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第七章 光が射す方角
急な話
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休日の朝。貴族院が休みの日は以前と変わらずスラム街の清掃です。
既に多くの人たちが冒険者ギルドへの登録を済ませて、自立していました。
しかしながら、子供たちにはまだ支援が必要であり、私は清掃の対価として子供たちへの炊き出しを続けています。
「エリカ、今日もお疲れさま。貴方が手伝ってくれるから助かってるわ」
「ルイ様、とんでもございません! スラムの子供たちに希望を与えてくださり、感謝しきれないのですから!」
とても平穏な朝でした。それこそ妙な話を聞くまでは……。
炊き出しの片付けも終わり、一休みしていたところ、
「そういえばルイ様、お聞きになられました?」
エリカが世間話を始めました。
貴族院で話をしない代わりに、休日には色々な話を彼女は聞かせてくれます。
喜々として語るエリカに私は目を細めていましたが、その内容は予想すらしていない話であったのです。
「ルーク王子殿下がご婚約されたそうです――」
私は固まっていました。
いつか訪れる未来に違いなかったのですが、それにしても早すぎる。
自然と鼓動が高鳴っていきます。
「だ、誰と……?」
気になるのはそのお相手。前世ではイセリナである私でしたけれど、こんなにも早く決まった世界線はありません。
まるでゲームの理に縛られているかのように、私とルークとの交際が始まったのは二年生の冬に行われる胡蝶蘭の夜会だったのですから。
「イセリナ様ですよ!」
そんな話、少しだって聞いていない。
あのぐうたらな眠り姫は肝心な話を私にしていません。
「今朝も話をしたけど、一言もいってなかったわよ!?」
「まだ正式に発表されていないからでしょうかね? 私はシャルロット王女殿下にそのお話を伺いしました」
そういえばエリカはシャルロットの教育係でした。
恐らく、シャルロットが口を滑らせたのだと思います。
(でも、ルークが婚約って……)
心の準備ができていない私は受け止めきれない。
まだ心のどこかで、彼が私のことを想ってくれているのではと考えていたから。
心の平穏を求めるかのように、私は思い込んでいたのです。
「そんな……」
もう何も見えない。何も聞こえない。
私は暗く狭い空間に落ち込んだかのように、何も考えられなくなっています。
「ルイ様?」
私の気持ちを知らないエリカが心配してくれている。
だけど、上の空で頷くしかできないのです。知らされた現実に私は絶望していたのですから。
無言でエリカと別れます。
去り際に手を振ったかどうかも覚えていません。
気付けば、私はお屋敷に戻っていました。
既に多くの人たちが冒険者ギルドへの登録を済ませて、自立していました。
しかしながら、子供たちにはまだ支援が必要であり、私は清掃の対価として子供たちへの炊き出しを続けています。
「エリカ、今日もお疲れさま。貴方が手伝ってくれるから助かってるわ」
「ルイ様、とんでもございません! スラムの子供たちに希望を与えてくださり、感謝しきれないのですから!」
とても平穏な朝でした。それこそ妙な話を聞くまでは……。
炊き出しの片付けも終わり、一休みしていたところ、
「そういえばルイ様、お聞きになられました?」
エリカが世間話を始めました。
貴族院で話をしない代わりに、休日には色々な話を彼女は聞かせてくれます。
喜々として語るエリカに私は目を細めていましたが、その内容は予想すらしていない話であったのです。
「ルーク王子殿下がご婚約されたそうです――」
私は固まっていました。
いつか訪れる未来に違いなかったのですが、それにしても早すぎる。
自然と鼓動が高鳴っていきます。
「だ、誰と……?」
気になるのはそのお相手。前世ではイセリナである私でしたけれど、こんなにも早く決まった世界線はありません。
まるでゲームの理に縛られているかのように、私とルークとの交際が始まったのは二年生の冬に行われる胡蝶蘭の夜会だったのですから。
「イセリナ様ですよ!」
そんな話、少しだって聞いていない。
あのぐうたらな眠り姫は肝心な話を私にしていません。
「今朝も話をしたけど、一言もいってなかったわよ!?」
「まだ正式に発表されていないからでしょうかね? 私はシャルロット王女殿下にそのお話を伺いしました」
そういえばエリカはシャルロットの教育係でした。
恐らく、シャルロットが口を滑らせたのだと思います。
(でも、ルークが婚約って……)
心の準備ができていない私は受け止めきれない。
まだ心のどこかで、彼が私のことを想ってくれているのではと考えていたから。
心の平穏を求めるかのように、私は思い込んでいたのです。
「そんな……」
もう何も見えない。何も聞こえない。
私は暗く狭い空間に落ち込んだかのように、何も考えられなくなっています。
「ルイ様?」
私の気持ちを知らないエリカが心配してくれている。
だけど、上の空で頷くしかできないのです。知らされた現実に私は絶望していたのですから。
無言でエリカと別れます。
去り際に手を振ったかどうかも覚えていません。
気付けば、私はお屋敷に戻っていました。
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