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中盤
26.中盤20(七尾視点)
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七尾はホテルのベッドに寝転がり、天井をぼーっと眺めていた。
『そのストーカーも、漆野の部屋の汚さを憐れんで掃除したんじゃない?』
休暇申請の時に言われた玖音の言葉が蘇る。こんな状況になっても何の心配もしてくれない玖音に苛立ちすら覚え始める。
『仕事が出来ないなら、帰っていいよ。明日から仕事出来るように体調を整えておいてね。警察に相談するなりなんなりしてさ。』
玖音の権力が及ばないと判断した途端、玖音は七尾に自分でのストーカー問題解決を求めてくる。七尾にとってはストーカー問題は手段に過ぎないのに。
(でもなぁ……ホント明日からどうしよ。自分の家じゃないと眠れないのに。明日もホテルで寝るなんてヤダな。)
七尾は寝返りをうって溜息を吐く。さっきまで六星がいたシーツのシワに覆いかぶさる。六星との行為は一時的な現実逃避に過ぎないのだ。現実を直視すると、七尾の口からは溜息しか出て来ない。
(でも、家に戻って、ストーカーと居合わせたら怖いし……それに、普通に家に帰れるなら、玖音も心配してくれないだろうし……。)
七尾は思案を巡らせる。玖音の注目をより集めるかつ、自分の身の安全を保障できる方法は無いだろうか。
(そうだ!五藤くんに部屋の中に誰もいないか確認させようかな?五藤くんなら、結構大きいから、強そうだし。六星と違って毎日会社で会うし。お礼はオレとのセックス……とかにすれば乗ってくれるでしょ。あの子、オレのこと好き過ぎるし。)
合理的で自己中心的な最低の提案を思い付いた七尾は、鼻歌を歌いながらシャワーに向かった。
翌日、七尾はわざと疲れた様子で出勤する。デスクに着くなり、頬杖を付いて「はぁ……」と思い詰めたような溜息を漏らす。
「あの……どうかされましたか?やっぱりまだ体調、良くないですか?」
案の定、五藤は心配そうに声を掛けてきた。予想通りの五藤の行動に七尾は内心ニヤリと笑う。けれども決して、表面の『しんどそうな態度』は変えない。
「いや、家に帰るのが怖くなっちゃって……さ。」
「どうしてですか?」
五藤は指示を待つ大型犬のように首を傾げる。この純粋な後輩を騙すのは心が痛むが、五藤は一番都合の良い立場にいるのだ。
「実はさ、少し前からオレをストーキングしてる奴がいるらしくてね……。一昨日、遂に家に侵入したっぽいんだよね。もしかしたら、まだ家に隠れてるって思うと怖くって……。」
七尾は目を伏せて考えるフリをする。玖音なら「あっそ。そこに人がいたら教えて。」と言うところを、五藤はなんと返すだろうか。期待を込めて、五藤をチラッと見る。
「あの……その……すっ……ストーカーとかち合わないように、ボクの家で良ければ……一旦、ひっ……避難しますか?漆野さんの体調が一番ですから……。」
腕時計をぎゅと握り締め、大吾は俯きながらも七尾をまっすぐ見上げて答えた。七尾の想定よりも大胆な回答が返ってきて、七尾は不覚にも少し五藤へ愛おしさを感じてしまった。
「あ……ありがとう。でも、家には寝る為に帰らないといけないから……。五藤くんの家からオレの家まで送ってくれたり……する?」
「ええ、はい、もちろん!先に入って、中に人がいない事も確認しますよ!」
五藤はボールを投げられた犬のように、目を輝かせて七尾に返事をする。見返りも言っていないのに、こんなに献身してもらって良いのだろうか。七尾は良心の呵責に苛まれそうになった。
「じゃあ、お願い……ね?」
良心の呵責を見ないふりして、七尾は五藤の指先を拾い、口を付けた。静かに耳まで赤くなる五藤を眺めて、『七尾の役に立て五藤も嬉しいハズ。だから、悪い事はしていない。』と七尾は自分に言い聞かせた。
『そのストーカーも、漆野の部屋の汚さを憐れんで掃除したんじゃない?』
休暇申請の時に言われた玖音の言葉が蘇る。こんな状況になっても何の心配もしてくれない玖音に苛立ちすら覚え始める。
『仕事が出来ないなら、帰っていいよ。明日から仕事出来るように体調を整えておいてね。警察に相談するなりなんなりしてさ。』
玖音の権力が及ばないと判断した途端、玖音は七尾に自分でのストーカー問題解決を求めてくる。七尾にとってはストーカー問題は手段に過ぎないのに。
(でもなぁ……ホント明日からどうしよ。自分の家じゃないと眠れないのに。明日もホテルで寝るなんてヤダな。)
七尾は寝返りをうって溜息を吐く。さっきまで六星がいたシーツのシワに覆いかぶさる。六星との行為は一時的な現実逃避に過ぎないのだ。現実を直視すると、七尾の口からは溜息しか出て来ない。
(でも、家に戻って、ストーカーと居合わせたら怖いし……それに、普通に家に帰れるなら、玖音も心配してくれないだろうし……。)
七尾は思案を巡らせる。玖音の注目をより集めるかつ、自分の身の安全を保障できる方法は無いだろうか。
(そうだ!五藤くんに部屋の中に誰もいないか確認させようかな?五藤くんなら、結構大きいから、強そうだし。六星と違って毎日会社で会うし。お礼はオレとのセックス……とかにすれば乗ってくれるでしょ。あの子、オレのこと好き過ぎるし。)
合理的で自己中心的な最低の提案を思い付いた七尾は、鼻歌を歌いながらシャワーに向かった。
翌日、七尾はわざと疲れた様子で出勤する。デスクに着くなり、頬杖を付いて「はぁ……」と思い詰めたような溜息を漏らす。
「あの……どうかされましたか?やっぱりまだ体調、良くないですか?」
案の定、五藤は心配そうに声を掛けてきた。予想通りの五藤の行動に七尾は内心ニヤリと笑う。けれども決して、表面の『しんどそうな態度』は変えない。
「いや、家に帰るのが怖くなっちゃって……さ。」
「どうしてですか?」
五藤は指示を待つ大型犬のように首を傾げる。この純粋な後輩を騙すのは心が痛むが、五藤は一番都合の良い立場にいるのだ。
「実はさ、少し前からオレをストーキングしてる奴がいるらしくてね……。一昨日、遂に家に侵入したっぽいんだよね。もしかしたら、まだ家に隠れてるって思うと怖くって……。」
七尾は目を伏せて考えるフリをする。玖音なら「あっそ。そこに人がいたら教えて。」と言うところを、五藤はなんと返すだろうか。期待を込めて、五藤をチラッと見る。
「あの……その……すっ……ストーカーとかち合わないように、ボクの家で良ければ……一旦、ひっ……避難しますか?漆野さんの体調が一番ですから……。」
腕時計をぎゅと握り締め、大吾は俯きながらも七尾をまっすぐ見上げて答えた。七尾の想定よりも大胆な回答が返ってきて、七尾は不覚にも少し五藤へ愛おしさを感じてしまった。
「あ……ありがとう。でも、家には寝る為に帰らないといけないから……。五藤くんの家からオレの家まで送ってくれたり……する?」
「ええ、はい、もちろん!先に入って、中に人がいない事も確認しますよ!」
五藤はボールを投げられた犬のように、目を輝かせて七尾に返事をする。見返りも言っていないのに、こんなに献身してもらって良いのだろうか。七尾は良心の呵責に苛まれそうになった。
「じゃあ、お願い……ね?」
良心の呵責を見ないふりして、七尾は五藤の指先を拾い、口を付けた。静かに耳まで赤くなる五藤を眺めて、『七尾の役に立て五藤も嬉しいハズ。だから、悪い事はしていない。』と七尾は自分に言い聞かせた。
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