出会った事がない。
この人が、ネシャート王女。
私の目からは、勝手に涙が流れていた。
「クレハ?」
ジャラールさんが、私の顔を覗きこむ。
「ごめんなさい。泣いちゃって。なんだかネシャートさんに会ったら泣けてきて……」
涙を拭くと、知らず知らずのうちに、気持ちが溢れだしてきた。
「ずっと、ジャラールさんからもハーキムさんからも、ネシャートさんの話を聞いていたの。」
この国の次の女王様。
とても美しい人。
ジャラールさんの血の繋がらない妹。
そして……
ジャラールさんが愛している人。
「うっうっ……」
思い出したら、また泣けてきた。
「会いたかった……ネシャートさんに。」
するとネシャートさんは、私の左手を両手でそっと握りしめてくれた。
「私もあなたの事は、ジャラールから聞いてました。」
「ネシャートさん……」
「会いたかったのは、私も同じです。クレハ。」
握りしめてくれた手が、とても温かい。
優しさが伝わってくる。
「さあ、座りましょう。二人とも。」
ネシャートさんは、私とジャラールさんをソファに座らせた。
「ジャラール。実は私の体調不良の原因が、ラナーにある事は、薄々気付いておりました。」
「ネシャート?」
驚くジャラールさんは、ネシャートさんの肩にそっと触れている。
大切なモノを扱うみたいに。
「なぜ黙っていたのだ?こんなになりながら。」
「ラナーは、幼い頃から私に付いてきてくれた侍女です。反逆など起こすような人間ではない事は、私が一番に理解しています。きっと何か理由があるのです。」
「ではラナー以外の犯人が分かるまで、病気になると知りながら、出されたモノを飲み続けていたのか?」
「ええ。」
するとジャラールさんは、私がいると言うのに、目の前でネシャートさんを抱き締めた。
その抱き締め方が、また優しくて、見ているこっちが恥ずかしくなる。
「もっと自分を大事にしてくれ。」
「すみません。でも我々は、幼い頃から少量の毒を口にしているのですから、これくらいは平気……」
「そうであっても‼」
ジャラールさんの抱き締める力が、強くなった。
「あなたを失ったら、私はどうやって生きていけばよいのか。」
「ジャラール……」
胸が痛い。
でも目が離せない。
今までジャラールさんの恋人達は、こんな想いを抱きながら、側にいたんだろうか。
ジャラールさんは、自分を大切に扱ってくれる。
けれど、それは決して一番ではない事を、想い知らされる。
私は立ち上がった。
「お二人とも、もうお休み下さい。私は、元の部屋に戻りますから。」
「クレハ。」
ジャラールさんは、ネシャートさんから離れた。
「部屋に戻るのか?ならば、俺も一緒に……」
「ううん。ジャラールさんは、ネシャートさんの側にいてあげて。」
「クレハ?」
「その代わり、ジャラールさんのベッド。一晩貸して下さい。」
ジャラールさんは、私を見ながら、優しく微笑んでくれた。
「ありがとう。クレハ。」
ジャラールさん。
本当に嬉しそう。
「クレハ。ありがとう。」
ネシャートさんも、満面の笑みを浮かべてるよ。
もしかして、二人きりで会う時間がなかったのかな。
「お休みなさい、ジャラールさん。ネシャートさん。」
「お休み、クレハ。」
二人にバイバイして、部屋を出た。
扉を締める時、隙間から二人がキスしているのが見えた。
他人の生チューなんて、生まれて初めて見たよ。
扉を閉めた私は、はああっと長いため息をついた。
異世界から来た私に、優しかったジャラールさん。
そのジャラールさんが、本当に嬉しそうなんだから、それでいい!
私は両頬を、パンパンと2度叩くと、ネシャートさんの部屋の入り口にある、大きな扉を通った。
しかし、これからどうしようかな。
ラナーの部屋の鍵は、ジャラールさんから、貰いそびれるし。
ジャラールさんのベッドは借りたものの、そのまま寝ちゃったら、元の世界に戻っちゃうし。
そうだ!
確かラナーは、地下牢に連れて行かれたんだっけ。
ジャラールさんは、ラナーは口を割らないと言っていたけれど、もしかしたらあまり知らない私には、話してくれるかも。
そんな無謀な事を考えた私は、早速例の隠し階段へ。
もう3度目だから、足取りも軽い。
と言うか、1日に3回も登り降りする人も、他にはいないと思うけど。
軽い足取りで階段を一番下まで降りると、すぐハーキムさんの牢屋が見えた。
「クレハ!」
ハーキムさんが、私の姿を見つけて、飛んできた。
「さっき、新しい罪人が牢屋に来た。上で何かあったのか?」
新しい罪人?
ハーキムさんは知らない?
その人がラナーだと言う事を。
「ハーキムさん。実は、牢屋に連れて来られた人、ラナーなの。」
「何だって?」
「ラナーが、ネシャートさんに毒入りの飲み物を渡したところを、ジャラールさんが見たの。」
「……渡しただけだろう。本当に毒は入っていたのか?」
私は、一度だけ頷いた。
「持っていた飲み物を、水槽の中に入れたら、魚は死んでしまった。それで……」
ハーキムさんは、そのまま膝をついてしまった。
「なんて事だ。何かの間違いじゃないのか!!」
「ハーキムさん。」
「ラナーは、小さい時からネシャート王女に付いていたのだぞ?命を狙うなんてそんな!!」
ネシャートさんも同じ事を言っていた。
けれどジャラールさんだけは、静かに目の前の事実を受け止めている。
「ハーキムさん。私は、ラナーに直接聞いてみようと思うの。」
「よせ。」
「どうして!?」
「あの者は余計な事は話さない。そう育てられた。」
「そんな!!」
「未来の国王に仕える身だ。必要な心構えだ。」
私は右手を固く、握りしめた。
やっぱり私の考えは、甘かったんだろうか。
ラナーとは今日初めて会ったと言うのに、お気に入りの衣装を貸して貰えたからと言って、心を開いてくれるなんて。
「クレハ。その代わり俺が行く。」
「ハーキムさんが?そこを出られるの?」
「いや、今のままでは鍵が掛けられていて無理だ。」
「どうするの?」
するとハーキムさんは、私に手招きをした。
「もう少しで、番人がここを通る。その時に、鍵を拝借する。」
「えっ!?」
そして遠くから、ガチャンガチャンと音が鳴り出した。
「番人が来る音だ。クレハ、近くに隠れていろ。」
「うん。」
私はハーキムさんに言われ、隠れ階段の中に、身を潜めた。
やがてガチャガチャと音を立てて、番人がやってきた。
「ハーキム。明日の朝、仮釈放だ。」
「はい。」
「朝、鍵を開けるまで、大人しくしていろ。」
ハーキムさんは、番人に言われても、そのままじっと見つめ続ける。
「おい。聞いているのか?」
番人が苛ついて、顔を近づけた。
「ああ。」
しばらく顔を合わせていたけれど、番人は舌打ちをして戻って行った。
「クレハ。もういいぞ。」
ハーキムさんに声をかけられ、階段の入口から出た。
「やれやれ。」
そう言いながら、ハーキムさんも牢屋の外へ。
「ええ?いつの間に鍵を?」
「簡単だ。あちらから近づいて来てくれたんだからな。」
もしかして、番人がハーキムさんとにらめっこしているうちに!?
う~ん。
ハーキムさん、侮れない。
番人から上手く鍵を盗んだハーキムさんが、牢屋から出てきた。
「ラナーはどこにいるの?」
「こっちだ。」
ハーキムさんが指差す方へ、二人で走る。
途中、さっきの番人に見つからないように、足を止め息を潜めながら。
角を2つ程曲がった頃。
私達はラナーを見つけた。
「ラナー。」
ハーキムさんの声に驚き、ラナーは鉄格子に近づくどころか、奥へと身を隠してしまった。
「ラナー、私だ。近くに来て、顔を見せてくれ。」
「合わせる顔がありません。」
いつもと変わらない冷静な声。
ラナーは、こんな暗い地下牢に連れて来られ、そこで婚約者に会ったとしても、心は掻き乱されないのだろうか。
それも、そのように育てられたから?
だとしたら、悲しい。
ラナーにだって、こんな時くらい、心を掻き乱されたっていいはずた。
「ラナー。」
私もハーキムさんのように、鉄格子に近づいた。
「ラナー。ネシャートさんやハーキムさんは、あなたが裏切るような人ではないと信じているの。」
ラナーは固まったように、動かない。
「お願い、ラナー。どうしてそんな事をしたのか、理由を教えて。きっとそうしなければならなかった訳があるんでしょう?」
ラナーの指がほんの少しだけ動く。
「ハーキムさんに言えないのなら、私でもいい。ラナー、あなたを救いたいの。」
ラナーは、ゆっくりとこっちを向いてくれた。
「ラナー!」
「偽善者。」
「えっ?」
「私の事も、ハーキム様の事も、この国の事も何も分からないくせに。」
ラナーは、怖い顔で私を睨んでいる。
ハーキムさんの言う通り、私じゃあラナーの心を開けなかった。
私が泣きそうになった時、ハーキムさんが私の腕を掴んだ。
「番人が来る。」
「ウソ!!」
「ラナー、また来る。」
それだけを残して、ハーキムさんは私を連れ、走り出した。
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