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第五章 心の在りか
予定外の現実
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ランカスタ公爵邸に到着するや、どうしてか髭が現れています。
「ルイ枢機卿、どうした? やけに早いじゃないか?」
どうやら彼も不審に感じたのでしょう。戻るのは深夜になる予定だったのですから。
「それが三年後に起きる予定の大洪水が早まっている可能性があります。環状街道の橋が流されてしまったようなのです」
どうにも不可解ですけれど、長雨の影響は確実に未来の前倒しであるようにしか考えられません。
「むぅ、そういえば王都では奇妙な病気が流行りだしているらしい。何でも赤い斑点が身体中に現れ、最後には血を吐いて死ぬらしい」
「えっ?――――」
私は絶句している。
この世界線での致命的なミス。髭の話に明らかとなっていました。
髭が話す病気とは恐らく赤斑病だ。長雨の影響で飢饉が訪れ、そのあとに大流行するという疫病に他なりません。
「それはいつの話ですか!?」
「先日、王都での仕事をした折りに聞いたのだ。ルイ枢機卿は知っているのか?」
私は呆然と頭を振っています。
なぜなら大飢饉よりも前に赤斑病が流行し始めているのですから。
長雨だけでなく、関連する全てが前倒しとなっている。疫病対策はこれから着手する予定であったというのに。
「ランカスタ公爵、ペガサスを借りられますか!?」
「う、うむ。馬房に繋いである……」
「借ります!!」
私は公爵邸を飛び出していました。
確認すべきはスカーレット子爵領。かの地の開墾が頼りです。
家を出る際に、ダンツには開墾を続けてと書き残していました。だからこそ、彼が子爵領の治水と開墾をやり遂げていることを願っている。
(何てことなの……)
馬房でペガサスを借りると、直ぐさま跨がり空へと向かう。
身体中が冷たい雨に打たれていましたが、今は気にしている場合ではありません。
北へと飛び続けて二時間。私は二年ぶりに故郷へと戻っていました。
「うそ……?」
今も強い雨が身体を叩いている。
上空から見下ろした大地。どうにも受け入れ難い事実を突きつけられています。
「ダンツのバカ!!」
怒りに任せて声を張る。けれども、それは直ぐさま雨音に掻き消されてしまう。
私の苛立ちは解消されることなく、心に募っていくだけでした。
なぜなら、スカーレット子爵領は未開なままだったのです。私がいた頃に開拓したエリアですら荒れ果てていたのですから。
「どうしてよ!?」
確実に大飢饉がやって来る。スカーレット子爵領の開拓が頼りであったというのに。
横殴りの雨に叩かれながらも、私は絶叫していました。
「どうしてなの!?」
「ルイ枢機卿、どうした? やけに早いじゃないか?」
どうやら彼も不審に感じたのでしょう。戻るのは深夜になる予定だったのですから。
「それが三年後に起きる予定の大洪水が早まっている可能性があります。環状街道の橋が流されてしまったようなのです」
どうにも不可解ですけれど、長雨の影響は確実に未来の前倒しであるようにしか考えられません。
「むぅ、そういえば王都では奇妙な病気が流行りだしているらしい。何でも赤い斑点が身体中に現れ、最後には血を吐いて死ぬらしい」
「えっ?――――」
私は絶句している。
この世界線での致命的なミス。髭の話に明らかとなっていました。
髭が話す病気とは恐らく赤斑病だ。長雨の影響で飢饉が訪れ、そのあとに大流行するという疫病に他なりません。
「それはいつの話ですか!?」
「先日、王都での仕事をした折りに聞いたのだ。ルイ枢機卿は知っているのか?」
私は呆然と頭を振っています。
なぜなら大飢饉よりも前に赤斑病が流行し始めているのですから。
長雨だけでなく、関連する全てが前倒しとなっている。疫病対策はこれから着手する予定であったというのに。
「ランカスタ公爵、ペガサスを借りられますか!?」
「う、うむ。馬房に繋いである……」
「借ります!!」
私は公爵邸を飛び出していました。
確認すべきはスカーレット子爵領。かの地の開墾が頼りです。
家を出る際に、ダンツには開墾を続けてと書き残していました。だからこそ、彼が子爵領の治水と開墾をやり遂げていることを願っている。
(何てことなの……)
馬房でペガサスを借りると、直ぐさま跨がり空へと向かう。
身体中が冷たい雨に打たれていましたが、今は気にしている場合ではありません。
北へと飛び続けて二時間。私は二年ぶりに故郷へと戻っていました。
「うそ……?」
今も強い雨が身体を叩いている。
上空から見下ろした大地。どうにも受け入れ難い事実を突きつけられています。
「ダンツのバカ!!」
怒りに任せて声を張る。けれども、それは直ぐさま雨音に掻き消されてしまう。
私の苛立ちは解消されることなく、心に募っていくだけでした。
なぜなら、スカーレット子爵領は未開なままだったのです。私がいた頃に開拓したエリアですら荒れ果てていたのですから。
「どうしてよ!?」
確実に大飢饉がやって来る。スカーレット子爵領の開拓が頼りであったというのに。
横殴りの雨に叩かれながらも、私は絶叫していました。
「どうしてなの!?」
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