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第七章 光が射す方角

迎える結末

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「イセリナはルーク殿下についてどう思ってる?」

 どうしてか私はそのような質問を向けていました。

 ここまで話に上がらなかった人物。イセリナと釣り合う可能性を秘めた最後の一人について。

「ルーク殿下はどうなんでしょう。ダンスする様子を見ても、楽しそうに感じませんでしたわ。つっけんどんと良い勝負ですわね?」

 クスクスと笑うイセリナに何故か私は安堵しています。

(どうしてかな……)

 私はイセリナとルークが結ばれる未来を望んでいるというのに。

 彼女の眼中にルークが入っていないことを知って、笑顔になってしまうなんて。

「そうなのね……」

「ルイこそ、誰かいい人に鞍替えすべきですわ。サルバディール皇国なんて小国の皇太子に未来はありません。その内に地図上から消えても知りませんわよ?」

 イセリナは未来を知っているかのように話す。

 ぶっちゃけ彼女が話す通りでした。このままではヴァリアント帝国と戦争になり、いずれは滅び行く運命です。

「分かってる。でもね、放っておけないじゃない? 私は随分と世話になっているもの。沈み行く船と分かっていても、逃げ出せないほどの恩義を感じてる」

 サルバディール皇国はどうあっても滅びる。

 ハッピーエンドが鬱エンドにも似た亡命だし、最終的に自害だなんて。

「ルイなら何とかできるというの? 産業も何もないじゃない?」

「しなきゃいけないでしょうね。私はそれを遂げなければ、永遠に所有物のままよ。カルロの元に残るとしても、サルバディール皇国の未来は何とかしたいと考えてる」

 いざとなればコンラッドを呼び戻して、サルバディール皇国へと向かわせることができる。

 何ならヴァリアント帝国へ潜伏させることでさえも。

(やっぱ時間が圧倒的に足りないな……)

 私はエリカの闇属性消去に全力を尽くすべきであって、魔道書の発見にコンラッドを使っています。

 もしも戦争に介入するのなら、魔法の構築はできなくなるかもしれません。

「背負ったものの中でも優先順位がある……」

 やはり天界から仰せつかった任務が第一であると改めて思う。

 停滞する世界線を動かすこと。それができなければ、自身の未来などあり得ないのだから。

「私はサルバディール皇国の衰退と共にあるのかもしれない」

 ふとそんな言葉が口を衝く。

 現状において、回避できるとは思えない。

 仮にサルバディール皇国が帝国によって滅ぼされると、愛人との噂がある私は処刑対象となるでしょう。私は皇国と共に失われる運命にあるといえる。

「面倒な考えをするのね? 逃げ出せばいいだけなのに」

 イセリナはそのように話しますけれど、私としては最善なのです。

 たとえ、この身が滅びようとも女神アマンダからの言い付けは守る。この世界線を選んだときから、それは唯一揺るがない意志なのですから。

「いいのよ。その方が楽かもしれないし……」

 朧気に見える未来は私にそんな思考をさせています。

 好きでもない相手と添い遂げる必要はなくなり、私はこの世界から解き放たれるのです。

「たぶん、それこそが救済なんだよ……」

 遂には履き違えたような考えを口にしていました。

 プロメティア世界に対する救済は私が請け負うとして、世界が私に与える救済が死ではないかと。

 私はイセリナの話を上の空で聞き、ジッと考え込む。

 迎えるべき結末はどういったものが正しいのか――。
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